第5話

 その秋。身長だけでなく、国内最高齢、という箔がついた牛若丸は、京都市動物園に戻ってきた。ちょこんと座るキリンを目当てに、海外からも取材が大勢きていた。


 その大群の中には弁慶もいた。あの日から、ずっと毎日姿を現している。


「じゃあな、牛若。また明日来るからな」


 本当に無職になり、暇な弁慶は、毎日毎日やってきていた。


 飼育員が、


「ここは京都ですから。百夜通えば、ちょっと、考えてやりますか?」


 と言うと、園長は、


「弁慶なんだから、千回、通ってもらわんとな」


 と、厳しい数値を出した。

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キリン若丸 鮪山ちひさ @mttuna

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