第3話

 ここだけの話、どこかの国の特殊部隊の奴らに、聖典の中身を一度だけ見られたことがある。


 あれは忘れもしない、ガラスペンフェアをしていた日だ。


 あいつらは強かった。たった三人しかいなかったのに、誰にも止めることはできなかった。あいつらは微塵の悪意も持っていなかった。

 ただのマシーンと化し、まっすぐに聖典に向かってきた。阻もうとしても怪しげな技で、触れた瞬間に地面に転がされた。

 リーダー格の男が聖典を手に取り、無造作に開いた。それを僕は地面に転がった状態で見ているしかできなかった。

 聖典を見つめる三人の男は、雷に打たれたかのように動きがとまった。次の瞬間、何かを叫びながら、次々とページをめくっていった。

 神の意思に導かれてなのか、僕は床に落ちていたガラスペンを手に取り、リーダー格の男に向かって突進していった。

 虚を突かれたのか、男たちは棒立ちの状態だった。僕は男にとびかかり、手に持っていたガラスペンを首元に振り下ろした。

 塵になって消えると思っていたガラスペンは男の首もとに突き刺さり、塵になって消えたのは男のほうだった。

 万有引力の法則に従って、聖典とガラスペンが地面に落ちた。ガラスペンは地面に落ちた衝撃でポッキリと半分に折れてしまった。

 地面に落ちた聖典のページには、何も書かれていなかった。

 全てのページを確認したわけではないが、中は白紙の状態だった。

 これが何を意味するのか。もう、上も下も右も左も大論争。

 神の国に行けるものはいないという人もいれば、今からの行いで決まるため、まだ書かれてはいないという人もいた(これは予定説を覆すものだ)。人間には見えない文字で書かれているなどなど。議論の収束が見えないままで終末論だけが加速していった。その結果が某カルト教団信者の集団自殺であった。

 そして僕は神さまから聖典の中身を見られてしまった罰を喰らった。

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