推定有罪

推定有罪、それが俺に下された判断

今はまだ反証可能、けれど俺はそれをしない

いつか実刑が下る日をただひたすら望んでいる


あなたといたい、願いの成就こそ判決の瞬間

できるものなら俺は罪を犯したい……


っていう感じで俺は俺の世界に酔っている

だって何があったってそんなことになんかなりっこない

だいたい独りじゃ罪にならない犯罪なんて滑稽だ

嗤ってくれよ あなたに嘲笑ってほしいんだ

そしたらあなたを嫌いになれるかもしれない


やらしいことがしたかった

それこそ言葉にするのを躊躇うぐらい

ずっとずっと思ってた 頭の中でずっと

なのに触れることすらままならない

どれだけそばにいても、俺じゃあなたと歩けない

俺じゃあなたと歩めない


例えるなら芸能人を本気で好きになったとか

そんな程度じゃないと穏やかな恋はできない

あなたがそばにいると夢を見る余裕がなくなって

胸が高鳴って息が詰まって吐き気が止まらない


あなたの嫌なところを一つ一つ見つけては積み上げて

幻滅できたらそれで全部終えられる

見つめるだけの片想いならもう充分満喫したよ

だから後は楽になりたい 俺は気分が悪いんだ


完璧なものだけを愛と呼びたい

完璧な関係だけを正しいと思いたい

嫌いにならないように好きでいるのをやめるように

それができたらあなたと出逢えた瞬間を

後悔しないでいられるのに


夢を見たかっただけさ、夢見るだけならタダだから

夢なら夢のままでちっとも構わなかったんだよ

なのに“もしかして”なんて気持ちを抱いたばっかりに

ほらまた必要のない傷が胸に痛みを走らせる


「あなたが好きです」

そして告白はここでおしまい

「だから付き合ってください」

というセリフは言えなかった

なのにどうしてわざわざ伝えたんだろう

そんなのただの自己満足さ、楽になりたかっただけなんだ

あなたがいる孤独より、あなたがいない孤独の方が良かった

逃げる口実が欲しかった

そして全てを終わらせたかった


神様、俺の死刑が確定ならそれでいいです

別に殺されたって何も文句はありません

それでも俺はあの人としか寝たくないんです

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る