第3話 アデルと対戦

「おはよう」


 朝の挨拶をする。


「おはよう」


 アデルも起きてきて、眠そうに目をこすった。


「喜べ、街に着いたら豪遊できるぞ」

「お父さん、その臭い皮を担いで歩くのは嫌」

「3人でも無理なんじゃないかな」


「そこはほら、偉大なる魔法使いショータ様が」


 あてにされても。

 ああ、そう言えば、馬型のファイヤーエレメンタルがいた。


「【ネームド:ファイヤーエレメンタルのブルーファイヤホース。サモン・ファイヤーエレメンタル】」


 青い炎の馬が出現した。


「燃えないかな」


 そう言ってロックスさんが皮を積む。

 煙が出たりしない所からみると、平気みたいだ。


「これは言っておかないとな。ショータ、日本なんて場所を俺は知らない。街に着いたら文献をありったけあたるが、望みは薄いだろう」

「うん、分かっている」

「ショータ、悲しいの。泣いているよ」


「男なら泣くな。泣くんだったら故郷に帰ってから泣け」

「うん」


 僕は袖で顔を拭った。

 ファイヤーエレメンタルが僕にはついている。

 一人じゃない。


 分かっているよとブルーファイヤホースがヒヒンといななく。

 さあ、胸を張って出発だ。


 歩いて森を抜けるのは大変だった。

 途中からみんなでブルーファイヤホースに乗った。

 乗馬なんて初めてだったけど、ブルーファイヤホースは宙に浮かんでいるので、揺れたりしない。

 ドローンに乗るってこんな感じなのかな。

 空中タクシーは乗ってみたかったなぁ。

 実用化されるまでには帰りたい。


「さあ、ショータの魔法を教えて」


 街道脇での休み時間、アデルがキラキラした目でそう言ってきた。

 楽しみにしてたんだな。


「うん、このカードゲームはエグゼエレメンタルというんだけど、カードの組み合わせで無限に戦術が組み立てられるんだ」

「面白そう」


「じゃあ遊びながら説明するよ。コストありだと複雑なのでノーコスト・ルールでやるよ」


 このゲームコストがあってコンボを組む時に考え無しに組むと、コストがオーバーして行動不能になる。

 気軽に遊ぶにはノーコスト・ルールの方が良い。

 スタータパックを二つに分けた。


「まず札を五枚引く。そしたら、札を置くんだ。5枚まで置けるけど、どうする」

「じゃあこれ」


 アデルが置いたのはアタックのカード。


「まだ置けるよ。追加で置く場合は縦にカードを並べて置いてね」

「じゃあ、これと、これと、これ、これ」


 置かれたのはアタック、アタック、レベル・インクリメント、ブレイク。


「全部出したね。ブレイクはここでは使えない。まあ出しておくいう戦略もあるけど」

「じゃあ引っ込める」

「札を置ききったらエンドを宣言して」

「エンド」


「まず、使った札の枚数4を補充して」

「こうね」


 アデルが札を4枚引く。


「縦に並べられたひとまとまりをプロセスって言うんだ」

「ひとまとまりということは増やせるの?」

「ループを作ると増やせられる」

「ループのカードはないからいいや」


「じゃあ、アデルの動作をするよ。アタック2枚で2回攻撃、従魔がいないから。アデル本体の攻撃だ。プレイヤーは最弱の攻撃力1しかないので、1×2ダメージで僕の体力98だ。レベルインクリメントの効果で、アデルはレベル2だ。アデルの体力が10上がるよ。僕の番だね。サモン・ファイヤーエレメンタル。レベル・インクリメント、エンド。僕は攻撃出来ない」


 ファイヤーエレメンタルは攻撃力1の防御力4だ。


 僕の最初の手持ちのカードはサモン・ファイヤーエレメンタル、レベルインクリメント、ループ、ブレイク、ブランチ

 二枚使って、今の手持ちのカードはループ、ブレイク、ブランチだ。

 5枚に足りない分のネームド:ファイヤーエレメンタルのバーニングウィプス、アタックのカードを引いた。


「私の番ね。サモン・ファイヤーエレメンタルのカードがあるけど、どうしたら良い」


「ここでの考え方は三つ。プロセスの頭にサモン・ファイヤーエレメンタルを置くと、ファイヤーエレメンタルが攻撃する。アタックの後ろに置くと、攻撃はアデルが、レベルアップはファイヤーエレメンタルがする。最後に置くと、ファイヤーエレメンタルは召喚されるだけで何もしない」

「じゃあ頭に置くね」


 アデルのプロセスは、サモン・ファイヤーエレメンタル→アタック→アタック→レベル・インクリメントだ。

 僕のは、サモン・ファイヤーエレメンタル→レベル・インクリメントだ。


「気をつけないといけないのは。サモンのカードはプロセスに1つしか置けない」

「そうなの。じゃあループを作らないと」


「うーん、ループエンドのカードが1枚あるけど、これはループと対でしか使えないのよね」

「よく知ってるね」

「魔法を使う時、そうしてたから」

「ここで取れる戦略は2つ。ループエンドのカードを置いて引ける数を増やすか。ループが手に入るまでとって置いて、手の内を見せない」

「じゃあ出さない。アタックのカードがあるから追加する。エンド」


 今のアデルのプロセスは、サモン・ファイヤーエレメンタル→アタック→アタック→アタック→レベル・インクリメントだ。

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