23 新しい家
「完成しましたね」
屋根に樹皮を張り終え、屋根の上から降りてきたレナが改めて新しい家を眺めながらそう言った。
「そうですね!」
「とりあえず、あっちの家からベッドとか運んでこないとね」
家ができて達成感からか少し誇らしそうに家を眺めていたレナの言葉にミシャも嬉しそうにうなずく。
アンジェはそんな二人を見ながら、淡々と家具の移動を進めようとしている。しかし、その態度とは裏腹に彼女のしっぽが浮ついた様子で左右に揺れているのが見て取れた。
そうして全員で自分が使っている家具を新しい部屋に運びこんでいく。さすがにレナとミシャは自分のベッドを運ぶことができなかったので俺が運ぶことになったが。
今回作った家は、全員分の個室を作った。レナ達3人は個室はいらないと言っていたが、それでは今までの家と同じになってしまうため、妥協案として3人の部屋を隣り合わせに配置し、その時々に応じて部屋を繋げられるよう部屋の間の壁を引き戸にしておいた。
日本家屋にあるようなふすまをイメージして作ったわけだが、木材だけで作ったためできる限り軽量化を図ってみたが結構重い扉になってしまった。まあ、それほど頻繁に開け閉めすることはないだろうから問題はないだろう。
今回の家は平屋ではあるが、個人の部屋とリビングなどを入れた間取りのため、前の家に比べ面積で言えば3倍近く大きな家になっている。
間取りは入り口を入ったところにリビングダイニング。これは前の家と似た間取りだが、今回はこの場所に土間と
家の中で火を扱うことになるため、ミシャに頼んで竈の周囲は土壁にしてもらった。
床については土間以外、すべて板張りにした。今までずっと家の中でも床が土のままだったので、結構家らしい見た目になったと思う。
「思ったより天井が高いわね」
家の中に入ってきたアンジェがボソッと言葉を漏らした。
最初から作業を手伝ってもらっていたアンジェも、屋根を付けたタイミングが最後だったので、屋根がついた状態の家の中をしっかり見るのは今が初めてだ。
丸太を組んで家っぽくしたログハウス風の前の家に比べて、しっかり屋根を組んだ今回の家は天井が前に比べてだいぶ高くなっている。
「作っているときも思いましたが、広いですね」
「今までの家が狭かったから余計にそう感じるのかもな」
「あっちでも十分な広さだと思うわよ?」
「そうか?」
こっちの世界での普通の家の広さがよくわからない。しかし、俺の中にある家の広さの感覚があちらの世界基準になっているのは確かだ。それにこちらでは家は夜の間安全に寝るための場所という認識が強いようだし、家の中でゆっくりできるスペースがあるのはあまりないのかもしれない。
そんなこんなで新しく作った家の中にすべての荷物を運びこみ、この日は少しだけ早く寝ることにした。
なお、レナ達3人は引き戸を開いた状態で3人一緒に寝たようだった。
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