20 いったん休憩


「そろそろ一旦休憩にしない?」


 森の中から事前に切り出していた丸太をあらかた木材として加工したところで、アンジェがそう声をかけてきた。時間的にはもう昼は超えているだろうか。時計がないからなかなか時間感覚がいまだに曖昧だ。


 こちらに来てからそこそこ時間も経ったのだからそろそろ時間感覚を覚えておきたいところなんだけどな。

 一応太陽の傾き加減を確認すればおよその時間は把握できるが、あいにく森の中という視界が悪い環境なため常に把握しているのは難しい。

 時間の確認が常にできていた前の世界と時代が、とても恵まれていたというのがよく実感できるな。

 

「そうだな」


「朝からずっと休憩なしで同じ作業しっぱなしだったから、さすがに疲れているでしょ」


「いや、そうでもないよ」


 アンジェとのやり取りの中、視線を空に向け木の葉の間を覗けば、太陽の位置はすでに頭上を越えていた。

 それほど長い時間作業をしていた自覚はないのだが、結構な時間が経っていたようだ。


 基本、一日走り続けてもほとんど疲れない身体能力を持っているこの体は、朝からぶっ通しで作業を続けても全く疲れていない。さらに魔力の使い過ぎでもだるさを伴う疲労を感じるとミシャから聞いていたのが、それも全くない。

 この体はどれだけ規格外のスペックをしているのか。

 今後何が起こるかわからない以上、しっかり把握しておかなければならないだろうな。どうすれば把握できるかはわからないが。


「あぁまぁ、確かに疲れていなさそう」


 俺の様子を見て呆れた表情でそう言ってきた。

 

「まだそんなに一緒に過ごしているわけじゃないけど、あなたの体ってどうなってるのよ。ここまで動ける同族って今まで見たことないわよ」


「そのあたりは俺もよくわかっていないんだよな」


 獣人のアンジェからしても俺の身体能力は明らかにおかしいらしい。人よりも身体能力に優れているといわれる獣人族でもここまでぶっ通しで作業できる人はいなかったようだ。


「ま、あなたが動き続けていると私たちが休み辛いからちょくちょく休んでくれるとありがたいかな。助けてもらった私が言うのもあれだけど」


「今後は気を付ける」


「うん。ありがとう」


 俺が休んでいなくても自分達のタイミングで休んでもらっていいんだが、よく見れば食事用の机の場所でレナとミシャがこちらの様子を心配そうに見ているんだよな。

 俺自身には問題なかったとしても、アンジェ達に気を使わせてしまっているのはよくない。今後はしっかり休憩を取りながら作業することにしないとな。


 そんなこんなで作業をいったん切り上げ、待っていた2人が淹れてくれたハーブティーっぽいものを飲み、一息ついたところで作業を再開した。

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