第589話 送り狼作戦

すると退却の合図が出て残った騎馬兵が即座にUターンして退却して行く。


俺は事前に打ち合わせしてあった様に隠密モードで透明化したジュンペイと魔法部隊数人にコッソリその後を付けさせたのであった。


残った我々は現場の後始末である。


これで敵の本拠地が判るかも知れない。幾ら方牧民と言えど、何処かに本拠地を築いてないとは言い切れない。


この敵の本拠地を探れと言うのは、いい加減振り回される事にウンザリした王宮から課せられた要望でもあったのである。


こうしてコッソリ上空から退却する騎馬兵を尾行して行くのであった。




■■ジュンペイside■■


20分ぐらい走った所で一旦止まって馬を休めると疾走状態だったのから今度はユッタリとしたリズムの歩調に切替馬を労りつつ移動を再開した。

お何旗かの騎馬兵が伝令として走って行ったがそれ以降は得に変わった動きも無くポッカポッカと草原をユッタリと移動するのであった。


草原の凍える一晩の野宿を挟んでさらに移動を続けると、大きな川の畔に辿り着き、大きなパオの様な独特のテントが幾つもある土地に辿り着いた。


建物さえないものの、ここにはかなりの人数が滞在して居り一大コロニーになっていた。




恐らく俺達が探していたのはこのコロニーでは無いかと思い、伝令をお父様の元に飛ばしてここに合流して見て貰ったのだった。


暫く待って居るとお父様とナツキがやって来たので隠密モードのままコソコソと打ち合わせをする。


ザックリここに居る人数は先の襲撃から戻った者達や老いも若きも含め約5万人程だろうか。


これを一気に殲滅するとなったら、全軍で掛かっても数の劣勢を招くだろう。


勿論何時もの様に全員無傷で帰還などは難しいかも知れない。



どうした物かを検討した結果、夜襲を掛ける事にしたのであった。


出来る事なら虐殺に近い掃討作戦は行いたくは無い。中には年端もいかぬ幼子も含まれているだろう。


そう考えるだけでドンドンと精神的に消耗して行く俺とお父様であった。



■■トージside■■


ジュンペイから呼ばれて向かった先には一大コロニーがあった。


これで全てだと思いたいが、もしかするとこれとは別のコロニーがあるやも知れぬのは否めない。


どうもこのローデッシュ王国は一般的な国家と違って国と言う考え方に大きく相違がある。


兎に角気が乗ろうと乗るまいと、監視塔等で奴らを発見したらスクランブルを掛けて後を付けて1つずつコロニーを全滅させて行くしかない。

そう、名付けて『送り狼作戦』である。



こうしてまず手始めにジュンペイが見つけて来たこの5万程のコロニーを夜襲で全滅させる事にしたのであった。



■■■


皆が寝静まった夜中の3時頃に奴らの大半を仕留める為に魔法師団、魔法部隊の大半を借り出して、これまでに無い大規模な広域ミスト・バーンを仕掛ける。


全域に十分な帰化魔力の靄が充満したのを見計らって、退避と共に点火する。


チュッドーーーンと言う爆音と共に退避先にまで見える程の目映い閃光が目を眩ませる。


それを合図に待機させていた物理攻撃部隊である王宮騎士団とオオサワ騎士団の面々、更に国軍の兵士が次々にゲートで爆心地へと移動を開始する。


平野だったコロニーの所在地にはクレーターの様な窪みが出来ており、殆どの者が息絶えていたり悶絶して戦闘不能となっていた。


この1回のミスト・バーンで俺はまた1つレベルアップを果たしており、下記の通りとなった。


*************************************************


名前:トージ・フォン・オオサワ

レベル:23

HP:250/250

MP:1355/1405

力:330

知能:1156

器用:1156

俊敏:1156

運:20

スキル:魔法 鑑定EX 魔力感知 魔力操作 気配察知 剣術 投擲 魔力超回復 (偽装) 錬金 料理

    気配察知

加護:(創造神ロキシーの加護)


*************************************************

こんなレベルアップばかりで正直不満であるが国民が安穏とした生活を送る為に致し方が無い・・・。



夜を徹して辛うじて生き残った者達の息の根を刈り取りそして大穴に遺体を入れてかそうして埋葬すると言うトラウマになりそうな作業を熟したのであった。


日が明けて明るくなるとその悲惨さは尚一層酷い現実を我々に見せ付けて来る。


ある者は何度も嘔吐し、ある者は涙目になりながら黙々と作業を熟す。


こうしてこの不毛な作業は2週間続き、従事する者の精神を削って行くのであった。


漸く地獄の様な作業を終えて本国に帰って王宮からはお褒めのお言葉と褒賞を頂いた物の、何度もその光景が夢に出て来て鬱々とした夜を過ごすのであった。


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