第584話 初冬の殲滅戦
一晩明けて早朝から敵軍の放つ爆裂魔法の音で目を覚ます。
前回と今回で城壁は強固な物に仕上げているのでこれ位の攻撃なんて屁でもない。
前回の戦の際に比べて攻撃に気迫が籠もって居る様に感じるのは気の所為では無いだろう。
なんせ通常では戦を避けるべきもうじきに冬と言う時期に遠征して来て居るのだから焦りもあるだろう。
逆に言えば、俺達は守りながら籠城してノラリクラリと躱しておけば、冬本番が到来して勝手に寒さで自滅してくれそうな物である。
とは言え、こうも何度も来られては迷惑千万。キッチリ此方の実力を骨身に浸みさせてやる必要がある。
遅れ兵站部隊と一緒にやって来たジュンペイとナツキちゃんらと合流して今後の作戦の会議を開くのであった。
下手に損害を出さない様にしたので魔法戦で行こうかと思ったが、騎士組は前回の戦で余り手柄を立てられなかった事もあって今回は是が日でも外に出ての合戦を言い張る。
気持ちは判るとは言っても損害=勝敗に繋がる為に不満が出ない様に出した結論は日中は騎士組による合戦で様子を診て損害が出る様であれば、直ぐに撤退しての作戦変更で手を打つことにしたのであった。
勿論夜中は魔法部隊と魔法師団による魔法組の夜襲で一時も寝かす気は無い。そうして身も心もへし折って磨り潰してやる予定である。
作戦は決まったので士気の高い騎士団とオオサワ騎士団を前に出陣前のスピーチ一発かます事にした俺は壇上に上って
「騎士の諸君、諸君らの使命は1人でも多くの敵に傷を負わせて敵陣を引っ掻き回し、自らは無事に戻って来るのが仕事である。そうする事でその後の戦況に大きく貢献するであろう。良いか、命さえあれば戻って来てくれれば何とでも治療のしようがあるので安心して欲しい。兎に角戻って贈るまでが仕事である。存分に引っ掻き回して来い!!」と演説すると、
「「ウォーー!!」」と言う歓声が湧き上がったのであった。
ハッキリ言って俺自身はこの作戦に賛成してないのだが、遺恨を残さない為に致し方無い。
作戦のカウントダウンが始まり一斉に魔法部隊による怒濤の遠距離攻撃が開始される。
これまで防戦一方だった我が軍からの反撃に浮き足立つローデッシュ王国軍に更なる混乱を招き入れる用に、俺とジュンペイとそれにナツキちゃんとでゲートを敵陣の真ん中辺りに繋げて騎士達を手分けして送り出す。
突然群衆の中に現れた和賀郡の騎士達にアワアワと為す術を失って斬り付けられて行く可哀想な敵兵達。
この30分に及ぶ奇襲作戦は大成功に終わり退却の合図と共に集合地点に戻ってくる我が軍の騎士達をゲートで送還して怪我人の手当等を魔法部隊と俺達とで行う。
幸いな事に部位欠損までの大怪我を負った者は皆無で敵の出鼻を挫き、初っ端の攻撃としてはまずまずの成果であった。
これで騎士達の手柄欲は取り敢えず満たしたので予てより考えて居た長期敵軍消耗戦に移行する事にしたのであった。
まず夜中の魔法組による嫌がらせ攻撃であるが、基本、食事の支度や暖を取る為に焚き火をしている灯りのある所を徹底して範囲攻撃する事にして、凍えて眠れぬ夜を過ごして貰う事にしたのであった。
気温も冷え込み寒さが身に染みる真夜中焚き火の灯りのある所に集中的に範囲攻撃を仕掛けて行くと悲鳴と共に灯りが狙われて居る事似気付いた奴らが指示を出したのか急速に焚き火の灯り掛けされて行く。
こうして夜中の嫌がらせ作戦初日の夜は真っ暗の敵陣のままに過ぎて行くのであった。
2日目からは更なるダメージを与える為に、ランダムに魔法攻撃を仕掛けて安眠を取り上げた。
昼間は騎士組による奇襲攻撃、夜中は寒さと不意打ち攻撃に打ち震えながらの睡眠不足。
1週間の内にこのコンビネーションは着実にダメージと疲労を積み重ね見る見る敵軍の動きは精細さを欠き士気も一目瞭然なほどに下がって行ったのだった。
そして更にダメ押しの拍車を掛けるべく俺は新しく広範囲に気温を下げる魔法を考案したのであった。
上空の冷たい空気を魔法で地上に吹き付けるダウン・バーストである。
尤もこの魔法は味方陣営にもダメージが及ぶかも知れないので、ジュンペイとナツキちゃん、更に魔法組には出来る限りのシールドを張って貰う事にして万が一に備えて貰うのであった。
結果から言うと、この『ダウン・バースト』は味方もドン引きする程の気温の下がり具合を齎してしまい、味方陣営では慌てて焚き火をして弾を撮るのであった。
このダウン・バーストは敵陣営に多大の被害を齎して堪らずに焚き火を点ける箇所が無数に出て其処を狙って魔法組による範囲攻撃で甚大な被害を与えたのであった。
この作戦を2週間に渡って続けた結果、敵陣営でマトモに戦闘出来る者が激減してしまい、既に消化試合的な雰囲気になってしまったのであった。
当初やって来た時には3万の軍勢であったものの、現在ではマトモに動ける兵は1万を切る勢いである。
更に1週間が過ぎた頃に、敵軍が回れ右をして退却しようとして居るのを見逃さずに追い打ちを掛けて最後の1万の兵を騎士と魔法部隊の混成によって刈り取ったのであった。
文字通り完全に全滅で、辛うじて数名のみを態と見過ごして敵国への報告役に仕立てたのであった。
さて、敵兵を全て殲滅したのは良いが、木の間遺体を放っておいてはゾンビの元となるので、魔法で幾つか大穴を掘って其処に敵兵の遺体を放り込んで行く。
そして魔法部隊の火魔法によって火葬を執り行う。
この戦争で何が長かったと言うと、この敵兵の遺体の処理に一番時間が掛かったのであった。
願わくば、命からがら戻った報告役の報告を聞いて第三陣の出兵を思い留まって欲しい物である。
俺もダウンバースト等でレベルが上がるとは言え、こんな事で上がっても嬉しくはないのである。
因みに、今回の戦の最中にレベルアップを果たし、下記の様なステータスとなったのであった。
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名前:トージ・フォン・オオサワ
レベル:21
HP:230/230
MP:1585/1585
力:310
知能:1136
器用:1136
俊敏:1136
運:20
スキル:魔法 鑑定EX 魔力感知 魔力操作 気配察知 剣術 投擲 魔力超回復 (偽装) 錬金 料理
気配察知
加護:(創造神ロキシーの加護)
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こうして戦争終結から遅れる事1週間、漸く全ての後始末を終えて全員無事に王都に凱旋するのであった。
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