第578話 オリハルコンを求めて

新国王の治世となって安定した世の中となって3年の月日が流れた王立学園に通って居たナツキちゃんもいつの間にか卒業の年となって俺と一緒にダンジョンに潜る様になった。



とは言っても俺は第55階層まで到達して居り、流石にブランクの長いナツキちゃんをそんな階層に連れた行けないので、ナツキちゃんのレベルに合わせ第38階層のオーガ狩りをさせてレベル上げを見守って居る所である。


ナツキちゃん用に作った新しいミスリル製の剣は高周波ブレード化してオーガと打ち合った結果3合目で砕けてしまい、結局、無属性の高周波ブレードでサクサクと斬り付けて居たのであった。


オリハルコンが豊富に手に入れば黄金丸と同様のオリハルコン製の剣を作ってやれるのだが、オリハルコンの取れ高は少なくとても1本の剣にする程には集まらないのである。


え?そうれなら俺のSランクのカードは?って思うかも知れないが、だからこそ、Sランクのカード紛失時の再発行は非常に高額になるし直ぐに用意出来るかも怪しかったりするのである。


無属性魔法で高周波ブレードが作れるならそれで良いじゃないかって思うかもしれないが剣の実態が在る場合と無い場合とで消費魔力量が全然違うし斬れ味も実態剣がある場合の方が良かったりするのである。


そんな訳で出来れば高周波ブレード化に耐えうる実態剣が在る事が望ましいのである。


なので出来ればナツキちゃんにも専用のオリハルコン製の剣を作ってやりたいと思い密かに少しずつオリハルコンを集める俺であった。


オリハルコンの収拾と言えば何と言ってもダンジョンである。可能性としてはボス部屋等にある宝箱から出て来る可能性が高いのでナツキちゃんに付き合って浅い階層を廻りつつ宝箱を探して居るのであった。



結果高い幸運値のお陰か宝箱は何個か見つかった物の俺の高い物欲センサーが邪魔をするのかお目当てのオリハルコンのインゴットは出て来て無い。



宝箱を見つける度にナツキちゃんが凄い凄いと喜ぶが今の所その中身に関してはハズレが多い。


こう言う今こそ、無駄に高い俺の幸運値に仕事をして欲しい物である。


こうしてナツキちゃんとのダンジョンデートを終えて王都邸に帰って来ると、コジー君が俺を待ち構えており、何でも南のバリント王国と言う国の鉱山でオリハルコンの鉱脈があって其処から得られたオリハルコンを使って現地のドワーフの鍛冶師がオリハルコンの剣を作ってくれると言う情報を商会経由の情報として仕入れてきたのであった。



この情報に俺は飛び付き、翌日からナツキちゃんと2人でバリント王国を目指して旅立つのであった。


まずは南の国境に近い辺境伯の領地まで固定式ゲートで移動して、バリント王国までのルートの情報を冒険者ギルドや商業ギルドで得てから、2人で仲良く編隊飛行で空の旅に切り替えるのであった。



こうして親子仲良く2人で空を飛ぶのは飛行方法を教えた頃以来久し振りで娘の成長を感じて胸が熱くなるのであった。


バリント王国は非常に広く、更に言うと治安も余り欲無くて平野部を通り抜けて山間部に到着するまでに早3週間が経って居りその間に大小含めて12組の盗賊を撃退して懐も吹くホクホクな俺達であった。

ナツキちゃんはこうして盗賊と対峙するのは初めてであったが臆する事無く盗賊を遠慮無く撃退して、商団等が救えた事にその可愛い顔を綻ばせて居たのであった。



漸く山間部のお目当ての鉱脈の村に辿り着き、ドワーフの名工と名高いモンジャミン氏の元を訪れて交渉を開始するのであった。


「お主の剣を作るのじゃなくて、そのお嬢ちゃんの剣か!」と驚くモンジャミン氏に俺の黄金丸を見せてやり、


俺はこれがあるので良いけど、同様の使い手であるナツキちゃん用のオリハルコンの剣が無いとミスリルの剣だと砕けて仕舞う事を力説したのであった。


さて、鉱脈の在る村と言う事で無尽蔵にオリハルコンが取れる訳でも無くて一応それなりに制限が国から掛かって居るとの事で何だかんだの手続きを取る事2週間。


漸くバリント王国の方から剣2振り分の許可が下りて、ナツキちゃんと序でにジュンペイの分のオリハルコンの剣をモンジャミン氏にお願いすることになったのだった。


剣を鍛造するには最低でも1振り当たり3ヵ月掛かるとの事で俺は先払いで2振り分の代金を払って王都邸に戻ったのであった。


ナツキちゃんも既に結婚までした大人のジュンペイでさえもオリハルコン製の剣が貰えるのが相当に嬉しいらしく、ズッとソワソワしてすごしていうたのであった。


因みに1振り当たりのお値段であるが、俺で有れば払えるが、普通の貴族家であれば10年分の税収が吹っ飛ぶ位の金額とだけ言って置こう。それを2振りである。相当な金額となったのはご理解頂けたであろう。





■■■


漸く半年が過ぎて2人の剣が出来上がった頃である。


モンジャミン氏の元を訪れて完成して居た2振りの剣を受け取ったのであった。


「儂の職人人生の中でもなかなか無い程の逸品に仕上がったのじゃ。大事に使ってくれ。」と満足気に俺達にそれぞれの身体に合わせた剣を手渡すモンジャミン氏。


「ありがとうございます、これを有意義に使って領民を守ります。」と嬉し気に受け取るジュンペイ。


それに続けて

「ありがとうございます、私はこれを使ってダンジョンを制覇したいと思います。」と頼もしい言葉を放つナツキちゃん。


2人共にモンダミン氏の工房の裏庭に在る試し斬りの場で、地面に突き刺さった丸太を高周波ブレード化したそれぞれの剣でスラリとバターをヒットナイフで斬る様に真っ二つにしてモンジャミン氏を驚かせて居たのであった。


「なる程これ程の腕なのか!オリハルコン製の剣を欲する訳がわかったわい。」と納得していたのであった。


最後に再度お礼を3人で言ってモンジャミン氏の工房を後にしたのであった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る