第573話 思わぬ発見と新メニュー

自領の開発が漸く一通り終わってホッと一息。


俺の所のオオサワ領立学校は他家のきぞくにもかなりの衝撃を与えた様だ。


一部貴族の領都でも我が領の真似をして領立学校を建設したりし始めて自領の人材の有効活用に力を入れ始めた様である。

尤も財源の問題で流石に我が領の様に完全無料とまでは出来て居ない様なのだが無いよりはマシだろう。


我が領のオオサワ領立学校もそうだが未来への投資となるので即座に即戦力の人材が沸いて来る訳では無い。


実際に使い物という言い方は失礼かも知れないが、開花して戦力となってくれるのはその中の何%居るか判らない先の長い話なのである。


他領とは違って我が領では完全に領都と各村々をゲート網で繋いで居るので我が領全体の子供が無料でゲートを使って通学し、その恩恵にあずかれるのが我が領のメリットでもある。


閑話休題


ゲートで村々を結んだお陰で我が領地の特産物を調べたりする事にも貢献して居る。


特産物を調べた結果思いも寄らない適合品がこの世界にあった事が判明し、その結果コンニャクイモの代替え品でコンニャクの製造に成功した。

まあ、単品で食べても余り味がする物ではないがこれから冬になって寒くなるとおでんの具材として使えるし、勿論すき焼き等の鍋物に入れるシラタキも作れるのである。


おでんと言えば練り物の製作も海に面した都市に赴いて海産物を仕入れ付くつ事に成功した。


ただ最大のネックは、一つ一つが手作りの為量産が出来ない事だろうか。


こうして試しに作ったおでんは家族にも子供等にも非常に好評でアンテナショップのラインナップに加えたいと打診をされた程であった。


とは言っても本格的におでんの具材を量産出来る様にするには些か人員の問題も在って現実はそう甘く無いのであった。


結局アンテナショップでのおでんの販売は単価と具材の供給数の問題で断念し、高級レストラン版の方でのみ数量限定でおでんをメニューに加えたのであった。



こうして世に出したおでんは貴族達だけでなく今や常連となっている国王陛下や宰相閣下も唸らせて冬の間は頻繁に通って来るのであった。


最近では国王陛下だけで無く王族のご家族もご一緒に来店される様になって過去にユキちゃんの縁談話の一件で話題に出た王太子殿下と接客で話す機会を得たのであった。


王太子殿下は良く言えば生まれ育ちの良いボンボンでグイグイと国を引っ張って行く様な感じには見えないタイプで正確は温厚そうである。


ただ問題はこの方が時期国王陛下になって国を引っ張って導いて行けるのかは微妙である。と言う様に少しこの国の先行きに不安を感じるのであった。


現国王陛下は温厚であるが賢王であり、俺の所の料理に対する欲以外に野望や余計な欲と言うのを持っていないタイプで、それ故に我が国の政治は安定しており下手な権力抗争も無いのである。


俺は我が子や家の子らの為にもこの平和で住み易い王国が続く事を心の中で願うのであった。


■■■


ジュンペイが13歳になり王立学園を無事に首席で卒業した。



予てより少しずつ領主の仕事は既に手伝わせて居るが、卒業を機会にもっと本格的に俺の仕事を手伝って貰う事にしたのであった。


とは言え、まだまだ遊びたい盛りの13歳。適度に手綱を緩めつつダンジョンに行くのを許して1日置きに王都のダンジョンに通って居たりする。


俺も最近はナツキちゃんの方の相手訓練に感けていてダンジョンに行けていない。


ナツキちゃんは既に嘗てユキちゃんやジュンペイがそうであった様に基本的な攻撃魔法は既にマスターし、最近では回復系魔法にゲートや『時空間庫』まで覚えてしまった。


今は重力制御魔法を教えてウィングスーツによる滑空を覚えさせようとして居る所である。


なので日々面白い様に吸収して進化して行くナツキちゃんに付ききりで魔法や閃光流の剣術の指導をしているのであった。


現状近所の森で魔物狩りをしている程度であるが一通りの教育が終わったら、ジュンペイにジョイントしてナツキちゃんを連れてダンジョンに行こうかと思って居る所である。


「お父様、ナツキも早くダンジョンで魔物を相手にしたいです。」と最近ナツキちゃんからのリクエストの圧が掛かる。


こうして教える事も無くなり、ジュンペイと一緒に3人で王都のダンジョンに潜るのであった。


初めてのダンジョンでナツキちゃんのテンションが高いが浮かれて油断せずにシッカリ気配を探って俺達が見守る中、初日にして10層の階層ボス部屋まであっと言う間に辿り着いてしまうのだった。


一晩明けた翌日は11階層から始めてまたもや3人駆け足でダンジョンを走って廻って18階層まで進んだのであった。


その後も1週間掛からずに27階層を突破していよいよ美味しいミノタウロスの待つ28階層に辿り着くのであった。


高周波ブレードを使ってサクっとミノタウロスを屠るナツキちゃんに思わず後ろで見て居て拍手を贈ってしまう。


現在ミノ亭で使うミノタウロスの仕入れは子供等がこの階層で行って居るが、叩き上げの彼等でさえ、初戦ではこうもアッサリミノタウロスを倒す事は出来なかったのだ。


流石は我が娘と言う事だろう。と思わず親馬鹿を発動する俺であった。

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