第536話 寄親のご令嬢

護衛の騎士4名が剣抜いて威嚇を始めるも初動が遅れた為に簡単に馬車を包囲されてしまう。


「お前等この馬車がフォーセント辺境伯の馬車と知っての狼藉か?」と問いただして居るが当然知って居ての襲撃だろう一向に退く様子も無くジリジリとまを積めて来て居る。



俺は地面に着地して、後ろから馬車に駆け寄り「加勢します!」と宣言した後、魔弾で囲んでいる奴らの肩や足をパカスカ撃ち抜いてせんとうりょくを割いて行く。


本の数分も掛からずに盗賊ともの武装を解除して、拷問をしてアジトを吐かせてニヤリとした俺は、一応先に街道を塞いで居た倒木を身体強化で持ち上げて退かした後、騎士に後を任せつつアジトへと突入したのであった。


近くの崖の洞穴に作られていた盗賊のアジトにはタンマリとお宝があって、それらを全てをホクホクとしながら回収した後誰も捕らわれている者がいない事を厳重に確かめてからアジトを後にしたのであった。



お宝を回収して街道に戻って見ると、まだ馬車は発車して居らず、俺の戻りを待ちながら盗賊共を尋問していた様であった。


戻って来た俺を発見した騎士の1人が、

「先程は加勢ありがとうございました。此方はフォーセント辺境伯のご息女が乗る馬車で、危ない所を本当に感謝す。」とお礼を言う騎士。


「そうでしたか。私はサイノス・フォン・バルケッタが次男、トージ・フォン・バルケッタと申します。お役に立ててなによりでした。」と愛居殺を交わし、


面倒なので残った盗賊や共をサクっと始末して、地面に開けた穴に落として焼いて埋めたのであった。


適当に言って別れようと思った物の、我が家の寄親であるフォーセント辺境伯のご息女であるチェリー・フォン・フォーセント嬢に呼び止められて仕方無く馬車に同乗して次の宿泊地まで行く事となってしまった。


だが最終目的地が結局同じ王都とバレてしまい、最後までご一緒にと押し切られてしまい、その後の自由な旅は無くなってしまったのであった。



「トージ様、お強いのですね。」と馬車の中と言う閉鎖された空間で必要以上に躙り寄って潤んだ目で見つめて来る同年代のチェリー嬢にタジタジとなりながら当たり障りの無い回答で躱す俺。


この地獄の様な時間が王都まで続くのは避けたいと思いながら、如何に断りを煎れるかに全頭脳を総動員して応えを探す俺だったが、結局そんな都合の良い上手い言い訳なんか思い浮かぶ事も無く流されるままに同行為ざるをえなくなったのであった。


渋々乗った馬車の中には侍女のメイドとチェリー嬢だけの息苦しい空間でこれから先の事を思うとウンザリしつつ、

「大変申し訳ないのですが次の街から当初の通り独自の足で王都を目指したいと思います。これは自分に課した目標なので、御了承いただきたい。」と言ってみた。


「まあ、そんな次の街から王都までだと、徒歩だと数週間は掛かりそうですわ。乗って行って下されば・・・。」と懇願する様に詰めて来るチェリー嬢。


「実際の所、身体強化を使って走って行くので馬車よりも速く、更に鍛錬になるのですよ。また王都では王立学園でお会いすることもありましょうから、その時にでもまた。」と自分の言いたい事を言い切った。


すると、黙って聞いて居た侍女が「お嬢様、命の恩人であるトージ様にご無理を言っては無礼に当たります。ここは王都での再開を楽しみにして、トージ様がご自分に課せられた任の達成をお祈り申すのが良いかと存じます。」と助け船を出してくれたのだった。


すると、チェリー嬢がしょうがないと言う感じに頷いて俺に王都での再会を楽しみにして居りますわ。」と言って次の街で馬車から降りる事を許可してくれたのであった。


思った以上にチョロくて助かったと安堵した俺であった。


3時間の時が流れて、次の街に着いた俺達は城門の所で別れを告げて馬車を降りて別々の道を行く事となる。


場内に入った俺は冒険者ギルドに寄って盗賊の討伐を報告だけしておき、お薦めの宿を聞いて其処に一晩の宿泊するのであった。


尤も刎ねた首や死体を持ち運んで無い為報酬はなかったのだがそんなチンケな報酬等吹き飛ぶ程のお宝をアジトで頂いたので問題無しである。


そうそう、この世界のお金の単位は、シリーと言って下記の様な通貨となって居る。

物価を考慮しても大体1シリーが1円と言う感じだろう。


大黒曜貨・・・・百億円(百億シリー)

黒曜貨・・・・一億円(一億シリー)

白金貨・・・一千万円(一千万シリー)

大金貨・・・・百万円(百万シリー)

金貨・・・・・十万円(十万シリー)

銀貨・・・・・一万円(一万シリー)

大銅貨・・・・一千円(一千シリー)

銅貨・・・・・・百円(百シリー)



冒険者ギルドに進められた宿は安くて1泊2食付きで、三千シリーの宿であった。


勿論風呂なんか贅沢な物は無く、自分で身体と部屋やベッドにクリーンを掛けて、から就寝するのであった。


但し夕飯はソコソコ美味くてホッと一息付けたのはありがたかった。


因みに、盗賊のアジトで俺が得たお宝だが、現金で白金貨5枚以上・・・つまり五千万シリー以上を一挙に得た事になるのだ。


これは殆ど不労収入と一緒なので実に美味しい。


討伐医した盗賊の持ち物は合法的に討伐者の物になるのでこれからも積極的に狩って行きたいところである。



こうして、チェリー嬢と別れて身軽になった俺は、翌朝朝食もソコソコに火が明ける前に宿をチェックアウトして城門を出て身体強化を掛けてから走り去って、城門が見えなくなった辺りで上空に昇ってウィングスーツによる滑空を始めたのであった。



「いやぁ~煩わしい絡みがなくて自由って素晴らしい!」と空中で思わず自由を満喫して叫ぶ俺であった。



自由になった反動か、その後の飛行では思わず張り切ってしまって、大幅に飛行速度がアップして、チェリー嬢と別れてから僅か4日で王都の城壁が見える位置まで飛んで来てしまったのだった。



王都の近所の森の中に着地して何食わぬ顔で街道に出て身体強化をして王都の城門まで掛けて行くのであった。


城門の列に並んで冒険者カードで入場して冒険者ギルドの一を衛兵に訊くと当たりの衛兵のお兄さんが優しく教えてくれたのであった。




さて王都だが我がバルケッタ家の小さいながらも王都邸が貴族街に存在するので其処を拠点にする様にとお父様より言いつかって居る。


王都の冒険者ギルドに寄って移動の報告を済ませる為に受付嬢の列に並んで居たら、俺をみた王都の冒険者がお決まりの台詞で俺に絡んで来る。

「おいおい、お嬢ちゃんここはお嬢ちゃんの様な子が遊びに来る所じゃないんだよ。」と俺を女の子と見間違ってなれなれしく肩に手を掛けて来ようとするので、


「目腐ってるのか、男の俺が女に見えるなんてどんだけ女に飢えてるんだよ?」と反論しながら肩に置こうとした手を躱しつつ軽く捻ってやると、顔を真っ赤にして怒り狂うその冒険者。


そして古紙に付けた剣の柄に手を触れて剣を抜いた瞬間に魔弾で手の甲を撃ち抜いてやったのだった。


ギャーーと言う悲鳴と共に剣を床に落とす冒険者の足をなぎ払ってひっくり返すと、

「其処までだ!」と言う怒声が聞こえたのでそのまま追撃を止めて前の冒険者の番が終わって俺の順番になったのでそのまま受付のお姉さんに、

「この度バルケッタから王都に移動してきたので移動報告に来ましたEランクのトージです。宜しく。」と冒険者カードを提示すると、受付のお姉さんに驚いた顔でガン見されたのであった。

すると後ろからさっきの罵声の主が声を掛けて来る

「おいおい、何シレッと何も無かったかの様に自分の用事を済ませようとしてるんだよ!?」と少し呆れた様に話し掛けて来た。


「ああ、単なる正当防衛だし殺しては居ないから大丈夫だろう?」と悪いのはこのオッサンだろう?と床で呻いて居るオッサンを睨むと、


「まあそうなんだがお前強いな!だったらもっと穏便に済ませてくれよ」と嘆くかの様に俺に言ってくるのであった、



この怒号を発した主はマクサーガと言う名で王都の冒険者ギルドのギルドマスターであった。


トージと言う俺の名を覚えて置くと言われてこの一件は幕を閉じたのであった。


俺は王都の冒険者ギルドの依頼の掲示板をチェックしてバルケッタよりも討伐依頼の多い事にニヤリとするのであった。


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