第528話 取り戻した平穏な日々

俺がゲート網を止めた事と前国王の失踪を結び付ける者は巷に数多く居れど、それを表立って口にする者は少ない。

それは一時期俺に監禁収容されていた国軍や王宮魔法師団も同様で摂政から正式に即位された国王陛下からの王命で箝口令が出されて公然の秘密として俺の関与が隠匿されたのであった。


これで一連の当家への理不尽な命令も搾取も無くなってイヨイヨ本格的に引退してケンイチに当主を譲ってしまおうと俺は考えたのであった。


ノンビリと孫に囲まれて過ごす日々は何物にも代えがたく至福の一時であるが、惜しむらくはそれを一緒に共感してくれる筈だったケリーが俺の横に存在しない事である。



前国王への怒りから覚めてしまうと、ケリーを失った喪失感に心が占有されてしまう。

何かへの怒りや使命感は有る意味生きる目的を与えてくれる物なのかもしれない。


◇◇◇


感情の起伏の無い変化に乏しい2年が過ぎて行った。


マークは無事に王立魔法騎士学校を卒業してケンイチに習って領主の仕事を手伝わされている。

7歳になったマリカは既に魔法を使える様になってもう一人前の魔法使いと言っても過言では無い。


小さい頃から鍛えた魔力量と、俺がフェザー様に頼んだ『魔力超回復』ギフトの恩恵で、もしスタンピードがあっても固定砲台の役割も難なく熟すだろう。



非常時ではないので魔法部隊の出番はほぼ無いものの、新規の孤児院卒園生の教育で忙しくして居る。建築部隊も順調に貴族の領地の仕事を熟して順風満帆である。



今やオオサワ商会は王国のGDPの8割近くまで占有しており、国とも良い関係に落ち着いて居る。


そうそう、宰相を務めていた義父も代替わりをして引退してちょくちょくちょく曾孫を見に来る様になった。



■■■


今年はアインツブルク王国建国500年記念の記念すべき年だそうで、正解各国からお祝いの来賓が押し寄せて大々的な建国祭のを行うらしい。


そこで王宮魔法師団や国王陛下より何か祭りに相応しい出し物と言うか催し物はないか?と相談を受けて、俺は『花火魔法』を提案して王宮魔法師団に伝授す事にしたのであった。


訓練場所は先日前国王を監禁した無人の荒野である。ここならどんなにドンチャンやっても他人様の迷惑にならない。


3週間程訓練した結果、大体物になったので、


「うん、これで大体良い感じに仕上がったと思うよ。お疲れさん。」と言って。全員に終了を告げると、


「オオサワ殿、最後にもう1回だけ通しでやらせてください。当日は失敗は許されません故に。」と王宮魔法師団長に泣きの1回を請われて了承したのであった。



「行きます!3,2,1,0」と言う号令の後に始まる打ち上げ花火達。


何れもドッカーーーン♪パラパラ♪ドッパーーン♪と言う爆音を上げて綺麗に夜空に広がって居る。良い感じである。



俺は夜空を見上げて満足して頷いていた。



ズブ!「ウグッ・・・」突如、後ろから羽交い締めにあって、複数箇所に刺された様な激痛を感じ、慌てて魔装と回復を掛けようとしたのだが、どうら即効性の毒が塗られて居たらしく、回復も解毒も間に合わず、そのまま気を失っていたのであった。



俺の倒れた場所は偶然にも元観測小屋が在った場所だったのであった。


「我々を監禁し、王国に刃向かう等万死に値する。アインツブルク王国の為に!」

「「アインツブルク王国の為に!!」」と暗闇に木霊するのであった。


「「亡き全国王陛下の為に!」」


「反逆者に死の鉄槌を!」


「反逆者に死の鉄槌を!」


こうして満足そうな笑みを浮かべて王宮魔法師団達は王都へと何食わぬ顔で帰って行くのであった・・・。

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