第521話 何気無い日常 その5

漸くリバーテック公爵からの歓待も終わって我々は自国の屋敷へと戻って行く事が出来た。


今回のスタンピードは本当に厳しい物であったが、一つだけレベルアップ的には美味しい物であった。


通常ダンジョンアタックだと自力で奥へと潜って行かねばならないが、スタンピードだと、自動的に向こうから『列』を為してやって来るのでまるで工場のライン生産の様である。等と不謹慎な事をちょっと考えてしまう俺であった。



俺達は似た者親子なのか、ケンイチもケンジも似た様な発言を屋敷に帰ってから言って居たので、今回のレベルアップが相当に美味しかったのだろう。




さて、これだけで終わればまだ良いのだが数ヶ月が経った頃には評判が評判を呼んでしまい、恰も『国際救助隊』かの様に国外から我が国宛てに『閃光の茶人』達に救援を頼みたいと同様のスタンピードや災害の救援要請が入る様になったのであった。



変な2つなみたいなので子目されても嬉しくは全然ない。

義父の方にはホイホイと請けない様にお願いして居るのだが、代替わりしたばかりの新国王陛下が外交デビューとばかりにホイホイと請けてしまって、少々良い様に扱われて居る感が拭えない。


このまま言いなりになるのは癪なのでそれ相応の対価を吹っ掛ける事にしたのであった。


そもそも一貴族にばかり押しつけてくる方がおかしいのである。税免除だけでなく色々と王国が嫌がる項目を並べて交渉に及ぶのであった。



補足であるが、我がオオサワ商会もオオサワ領も王国一の税を納めているのでこれが1年無税になるだけで、王国には大きなダメージとなるのだ。その上で法外な出動費を吹っ掛ければ、こちらの意図をいい加減良く理解してくれるだろう。


国内の事なら同じ王国民を守る為と頑張る気持ちにもなるが、他国の救援要請にホイホイ担ぎ出されて嬉しい訳が無いのだ。


俺の要求に理由もないようの影響の大きさも理解して居る宰相閣下だけがオロオロしているのが面白かった。

それでもその条件を受けて尚俺に行けと言うので在れば、行こうじゃないかと言う訳である。


結局、国王陛下は問題の大きさを判って居らず、二つ返事で俺の出した条件を飲んでしまったのだった。


俺は恭しく頭を垂れて、


「王命つかわりました。」と返事をして青い顔をしている義父を尻目に謁見の間から逃げ帰ったのであった。


現行の王国の税収の最低でも20%以上が俺の所に纏わる税収なのにそれを1年棄てるとは太っ腹である。


こうして、新しい条件の下、俺達は関係の無い外国のスタンピードの救援に向かうのであった。





新条件の下でスタンピード等の沈静化を終えた頃、王宮から、義父経由で呼び出しがあって、扱いがぞんざいになってた事を認め謝罪ともなんとも付かない言葉を頂いたのであった。


新国王にも漸く自分のやった事の大きさが理解できたのであろう。


しかし、新条件の所為で10件の依頼を遂行した俺の方は向こう10年程王国に無税で良い事になって居るのだ。


その分を派遣先の外国から徴収出来れば良いが、易く無い金額だけにそうそう補充は難しいだろう。


で、何故呼び出されたのかと言うと、この先の条件をなんとかしてくれないかと言う事だろう。


「我々貴族は陛下の剣であり矛でもあります。この力は王国を守る為の物であって、他国にホイホイと使われる物ではありません。他国には他国の剣と矛があるのですから、まずはそれを勝つ雇うして手に余る様であれば救援を求めるのが筋と言う物でしょう。」とおおそれながら諭す様に進言するのであった。


で結局落とし処を探って行く中で税10年間全額免除から、20%支払いまで譲歩したのであった。


まあそうしないと国王陛下の尊厳を傷付ける事になるいし、公国の財政に大きなダメージを残す事になるからね。



こうして漸く出動要請ラッシュも形を潜め平穏の日々が戻って来たのであった。

もっともその頃にはマールも赤ちゃんぽさがなくなってしまってて可愛いちょっとお姉さんになったマールに変わって居たのであった。



魔物相手の殺伐とした日々からマールに魔法の手解きをしながら過ごす日々に戻って心が和む。


「お爺様、お爺様」とマールに呼び掛けられて思わずデレッと頬が緩むのであった。



ケンイチの所は第三子を。ケンジの所は第二子目を妊娠中で、と数ヶ月もしたら賑やかになりそうである。


ケンジの所のケンドリックも魔法を多少使う様になって毎日の様に我が家でマールと一緒とに訓練をして居る。


夕方になる前に俺がケンドリックを身重のサリューさんの元へと送り届ける訳だ。



こうしてノンビリと過ごしていると、戦い方を忘れてしまいそうになる。


ちょっと前なら、こう言う時はダンジョンアタックに出かけて居たのだが、最近はシスタンピード対応の所為で食傷気味でダンジョンに行く気力が沸かなくなってしまったのだ。


とは言え、我が領のマーク・ダンジョンはキチンと管理しないといけないので、ケンイチに任せつつ俺は孫と過ごして居るのであった。


一応、ケンイチには俺と同じ階層まで追い付いたら一緒に潜ろうとは言ってあったのだが、もう既に追い付かれて居るのに俺が動いて居ないのだ。



こんな調子では駄目だと思って、気合を入れ直してケンイチのダンジョンアタックに同伴する事にしたのであった。


マークダンジョンの第55階層はリザードマンがメインの階層で罠は多いものの俺達に取っては特に難しくも無い階層である。


サクサクと先に進んで行って親子でここのリザードマンは楽だが経験値的に美味しくないな。と語り合うのであった。



やはり息子と行くダンジョンはそれなりに楽しい物で、たものしくそだった息子を誇りに思いつつ楽しい時を過ごすのであった。





半年の月日が流れて、ケンイチの所には女の子が生まれマリカと名付けられた。そしてケンジの所にも女の子が生まれてサクラと名付けられたのだった。


俺が名付けた訳では無いが良い名前である。


こうして、我が家も賑やかになったのだった。


そんな楽しい一時であったが、王宮から、今回は『どうしても断れない緊急事態』と言う事で、お呼びが掛かる。


どんな無理難題かと恐れながら向かったが、同盟国がその隣国から宣戦布告を受けて攻撃を受けて居るとの事であった。


まあ同盟国なので、盟約に従って知らぬ顔は出来ない。既に王宮魔法師団と国軍は一足先に戦場に援軍として出向いて居ると言う。


なので俺の所にも行って戦局を変えて来て欲しいとの仰せであった。


戦局が変えられるかは相手次第であるが、仕方無く了承して、魔法部隊の準備をして、王宮魔法師団と合流を果たすのであった。



まあ今度は魔物相手出ないので気が重いが、愚痴を言っても仕方が無い。


速やかに戦争を終わらせる方法は、相手の首都を攻撃するか相手の大将つまりトップを潰す事である。


今までの戦争では準備期間があったので後方への嫌がらせ等色々行えたのだが今回は既に開戦しているのでそうもいかない。と頭を悩ませる俺であった。

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