第512話 行列の出来る土建屋 その3
行列が出来ていた国の分の工事を終わらせるのに数年の月日が流れ漸くホッと一息ついた頃には建築部隊はいつの間にか増員に次ぐ増員で当初の3倍の人数に膨れ上がっていたのだった。
これらの工事でタンマリと利益が出たので建築部隊のみんなにはボーナスと休暇を与えて楽しい寛ぎの一時を満喫して貰っている。
因みにゲート工事の波は一先ず去ったが他国の城壁の拡張工事の話もボチボチ入って来て居る様で建築部隊の勤務状況がブラックにならない様に調整すつつ請ける事になっている。
以上が今の所の建築部隊の近況となる。
一方万が一の際に出動する魔法部隊も別口で専業組が控えて居て彼等は日々訓練や魔物の間引きに勤しんでいる。
建築部隊も元を辿れば魔法部隊なので、全員イザとなれば魔法部隊同様に戦えるので、本当に万が一の有事にはオールインして国内最強の魔法部隊になるのである。
しかし、あまり兵力だけが強調されると痛くも無い腹を探って来られるのも嫌なので、態々『建築部隊』と『魔法部隊』の2つの別働隊と言う風にみせかけているのは正解だと思う今日この頃であった。
俺はと言うと漸く纏まった休息を取って溜まってる本来の領主の仕事をケンイチに振ったり学校が休みの日はケンジと森の魔物討伐に出かけたりマークと遊んだりと割と忙しい。
そもそも、毎回俺が工事に出張る必要は無く、建築部隊に任せて居ても十分に遂行できるのは判っているので徐々にその様に移行して行く予定である。
尤も他国の大きな工事の初っ端の挨拶だけは貴族と言う地位を持った俺が行く事で先方も態度が変わりそうなので、そこら辺はケースバイケースで臨機応変に変えて行こうと思っているのであった。
■■■
建築部隊の休暇が終わり通常業務と言う事で次の案件が決定した、とある王国の王都の城壁の拡張工事である。
最初の顔合わせの段階だけ俺が参加して国王陛下と謁見して、それ移行は建築部隊に丸投げが決定している。
建築部隊はもう既に何件も城壁の拡張工事を経験して居るので基本問題は無い。安心して任せられるのである。
スムーズな謁見も終わって建築部隊の隊長を務めるケルン君に全てを撒かせ早々に領主の仕事とマークの待つ屋敷へとゲートで戻るのであった。
ケンジはまだ学校から帰って居らず、マークをと魔法を使って遊びながら魔法の訓練場へと移動して本格的な訓練へと移行する。
最近のマークのお気に入りは隠密セットを使った隠れんぼであるが、屋敷内でやるとスタッフの邪魔になるので裏庭や魔法訓練場等で行う事が多いのである。
こうしてケンジの居ない日はマークと魔法訓練も兼ねた遊びで過ごすのが今の俺の寛ぎの一時であった。
とは家そろそろマークも魔物討伐デビューしても良い頃合いである。
ケンイチと連れ立ってマークを連れて森へ魔物討伐に出かけてみる事にしたのであった。
流石は俺の孫である。始めての魔物狩りでも教えた通り魔弾で的確にヘッドショット決めて魔物を仕留めて行く。
そして親馬鹿と孫馬鹿の俺とケンイチの2人はマークを褒めに褒めたのであった。
工事の方は順調に進み特におれが出向く必要もないのだが、顧客へのアピールの為だけに週に1度程度は現場に顔を出して建築部隊の工事を見て廻って褒める様にして居る。
そして戻ってはマークの相手をして魔物狩りへと出かけるのであった。
1箇所の拡張工事が完了すると、評判が評判を呼んで更にまた工事の依頼が来る様になる。よやくだけ溜まって行くのは精神的に厳しい。その為最大3チームに分けて動じ並行で3箇所の工事を行える様にしたのであった。
そうすると不思議な物で3チームが互いに競う様にサグピをして、予定よりも工事が早く進行したりするのだが、無理をしない様に各チームのリーダーにキツくペース配分を間違えない様にと通達したのであった。
そもそも工事箇所が違えば総延長等の条件が違うので競う事自体が無意味なのである。なので無理にペースアップするよりも快適に仕事を効率良く進める方が重要と言う訳である。
俺の釘がちゃんと刺さった様で無駄に競う様な風潮は形を潜めブラックな気配は無くなったのだった。
こうして幾つかの城壁の拡張工事を順調に完了して行き、完了したら定期的に大型の休暇を与えての繰り返しを続けるのであった。
まあ幸いな事に評判が評判を呼んで適度に拡張工事の案件が続き良い流れが維持できたのも大きい。
流石にこれだけ建築部隊を増やした後にピタッと案件が止まると人件費だけでも大きな出費になるので何年も無仕事で現状維持は厳しいかもしれないからな。
こうして、我がオオサワ商会の建築部隊はこの大陸中で活躍を続けその名をとどろかせるのであった。
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