第488話 開戦 その2

決戦が終わって2ヵ月が経った頃マンチェスター帝国の皇城に負け戦伝令が飛び込んで来て戦の詳細とほぼ全滅と言う甚大な被害が告げられた。


俺は隠密モードで皇城に潜入し、その瞬間を偶然にも観察して居た。


皇帝は瞬間湯沸かし器の様に激昂して、ただ使命を果たしただけの哀れな伝令を怒鳴り散らす。


こうして漸くマンチェスター帝国の首脳部にこんかいの徹底的な負け戦が理解出来たタイミングで、第二波の攻撃を仕掛ける事となる。


俺は王宮に先方の状況を伝えソロソロ頃合いだと奇襲作戦の開始を進言するのであった。

そもそもであるが現在のマンチェスター帝国の帝都も皇城自体も城壁がボロボロになっていて、上を下への大騒ぎの真っ只中である。そこに来て今回の負け戦の一報が入って大騒ぎに更なる燃料を投下してしまった状況である。



そして予てより予定した通りに選りすぐりの200名による皇城急襲と更に5000名の兵をもって帝都の制圧を行う事となる。


「よし、今から予定通りに敵の皇帝や皇族を取り押さえる。各自最善を尽くす様に。」と俺が言って、ゲートを予め予定して居た皇帝の私室や皇族の居住空間に繋いでゾクゾクと送り出して行く。そして書く制圧ポイントへ残りの騎士や兵を送り出しておれも後に続くのであった。


最初に皇帝を取り押さえる部隊が突入したのだが、隠れて護衛していた近衛騎士の一団に沮止されて、此方側の騎士に少なくない損害がでてしまったが、直ぐに皇帝を取り押さえて、近衛騎士も手が出せなくなったところで全員を切り伏せて制圧完了したのであった。


更に皇族の居住空間に押し入った部隊は比較的順調に皇族を取り押さえて制圧し、直ぐ様いっしつに集め拘束したのであった。


その後、皇城中に散らばった敵の反抗勢力を一掃する為に、更なる後続部隊を王宮からゲートで移送し襲撃開始から約2時間程でマンチェスター帝国の中枢である皇城と帝都の完全制圧を完了したのであった。



さて、一番今回被害が多かったのは帝都の制圧を行った5000名の騎士と兵士の混成部隊で、衛兵や冒険者による反撃に遭ってしまって、300名程が亡くなってしまったのだった。


こうして、一晩の内に長年栄華を誇ったマンチェスター帝国は我が国によって滅ぼされ属国とナスル医果てたのであった。


新しい皇帝は僅か6歳の少年で、完全に我が国の傀儡政権となったのであった。


他の後続の男児は前皇帝も含め斬首として、非情に徹した処置となったのであった。


これに異を唱えた女性皇族の殆どは幽閉の身となり表舞台に2度と出る事は無くなったのであった。


これでおれの役目は終わりでは無く、王都と帝都を結ぶ固定式ゲートを設置して、その後、マンチェスター帝国内の各地に存在する有力貴族の領地に赴いて破壊工作を施す事になっているのである。


一番近い所で帝都の傍に在る公爵領まで飛んで行って城壁を壊して食料の備蓄倉庫や宝物庫を空にしてその力を削いで行く。


更に他の伯爵以上の領地に飛んで同様の破壊工作を行うのだが、これが大変時間が掛かる事・・・。既に帝都の方が安定し警備の兵や騎士がシフト制に収まって居ると言うのにおれは来る日も来る日も


マンチェスター帝国の空をウィングスーツによる滑空で飛びまくっているのであった。尤も毎日日帰りで自宅の屋敷で寝て居るけど、1人だけ『終わらない』任務で飛び続けるのがちょっと悲しくなってしまうのであった。


俺が空を飛び回って居る頃、制圧が完了して居る筈の帝都で、レジスタンス活動があって、油断した我が方側の兵が死傷する事件があった。


結局実行犯はもう1人の相棒の兵によってその場で処分されたのであるが、より一層きを引き締めて無駄に死なない様にと注意勧告がされたのであった。


新政府による最初のお触れは税制の見直しで以前よりも税率を下げて、庶民のご機嫌を取ろうと言う物であった。


更にこれには目的があって、税収が下がれば余分な戦費に掛けるお金がなくなると言う事で余計な反抗の抑止力となる事を期待していたりするのだ。



そうそう、今回は総督としてやり手と噂の公爵が在駐する事になっており、その公爵と『ドサ廻り』をして居る俺が一番の貧乏くじと言えるだろう。



今回俺は総督にならずに済んで居るのでウッカリ余計な所で死ぬことは無い。


帝都決戦から4ヵ月が過ぎた頃、漸く俺の破壊工作任務が完了して、それを国王陛下と宰相閣下に謁見の間で報告し、お褒めの言葉を頂くのであった。


結局、我が方の損害は死傷者会わせて400名未満で済んだ様で、現在の帝都の様子も安定して居るらしい。



それもその筈。文句を言える程強気な貴族も勢力も居らず、俺の破壊工作の所為で皆ヒイヒイ言って現状を凌いで居るからである。


こうして漸く俺はお役御免となってケリーとケンイチの待つ我が家に帰って行ったのであった。



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