第462話 スタートダッシュ その2

半年の月日が流れて魔力も増えた事でそれ相応に出来る事も増えて行った。

身体強化は勿論の事、瞬間的に魔装を展開する事までもが自由自在に行える。


あのそれには皮肉な事にマークの心無い不意打ちの暴力が訓練に非常に役にたつと言う余り笑えない状況であった。


元々ギフトで頑丈に出来て居る俺の身体に攻撃しようとした瞬間に魔装を展開するので、実質消費魔力は最低限となって幾らでも対応出来るし受け流す事も可能である。


これに面白くないのがマークで5才の幼児に良い様に遇われてヒスを起こして大騒ぎをして遂には今まで無関心であった父親にまでバレてしまい、流石に伯爵家の沽券に関わる事態だと動いてマークを一早く王都に送り出してしまったのだった。


本来なら来月くらいまで此方の方に居てそれから王都の邸宅に移る予定であったにも拘わらず1ヵ月も前倒しにして俺を庇うとは思いもしなかった。



ちょっとうれしかったのだが後で冷静に考えると、俺の為ではなく単に伯爵家の醜聞が広まる事を恐れただけかも知れない。

何せ、父親にとっての俺は愛する妻の命を奪った憎い子と言う存在だからな・・・。




さて、図書室の本やジェニーやアマリスからの情報収集の結果、この世界にも魔物が存在し、冒険者と言う職業もある事が判明した。


これでおれの将来の職業は決まったも同然である。


この世界の冒険者は10歳から登録が可能で、10歳になって『ギフトの儀』が終わったらそのまま登録したいと思うのであった。


マークが王都に旅立って静かで平穏な日々を過ごしていると、ジェニーの『ギフトの儀』が行われる日がやって来た。


普段我が儘を言わない俺がこの日だけは我慢しきれずに同行をお願いしダダをこねたのであった。


結果、正妻からは凄く嫌な顔をされつつも何とか許可を貰って初めて屋敷の外にでるのであった。

馬車の窓に貼り付いて初めて見る塀の外の景色にワクワクしつつも大人しくしている俺。

街の様子だが、中世のヨーロッパのイメージそのものでゴミゴミしておりお世辞にも良い物とは言えず前世の街並みよりもかなりレベルが落ちる物であった。


そしして荒っぽそうな連中の屯するエリアを越えて行き暫くするとお目当ての教会の建物っぽい物が目に入って来て漸く馬車が停まるのであった。


大人しく一緒に馬車を降りて教会の中に入ると同じく10歳になって本日『ギフトの儀』を受ける子供達とその付き添いの親でごった返して居た。


みんながザッと俺達に向かって頭を下げて来て、父親が「頭を上げよ。楽にして良い。」と言うと頭を上げて、ザワザワと歓談を始めるのであった。


そして暫くすると、司祭が祭壇に現れて、話始める。


「えー、静粛に!これより、本年度の『ギフトの儀』を始めます。『ギフトの儀』を行う事でこれまで不明であったステータスや女神フェザー様より頂いたギフトが各人見える様になります。」と司祭がよく響く声で言う。


初めて知ったのだが、つまり、『通常』であれば、『ギフトの儀』までステータスは見る事が出来ないと言う事らしい。


つまり、ジェニーも今の段階ではステータスを見る事が出来ないと言う事である。


俺の場合は5歳になって過去の記憶を思い出した時から見えて居る訳でこれは所謂チートと言う事なのかバグと言う事なのだろう。と密かなスタートダッシュ成功にほくそ笑むのであった。


直ぐに『ギフトの儀』が始まる。俺は「女神フェザーにお世話になっているジェニーに良いギフトを与えてくれよ!」と心の中で祈るのであった。


そして祭壇の横のチサな台に大きなボーリングの球ぐらいの水晶球が置かれ、最初にジェニーが言われた通りにその水晶球に触れて、めでたく『ギフトの儀』を終了したのであった。



良いギフトを貰えたのか、嬉しげな表情で戻って来るジェニーを迎えるとはしゃぎながら、

「3つもギフトを貰えたのよ!それに欲しかったギフトも貰えたの!」と満面笑みを携えて帰って来た。詳しく話を聞くと、通常は1つか2つギフトが貰えるのが普通で3つとなると、それだけで有能な人材と言われるらしい。


つまり『女神に愛されし子』と言う扱いになるらしい。通常、3つ以上ギフトを保つ者の事をマルチギフテッドと呼んでその多くは国に抱え込まれる事が多いのだそうである。それを聞いて既に8個のギフトを所有する俺は背中に冷たい汗が流れるのを感じるのであった・・・。



その後も祭壇の方では喜ぶ子供や落ち込む子供がワイワイとして居り、我が家の一団はで義智附近に居たシスターにお布施を渡して一足先に馬車で屋敷に戻るのであった。



これは迂闊にギフトの個数や詳細を口にしない様にしないと駄目だな・・・と心に決める俺であった。


娘がマルチギフテッドであった事でご機嫌になった父親と正妻は、今夜はお祝いよ!と屋敷に帰るなり家令に告げて居たのだった。



尤も俺はその席に呼ばれる事はなく自室で人、ジェニーに祝杯を挙げつつ今後の動きを計画するのであった。



3年の月日が過ぎてとうとう『あの』マークが卒業して此方に帰って来てしまった・・・。



今のステータスは下記の通りである。

*************************************************


名前:マルク・フォン・ドルビー

レベル:3

HP:39/39

MP:3816/3816


ギフト:異常耐性 物理耐性 魔法耐性 頑強 魔法 鑑定 魔力感知 魔力操作 剣術 投擲 


*************************************************


見て欲しい、剣術に加え、密かに投擲の訓練も行った結果更に増えた。


3年間密かに屋敷を離れて裏山で魔物を討伐した結果、レベルは3にまで上がって、魔力に至っては毎日枯渇させるのが難しくなる程に増えてしまった。


今の俺は前世の俺の使えた魔法の一部だけ魔力の総量の問題発動しない物を除きほぼ全てを使えるまでに達した。


魔物を倒してレベルアップして判った事がある。


この世界のレベルアップ時のステータスの増加分は前世のそれ以上に非常に美味しいと言う事である。



王都からいじめっ子であるマークが帰って来たが今の俺なら寝て居る時以外では何の不安も無い。


と前世で毒殺された俺が言うとフラグみたいで嫌であるが、最近では口にする物をちゃんと鑑定でチェックして居るので大丈夫である。



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