第459話 油断大敵

結局情報収集部門の人員展開の為に俺はゲーリッシュ王国の各主要都市と王都をゲート網で結ぶ事にして、コーイチローとコージローにも手伝って貰い半年掛かりで空路で各都市に向かって貰ったのであった。


不穏な空気を察知する為のこのゲート網だが、これが各主要都市を治める領主にはその利便性のお陰で税収が上がった事に機嫌を良くした。しかしその恩恵に与ったのは極一部の・・・伯爵以上の主要都市を収める領主に限定されたので、主要都市以外の弱小領地を治める領主はと言うとそうも行かずに不満が燻って居たのであった。


厳密にはその他の弱小領地の領主にも間接的なメリットはあったのだが強欲な選民意識の強い貴族共には通用せずに不平不満だけが募って行ったのだった。


そこで俺は「実費を払うのであれば王都との直通ゲートを設置しよう。」と言うお触れを全貴族に触れ回ったのだがその費用の高額さにゲート設置を申し出る弱小貴族は居なかったのだった。


そんな訳で王宮内部でもアンリ王女の件とは別に何かと不穏な空気があって落ち着かずに日々精神が磨り減って行くのであった。



1年の時が掛かり漸くオオサワ商会の情報収集部門の人員がゲーリッシュ王国全土に展開した。


俺への悪口も含め細かい情報も含め色々入って来るが、今のところ幸いな事に謀反を起こす様な情報は入って来て居ない。



庶民レベルの情報では、ゲート網を含め庶民の評判はなかなかで、中には「戦争に負けて良かった」と言う意見まで混じって居る程であった。


これも最高税率を低めに設定した事で庶民の暮らしが楽になった事が原因かも知れない。


ゾクゾクと上がって来る『悪く無い』情報に気をよくする俺であった。



■■■



一見平和な時が続き、嘗ての敵地に居ると言う現実を少し忘れてしまって居たのかも知れない・・・。



その日、何時もの様に自宅から王宮の執務室に到着して座り、何気無く『用意されたお茶』を口にした俺は、一瞬の間に気を失ってしまったのであった。


次に気が付いた時にはナンシー様の居る何時か見た部屋に横たわっていたのであった・・・。



「トージよ・・・お主何呆気なくこっちに来て居るのじゃ・・・」と呆れた口調で話すナンシー様。


壁モニターに映し出された床に横たわった俺の身体を見下ろす、何時もと違う冷たい目で口角を上げているアンリ王女・・・。


俺はどうやらアンリ王女に毒殺されたらしい・・・。


ナンシー様の解説によると、親兄弟を殺されたアンリ王女は密かに俺が油断する頃合いを待っていたらしい。


そして、今日何時もだと手を付けない(毒を仕込んだ)飲み物にウッカリ手を付けて飲んでしまったのがが死因となったらしい。


そして、俺の死体は密かに焼かれて死そのものが表面化しない様に偽装されてしまったのだった・・・。


俺としてもまさか、アンリ王女に殺される事になるとは思いもよらず、後に残した子供達やマーガレットの事に思いを馳せるのであった。



「まあ死んでしまったのはしょうがないのじゃ。重要なのはこれからどうするか?なんもじゃ。」と言って胸を反らすナンシー様。


「これからどうすもこうするも、死んだ以外に何が?」と問う俺に、

「お主には前回の試験の際とこの妾の世界の発展と2回助けられて居るからのぉ~。妾の友の女神の世界で転生のチャンスをやる事で話が着いて居るのじゃ。どうじゃ?嬉しかろう?」とドヤ顔をするナンシー様。



また転生か・・・もう些か長く生き過ぎた気がする。最初の日本から数えると既に100歳近く生きて来た。


もう十分生きたと思う。


「いや、もう十分じゃないか?」と言う俺に、

「もう話は付けてしまったのじゃから遅いのじゃ今度こそ寿命まで伸び伸びと生きるのじゃぞ!」と聞く耳を持たずに指をパチンと慣らして、強制的に俺を送還してしまうナンシー様。



そして気が付くと初めて見る綺麗な銀髪の女神が目の前に佇んでいたのであった。


「初めましてじゃな。妾はアステリア界の創造神女神フェザーじゃ。ナンシーから其方の事はよーく聞いておるぞ、文明発展のエキスパートだそうじゃな。今世もよろしく頼むぞよ。」と宣うフェザー様。



「いえ、もう転生は望んでないのですが・・・。」と慌ててこれ以上の転生を拒否しようとするも、もう俺が転生するのが既定路線なのか、聞く耳を持たないフェザー様。


「まあお其方も初めてでは無かろうから不安も無いじゃろう? 今回は天寿を全う出来る様に丈夫な身体にして、良い感じに見繕ってやる故に宜しく頼むのじゃ。お!そろそろ時間じゃな」と女神フェザーが言って手を振った。それと同時に聞きたい事もも言いたい事も言えずに俺の意識は消えて行ったのだった・・・。


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読者の皆様どうもです。

これにてシーズン2終了です。

シーズン3に続きますので暫しお待ちを!

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