第458話 総督のお仕事 その1

ゲーリッシュ王国に在駐せざるを得なくなった俺は、日々通う事にして、通常の領主の仕事を完全にコーイチローに委ねてしまって、俺は厄介なゲーリッシュ王国の方にだけ専念する事にしたのであった。


ゲーリッシュ王国にとって俺は目の上のたんこぶであり、余計な邪魔者である。毎日が針の筵と言うか居心地の悪い視線が何時でも突き刺さる。


こんな四面楚歌な地に家族の誰も連れて来れないので、俺単身での出張としたのだ。


俺の今回の役割は代官と言うか、総督に近い役割なんだろうか?まあ赴任先の国の監視役で実質的な舵取りを任せられてるに近い訳だが、1つの領ならいざ知らず、国単位は些かデカ過ぎる。



「オオサワ様、オオサワ公爵と及びした方が宜しいでしょうか? 敬称が代官だと些か役向きとの相違がございますので、相応しい役職名と言いましょうか、相応の物で及びしたいのですが。」と言う新しいゲーリッシュ王国の国王と宰相達。

「確かに代官と言うには権限と見合ってない役職名だな。では、『総督』とでも呼んで貰うとしようか。」と言う俺の返事に卯や卯らしく頭を下げる、新国王の少年。


このラッキー?で国王になった少年の名はアキラス・フォン・ゲーリッシュと言う13歳の男の子である。


父親や歳が行った20歳上の男性の王族は皆極刑となってしまった為歳若くして生き残った彼が国王となったのであった。


こうして見ると残酷な様であるが、運良く撃退出来た物のまかり間違っていたら、我が方が蹂躙されていたかも知れないのである。


国と国との戦争とは『討って良いのは討たれる覚悟のある奴』と言う事である。


だから、普段甘々な俺でも、この男性王族の一掃に可哀想と言う気にはならないのであった。尤もその現場は流石に見て居ないが、それは見苦しい物だったと聞いて居る。


だから故にこの新国王のアキラス君はビビって居るのである。




こうして俺は『オオサワ総督』としてゲーリッシュ王国に睨みを利かせるのであった。


ぶっちゃけると、何でこんな憎まれ役を・・・って思う事はあるのだが、これも俺がこのゲーリッシュ王国の王都まで先のマーキングで担当を引いてしまった縁と言う事で諦めるしかない。


居心地の悪いゲーリッシュ王国の王宮で毎日上がって来る書類の許認可を判断して国王へと書類を返す。こうして許可された物だけを国王が配下に廻して実行するのが日々の流れであった。




シッカリ目を通さないと変な書類や不穏な動きを見逃す事になるので油断が出来ない。


一応表面上は服従している様に見えて居るが元を正せば敵なのである。


いっそうの事恐怖政治による絶対支配をした方が楽なんじゃないだろうかと冗談で思う今日この頃であった。





最近俺を悩ませるもう1つの問題。それは、生き残って居る未婚の女性王族の動向である。

何か知らんが、良い歳をしたジジイの俺にやたらと構って来るのである。特に12歳のアンリと言う王女である。正式名称をアンリ・フォン・ゲーリッシュと言う俺にしてみれば孫や曾孫も同然の年齢なのだがどう接した物か悩ましい。


急に父親や年上の兄達を亡くした事で錯乱して居るのか、はたまた他の意図があるのかは分からないが、その所為もあって余計に心が安まる間が無い。


何かと、親兄弟の敵である側の俺に対して「オオサワおじ様」と呼んでは寄って来るので扱いに困って居るのだ。


こうして悶々とした日々を過ごして居るのであった。


願わくばこんな女児?まで粛正をしなくて済む状況で居て欲しいと心から願う俺であった。





さて、話は変わりゲーリッシュ王国の内政の話である。


すこしでもゲーリッシュ王国民のヘイトを和らげる意味と、軍拡出来ない世にする為に各領主独自に領民に掛けられる最大税率を引き下げて、無駄な贅沢や散財を出来ない様にしてみた。


これには各領主からの反発があったが俺に面と向かって文句を言える程命知らずな貴族はほぼ居無かった。


尤もその分国庫に入って来る税金も減る訳ではあるが、国軍を縮小する事で無駄を減らしてしまえば然程問題にはならない。



こうして小さい政府にしてその分の無駄を省き、浮いた分を使って今まで放置されていたインフラの整備等に宛てて廻ったのだった。



1年もすると、現金な物でゲーリッシュ王国民達は前の国王の御代よりも税も安くインフラを整えてくれる現政権を讃える様になって行き、それに伴って裏で糸を引く我が国へのヘイトも収まって行ったのだった。



さて、何故か俺に懐いて来て居るアンリ王女だがどうやらハニートラップ的な意図は無く、親兄弟を失い『頼れる』年代の親族を失った事による反動による物だと判ったのでホッとしたのであった。


これが判るまではこちらも神経を尖らせて記書きでは無かったのだ。



そんな訳で取り敢えずは粛正不要と言う結論に達したのであった。




しかし問題はまだ多く、最大税率を下げた事で反発している領主共が結託して不穏な空気を醸していた。


尤もこの地にはまだ俺のオオサワ商会の情報収集部門が展開して居無い為、表面上は繕いってはいるものの、どうにも焦臭い匂いが漂っているのである。


そこで、俺はニコラ産に大至急頼んで大至急ゲーリッシュ王国に展開するようにして貰ったのであった。


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