第391話 難民対策のあれやこや その3

何とか1週間掛かりで旧ガリーニ男爵領の村々を廻ってゲート網に接続して行き当面の必須事項を先に済ませておいた。


救援物資も固定ゲート設置もギリギリで雪の到来に間に合った様で、俺が最後の村にゲートを設置してマーコスのゲートにテスト接続した後にチラチラと雪が舞い落ち始めたのであった。


冷えるとは思って居たが間一髪で雪の本番に間に合った様でホッと胸を撫で下ろすのであった。



俺は本降りになる前に慌ててマーコス邸に戻って子供達に『ただいま』をするのであった。



さてここまでで終わればまあ大変な思いはしたが、新しい領民も含めて最小限の犠牲で済んだと言えるかも知れない・・・。



■■■



ここは旧ガリーニ男爵領の領都であるガリーニの街とある倉庫の中に屯する如何にもな男達50名と1人だけ小綺麗な身なりの太った男。


そう、国王陛下より爵位を取り上げられてお取り潰しとなった事を不満に思っている元ガリーニ男爵ことゲルンジャー・フォン・ガリーニだった男と奴が雇い集めた自称腕利きの男達である。



そして決行だとばかりにアジトにしていた倉庫から出発し、敵の領都であるマーコスへと新しくできた領内用のゲート網で移動するのであった。



領内ゲート網でマーコスに到着した一団はバラバラになって他人を装い場内へ何食わぬ顔で入って行く。


城門の衛兵も無いにも気付かずに元ガリーニ男爵を通してしまい、一団はそれと無い雰囲気で領都の中心部に在る領主の館を目指すのだった。



マーコスの領主の館は元からあった物に改造を加えただけで基本的には一般的な貴族の邸宅と変わり無い。


内部には固定式ゲートが設置されており、王都の邸宅やダンワースの邸宅と繋がっている。


よって、トージ達が普段メインで生活して居るのは住み慣れた王都の邸宅となっていて、マーコスの館の衛兵の人数は15名と意外に少なくなっているものの、通用門を内側から開けない限り簡単に内部に侵入されることは無い浩三となって居る。



「其処で止まれ!何用だ、ここはオオサワ公爵の邸宅である。用無き者は直ちに立ち去れ!」と槍を持った2人の門番の衛兵が即時退去を勧告するも全く無視してイキナリ剣を抜いて斬り付けて来た。


1人が防戦して居る内に呼び子の笛を吹いて救援を呼ぶ勇ましい門番の衛兵。


遅れて12名の衛兵と体長の騎士が駆けつけて残りが王都の邸宅に居る騎士団長のラージにとトージに連絡する。


即座に出動出来る者を掻き集め増援を送り込んだのだった。



食堂で皆集まっての楽しい夕食の一時に鳴る電話に出ると切羽詰まった報告が入って来る。


俺は、パパンと一足先にマーコスの邸宅へと俺のゲートで飛んで負傷して血を流して倒れて居る門番の衛兵を助けるべく、黄金丸を片手に門の通用口を開けて外へと出る。


「何者だ? 我が屋敷に討ち入るとは余程の馬鹿なのか?」」と睨みを利かす俺。


「我が領と領民を盗ったのは其奴だ其奴を殺せヤレ!特別ボーナス金貨100枚だ!」と後ろの方で叫ぶ見た事の無いデブチョが居た。


50名位のチンピラが一斉に俺の方を向いて剣を向けて来る。


すると、俺の後ろから、「トージ、折角だから独り占めせずに俺にも廻せよな!」と楽し気にスキップしながらやって来るパパンを見た瞬間てドッと黄金丸を持つ手の力が抜けてしまったのだった。


パパンは最近メッキリ暴れて無かったので余程退屈して居たのだろう・・・実に嬉し気で「よーし、交代だ!」と元から居た15名の衛兵を通り越して更に俺の前に割り込んでしまったのだった。

俺はその隙に、地面に倒れて居る2人と後ろの15名の衛兵に回復魔法を掛けてやって倒れて居る2人を運び出す様に指示を飛ばした。


倒れていた2人は出血こそ多かったものの回復魔法が間に合った様で命に別状無く安静にして値が作られるのを待てば2~3日で現場復帰出来そうであった。



久々の見せ場にパパンの剣がスパンスパンと問答無用に相手のチンピラを切り伏せて行く。



後ろで叫んでいたデブッチョが後退りし始めたのを見た俺はショートテレポーテーションを使ってその更に後ろに陣取って、奴の両手足に魔弾を撃ち込んで動きを封じたのであった。


「お父さん、敵の頭は抑えた!」と大声で叫びながら、後ろから、敵のチンピラの生き残りの両足を魔弾の乱れ撃ちで動けなくして行った。


「後の此奴らは尋問の為に残して置いて!!」とパパンに言うと残念そうな生返事が返って来たのであった・・・。


こうして50名に及ぶ敵襲を跳ね返した俺達は地面に転がって呻くデブッチョが元ガリーニ男爵で、逆恨みによる犯行であった事までを突き止めたのであった。



事の成り行きを纏めて王宮に報告すると軽く「それはご苦労じゃったの。まあお主らならそれ位でビクともしまい?」と国王陛下に返されたのであった。



生き残ったチンピラの背後関係を探ったが特に他の貴族の紐付きも発見出来ず、自称腕利きと名乗る単なるならず者であった事が判明し、デブッチョの処刑で事件の幕をとじたのであった。


これを機にもう少しマーコスの邸宅の警備の厳重化に力を入れることにして城壁等を改造するのであった。


まあ一番の被害者はあの日の警備を担当した衛兵達かも知れない。あの後パパンにミッチリ剣術や格闘の訓練を付けられてボロボロになっていたのだった。

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