第390話 難民対策のあれやこや その2

難民対策が一段落着いたと思ったら、既存の村々へのゲート網の拡充に駆り出され領地内を駆け回っていたのだが、それも漸くめどが付いてきた頃に遅れて来た難民第ニ弾が流れ着いて来た。


ガリーニ男爵領の開拓事業は思ったよりも大幅に転けて居た様でやっと10箇所の開拓村に割り振ったと思った所にこれである。


更にかなりの人数の子供も交じって居たので、流石に我が領の孤児院もパンパンになってしまったので、急遽孤児院の仮設の宿舎を増築したのであった。


それに対して孤児院のスタッフまでもが不足したので俺の方で領民から募集を掛けて補助員を出す様にしたのであった。



先に良い訳させて貰いたい。呉々も間違って欲しく無いのだが、他領の領民を引き抜いたのでは無いのは理解して欲しい。単純に渡り鳥の様に暮らせる所生きていけそうな所に自主的に流れて来ただけである。


流石に今の10箇所の開拓村では収容仕切れないので、更に開拓村を増やさざるを得なくなってしまったのだった。


取り敢えず難民がが転居してものけの空になった仮設の宿舎に全員収容しておき、その間に準備を進める事にする。


人数的に見てもあと10箇所増やす必要が在るが、我が領地はそれなりに広いので、マーコスだけでなくダンワースの近郊でも適した場所をピックアップして行き其処に3週間掛かって10箇所の開拓村を新たに追加したのであった。


もう季節は冬間近で、早急に冬籠もりの準備が必要な季節である。


先の難民達と同様の条件を出して件の10箇所の開拓村に割り振って早急なる冬籠もりの準備をさせるのであった。


尚、もう来ないとは思うが今後もし難民が来た場合既存の20箇所の何れかに割り振って仕舞う事にしたのであった・・・・じゃないといつまで経っても終わらないからな。



そんな訳で漸く年末ギリギリに間に合う形で一連の難民問題に一応の終止符が打たれたのであった。




だが、それ程甘くはなかった様だ。


これだけ・・・子供まで入れると300人以上に及ぶ領民の難民を出した件のガリーニ男爵が『お恐れながら・・・』といつの間にか被害者ポジションを取って王宮の方に「俺の所に領民を盗られた!」と訴え出やがったのである。


どうやら、領民の流出に伴って予定して居た税が国に払えず苦肉の策なのか、単なる無能なのかは会った事すら無いので良く知らんが、どうやら悪知恵だけは働くらしい・・・。


そんな訳でやっと領地の『あれやこれや』にケリが付いたと思ったのに、急遽王都に呼び出しが掛かったのであった。


折角なので、この機会にコーイチローとコージローをお爺ちゃんお婆ちゃんに会わせてやろうと画策して、久々の王宮へと家族を引き連れてゲートで向かうのであった。



初めて見る、孫にデレデレの国王陛下と国王妃殿下で掴みはOKとばかりに本題を切り出す俺。


「して、国王陛下、此度のお呼び出しはガリーニ男爵の所の難民の件と推測して居りますが・・・。」と孫に目尻を下げて居る国王陛下に挨拶もソコソコに問い掛ける。


「うむ、そうじゃ。ガリーニ男爵の方から領民を盗られたと訴えがあっての。一応形式上調べる必要が出たのじゃ。」と宣う国王陛下。

どうやら、ガリーニ男爵側から、領民を盗られたので納税出来ない。オオサワ公爵側を罰して謝罪と賠償を!!と言って来たらしい。


「なるほどぉ~。開拓事業の失策を我が家の所為にして居るのですね。此方で難民となった者達に聴取したところによると、全く何の支援も無く荒れ地に放り出したに近かった様で初期の食料さえ貰えず飢え死にする者まで出たそうでして。そして数少ない収穫物を冬を前にほぼ全て税として徴収されて生きて行けないと開拓村から避難して来たようでした。

その中には飢餓で両親を失った子供まで交じっており、その数347名に及びまして、我が領地に辿り着いた ものの着の身着のままで入場料の銅貨さえ持ち合わせて居らず、皆ガリガリに痩せ衰えておりましたので、人道的観点より難民として我が領にて救助し、領民に迎え入れました。

よって、今では既に我が領民故戻す事は出来ません。」とキッパリと断言したのであった。


「なる程。それ程であったか・・・。王宮の方からガリーニ男爵領の方に監査官を送り

税の徴収等に不正が無かったか調査をさせる故安心するが良い。」と頼もしいお言葉を頂いたのであった。




しかし、あれだな。ガリーニ男爵なる人物は余程面の皮が厚いらしい。恐らく叩けば埃が大量に出る身体なんじゃなかろうか?


ちないみに、今回の様に貴族間の問題が起きた場合王国の定めた法に則って判断されるが、裁定は最終的に国王陛下の胸三寸となる。


今の感覚としては調査の結果次第で在るが我が方に非は無いので何のペナルティーも無いと思う。


まあ裁定次第になるが、法的な非が会った場合、その損害に応じて補填させたり、賠償金に和解金を支払ったり、降格等の罰則があったりする。


尚、幾ら険悪な仲だからと、王国の貴族同士での戦等の抗争は御法度となっている。


最悪国内で抗争した場合、両家共にお取り潰しとなるのが法で決まって居る。


その場合そう言うのを避ける為に貴族通しのトラブルの最終的な解決方法の1つとして『決闘』と言う制度もあるが、これも結局残された遺族に禍根を残すので今となっては制度自体が形骸化している。


この件で国王陛下の対応は非常に早く、直ぐに優秀な査察団をガリーニ男爵領に派遣し詳しい財務的な物や内政の内情の調査に乗り出したらしい。年末と言うのに非常に素晴らしいレスポンスである。


何処ぞの前世の王家に聞かせてやりたい程である。


尤もこの年末に駆り出された査察団の方々には同情を禁じ得ないが。



そして、年始には恒例の謁見の儀があるのだが、今回の調査で国の法で定める基準以上の重税を課していた事等色々と不都合な内政が発覚したガリーニ男爵は貴族の資質無しと見なされてお取り潰しとなったのだった。


そうすると、今回でガリーニ男爵領からの難民を救援した手柄によって、旧ガリーニ男爵領が何か良く判らない内に我が領地として統合されてしまったのだった。

これが今年の年始の謁見の儀で発表されて、謀らずしも非常に悪目立ちしてしまったのだった。


尤も、これによって査察団からの内情の報告が俺の所にも廻って来てしまい、正月気分が一気に吹き飛ぶ事になってしまったのだった。



曰く、ガリーニ男爵領の残った他の村々も重税の結果危機的状態にある事が判明したらしい。


お取り潰ししたのであれば天領として、国が救援物資等を配って救えば良いと思うのだが、国がやるには時間が掛かるので、里移設する俺の領地に『褒賞』と言う体で組み込んで、俺に即座に対応させようと言う腹らしいい。


俺がそう言う事にたいして放っておけないのを知ってて采配して居るのだから質が悪い・・・。



結局悪目立ちしただけで、貧乏くじを引いただけと言う状態である。



しゅがないので、早速マーコスに戻って救援物資を集めさせて救助隊を組織して、まずはマーコスからガリーニ男爵領の領都である街に向かって俺単独で冬の寒空の下ウィングスーツによる滑空で飛んで行き、まずは固定式ゲートで結んだのであった。


尤も、夕方近くにガリーニ男爵領の領都である街に到着した際に突然空から降って湧いたので軽く警備隊と一悶着あったのだが、残っていた代官代わりの査察官が駆けつけてくれたので事なきを得たのであった。



査察官は既に王宮からオオサワ公爵領に組み込まれる旨の連絡を受けて居り、即座に駆けつけてくれて事態を収拾してくれたので助かった。



査察団の方々に村々への道案内をお願いし、翌朝から救援物資を届ける事になったのであった・・・。


こうしてこの時期にしては雪が降ってなかったのが幸いし、全ての村に翌々日には救援物資が届けられたのであった。

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