第368話 ダンワース・ダンジョン その1

ダンワース、マーコスの両方の領地は落ち着き、衛兵が正しく治安を維持する健全な状態になった事で1年目にして景気が向上し税収が上向きになった。


とは言え、まだまだ農村の方は今期の収穫まで辛い時期ではあるものの、農地で働く農民達の顔は明るい。


これで当面の目的は達成されたと思って良いだろう。とホッと一息付いて自由な時間を家族と過ごしつつ日々を送って居る。



マリーとマーガレットは、今は必死になって、俺が教えたウィングスーツによる滑空を物にしようと毎日練習しているが、取り敢えず俺が仕立てたウィングスーツを着ての滑空は問題無く出来る様になったものの、魔装をウィングスーツの家以上にする所で躓いている様子だ。



そうそう、重要な事だが結婚を機に俺は初めてマーガレットを呼び捨てにする事に成功したと言うか、マーガレットから、その様にお願いされたのであった。


そうする事で一つ垣根が取れてより親密になれた気がするから不思議な物である。




さて領主と言う物だが、ちゃんとにやる事さえ先にやってしまえば基本暇である。普段俺が居なくても回る様に適材適所でスタッフを配置して置けばの話だがね・・・。


両領地に王宮から派遣されて居た代官のセルゲイさんとボーナムさんはかなり優秀で誠実な人物だったので、そのまま交渉して我が家のスタッフとして遺跡して貰ったのだ。


特に領都ではないダンワースには町長的な代官が必要になるのでボーナムさんに引き続きお願いして居る。

オオサワ公爵家の家令は勿論ゲイツさんとなるが、マーコスの町長的な役割はセルゲイさんにお願いして、要所要所の報告や相談を受けて俺が判断する感じである。



なので当然、暇になるのである。



さて、その暇な時間をどうするか?と言うと、折角国王陛下の配慮でダンジョンのあるダンワースをくれたのだからレベル上げを兼ねたダンワース・ダンジョン探索をしない手はない。



そんな訳でダンワースの冒険者ギルドを訪れてダンワース・ダンジョンに関する情報を仕入れてみる事にしたのであった。


初めて入るダンワースの冒険者ギルドの作りはガガのそれとほぼ同じで受付嬢にAランクのギルドカードを提示してから、

「ダンジョンに入りたいのだけど、情報を教えてくれるかな? マップとかあったりするの?」と聞いてみた。


「あ、Aですか!トージ様ようこそダンワースへ。マップは5階層までの物は此方で販売して居ります。5階層以降では、罠が出て来ますので注意が必要です。

現在のところ15階層までは確認されておりますが最下層はなんかいそうまであるのかは確認されてません。あ、私、受付のナタリーと申します。」との事だった。



この世界のダンジョンも、前世の世界同様に10階層毎にボス部屋があるとの事で、ポータルも在り、10の倍数の階層にはショートカットが可能らしい。

階層毎の詳しい魔物の情報等は2階の有料資料室で資料が閲覧出来るとの事であった。


5階層までのマップを購入して、2階の資料室のお金を払って資料室出資料を漁ってみたが、特にヤバイ魔物の記載は無く、オーソドックスな魔物が多く5階層以降でも余裕そうであった。


どうやら現在のトップ攻略組16階層を攻めて居るらしい。


彼らのやる気を削ぐ事無いレベルで俺も20階層ぐらいを目標に空き時間で潜ろうと心に決めるのであった。



そうなると、ソロで行くかマリーとマーガレットの2人を誘って3人で行くかが問題である。

もしコッソリとソロで行って後で発覚すると、恨み言を言われそうなので、お窺いを立ててみてから決めようと思うのであった。



帰宅後、お窺いを立てたところ、即決で「勿論行きます。」とのマーガレットの返事に乗っかる様にマリーも行くと言って来た。


「じゃあ、マリーはお父さんとお母さんに許可を貰って来なさい。」と俺が言うと、普段屋敷の中は走ってはいけないと厳しく言いつけているにも拘わらずピューっっと駆け足で飛んで行ってしまったのだった。


パパンはやや渋ったものの、ママンの許可が出て晴れてマリーも同行する事が決定し、大喜びするのであった。


まあ優秀なマリーの事だから大丈夫だとは思うが、浮かれすぎて油断しない様に締めていかないといけないかも知れない。


そうそう、浮かれると言う意味ではマーガレットも然りである。


何気にダンジョン探索が長年の夢だったらしく、王族と産まれた事で半ば諦めていたらしい。


まさかとは思うが、その夢の所為で俺との結婚を望んだって事は無いよな?と思わず疑いたくなる程の浮かれ様であった。


しかし、ダンジョンのある領地を貰う事となった経緯と言い強ち否定出来ない程にマーガレットの意思が反映された結果のこの領地の決定だった。


まあ、何はともあれ、俺もダンジョンが在って良かったと思って居る1人なので、この際マーガレットの婚姻前の思惑等は細事と心の隅から切り捨てる事にしたのであった。



初めてダンジョンに潜る日の朝、朝食を取った後、全員でウィングスーツによる滑空でダンワース・ダンジョンの近所まで行って街道脇に降り立った。


この日ダンジョンに連れて行く条件として、魔装のみでウィングスーツによる滑空が出来る事を条件としたのだが、2にイン共にキッチリ間に合わせて仕上げて来たのだった。


全員割と軽装で異質な3人組だが、我関せずで誰からも咎められる事無くダンワース・ダンジョン内部に1歩足を踏み入れるのであった・・・。


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