第369話 ダンワース・ダンジョン その2

さあダンワース・ダンジョンだ。


この世界のダンジョンも真っ暗ではなく壁が薄く発光しており、視界をそれなりに照らしてくれている。



入った直ぐ脇にポータルらしき水晶球っぽい物が設置してあり、ここから、自分の行った10の倍数の階層へ転移で行けるらしい。



第1階層は少しヒンヤリとしたオーソドックスな洞穴型で壁や天井は荒くゴツゴツとした出っ張りがあって、死角が点在して居るので死角からの攻撃には注意しないといけない。


ここで俺は2人に気配察知の仕方を教えつつズイズイと進んでいって、ここで最初に出会った魔物であるスライムをマリーに倒させて魔石を拾って先に進んだ。


第1階層の前半はスライムばかりが出て来て超初心者向けになっているらしい。


順に討伐しつつ2人が魔物の気配を何となく感じられる様になるまでは俺が先頭で斥候役をやってやった。


この第1階層の後半はホーンラビットが出来てくるらしい。



まあ第1階層には罠も無く魔装を使える我々の身体にホーンラビット如きでは傷を付けられる事は無いので油断は禁物とは言うものの、安心しても大丈夫である。


俺は兎も角、ダンジョン初心者の2人がダンジョンと言う環境に慣れるまではこうして徐々に体験させて行けば良いだろう。


20分ぐらい進んで漸く最初の分岐に到着し、マップの通りに左の通路を選択し曲がった。ここら辺からホーンラビットが出て来る筈である。


岩陰から突進して来るホーンラビットを屠りながら一応食える魔物なので軽く血抜きをして『時空間庫』に放り込ん回収して行く。


暫く進むと再度分岐が出て来てここからイヨイヨ第1階層の終盤となって、ホーンラビットの他にもキラー・バットと言う蝙蝠の魔物が参戦して来るので床の上だけでなく、頭上にも注意を払わなくてはならない。


俺は良いのだが2人は頭上からの攻撃への対処が甘くキラー・バットから何度か噛みつき攻撃にあって魔装に救われていた。まだまだ気配察知が出来て居ないのでしょうがないがこう言う3次元の軌道攻撃して来る敵への対処を身に付けて欲しい。


要は通常の近接攻撃手段として通常の片手剣を振るった方が手っ取り早い状況で『高周波ブレード』のみと言う状況がと迎撃が出遅れる原因の様である。


これの解決策は簡単だ。2人共に剣術は大丈夫なので取り敢えず片手剣を装備させれば大丈夫だろう。


と、頭上のキラー・バットに気を取られていると、ホーンラビットが岩陰からダッシュをキメて来るので迎撃が遅れたマリーはガキンと言う音と共に魔装で弾いて難を逃れて居たのだった。


2人共に最低でもソロで第1階層くらいは魔装関係無くノーヒットでスルー出来る位にはならないと単独では危ないな・・・。


まあ魔装有りきの力技と言うのもアリと言えばアリなのだが、ここより下層で早々に詰むので駄目である。




ここで俺がとやかく言わなくとも2人共に今の自分に何が欠けて居るのか判って居る様なので特に今指摘するのは控えて置いた。


ちなみに第1階層には殆ど他の冒険者は居らず殆どの冒険者はより稼ぎの良い第5階層以降に潜る様である。


第1階層最後の分岐を右に曲がって直ぐに1度も他の冒険者にすれ違う事無く第2階層への階段だ出てきたのであった。


尤も、この第2階層への階段のルートは2つ在り、俺達は慣れる為に一番人通りの少ない遠回りのルートを俺が選んだのである。


まあそのお陰で2人の弱点や改善点が判ったので結果オーライである。



第2階層への階段を下って行って出た第2階層は洞窟タイプから、石積みの回廊タイプと変わり、第1階層同様に壁が光りを放って居た。


ここでは主に鬱陶しいだけのゴブリンが出て来る。


ちなみに、この世界のダンジョンは魔物の死体を放置するとダンジョンに吸収されるので、持ち帰りたくない魔物の場合は放置すれば良い。


第2階層のゴブリンの場合、魔石は1個銅貨1枚程度にはなるが、魔石を胸から抜き取る際に汚れるのを嫌って殆どの冒険者が放置スルーをするのであった。


俺も何方かと言うと同様のスタンスを取るのだが、2人には後学の為に魔石の抜き取りをさせる事にしたのであった。



ギャシャーと叫びながら出て来るゴブリンをマリー魔弾で屠って、顔を顰めながら胸をナイフで切り開いてゴム手袋代わりに魔装で指先を覆って魔石を弄って取り出して自分自身にクリーンを掛けて居たのだった。



次のマーガレットの場合も同様に美しい顔を凄くい嫌な感じに歪ませつつ魔石を抜き取って居た。


で、俺はスルーする気満々だったが2人から許して貰えず、2人同様に匂い封じの為に風魔法の気密シールドで全身を覆いつつ、サクっと胸から魔石を抜き取ったのであった。


俺の気密シールドを見た2人は『しまった、その手があったか・・・』と言う顔をして2人で顔を見合わせていたのだった。


そんな訳で迷路状になって居るだけの第2階層をゴブリンを屠りながら、進む事約30分第3階層への階段を見つけてサクサクと降りて行くのであった。


第3階層も第2階層と同じ回廊型で、ゴブリンに加え譲位種のゴブリン・ハンターや、ゴブリン・ナイト等が混じって複数体で出て来る感じである。

希に、ゴブリン・メイジ等の魔法を使える個体も混じって居るが、出会った瞬間にヘッドショットをキメれば特に問題は無いし、そもそもゴブリン・メイジ如きの魔法で俺達の魔装を貫ける様な火力は出せないので、心配は無用である。



ギギと耳障りな泣き声と共に獲物俺達を見つけて嬉し気に踊り出て来るゴブリン・ソルジャー3匹を淡々と1人1匹やっつけて、もう面倒なので魔石すら取らずにそのまま奥へと進む。


ここら辺ぐらいから、魔物の密度がそれなりに上がるので、一々魔石の回収をしていると、沸いて出て来るゴブリン共に遅れを取ってしまう可能性やフレンドリーファイアもあるのだ。


例えば、鉄壁の防御の魔装であるが、魔弾程度なら弾けるとしても『高周波ブレード』を使った場合その双方の魔圧の差によって、魔装を貫通する可能性もある。


何事も安全第一、命大事に!である。


まあ遅れを取っても面倒なだけでリカバー出来るが、大事な2人がダンジョンになれるまでは安全圏での探索をするつもりである。


第3階層になると、モンスターハウスと言う俺達にとっては宝箱が出て来るボーナス・スポットが存在する。



尤も、過去に其処にモンスターハウスが出たとしても、そもそもランダムに出現する物なので運が良くないと又は運が悪くないとお目に掛かる事は無いらしい。



現実戻って来ない冒険者は年間に数多く居るので、その内の何割かは、『運が悪かった方のモンスターハウス遭遇者』かも知れない。


まあ死人に口無しなので真偽の程は不明であるが・・・。



そんな訳で『モンスターハウス』カモン!!とか心に強く願って居ると、物欲センサーが勤勉に仕事をして居るのか全然モンスターハウスが出て来ない。


ダンジョンで何が楽しい?って勿論宝箱の存在である。宝箱の無いダンジョンに存在意義は無いと言い切っても過言では無い。


そんな感じにワラワラと沸いて出て来るゴブリン共を只管屠りながら第3階層を進んで行くのであった・・・。

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