第364話 卒業式

過ぎ去ってしまえば、3年間なんてアッという間である。


舞踏会と言う物に手子摺ったが、それ以外出記憶に残っているのはアグーラマ王国との戦争である。


よく単位も落とさずに戦争を乗り切ったと自分でも不思議に思う程の忙しさであった。


結果として1人も殺す事無く円満に終わらす事が出来たのは本当に我ながら凄い事だと自負している。


そんな他の意味で多忙だった3年間の学園生活もやっと今日で終了である。



苦手とする貴族になった事で無理矢理通わされた王立学園であるが、意外にもハイマン達と出会った事で有意義であったと思える。


彼らが俺と同じ様に感じてくれて居ると良いのだが、これでお別れと思うとちょっと寂しい。


ハイマン曰く、在学中に3度も爵位が上がる者など過去に類を見ないとの事で、あったが、「そこがトージらしい。」と笑ってくれた。


朝から身支度も済ませ、王立学園の卒業式に参加すべく馬車に乗って久々の通学路を揺られて行く。


センチな気持ちに浸る事は止め、明日からの自由な日々に思いを馳せる俺はまず一番にレベル上げを考えるのであった。


ヒュージ・フロッグもそろそろシーズンだし、今年も限定数販売したいとジョージさんが言っていたので、また魔宮の森に狩りに行かねばならないのだ。



大体需要が減った頃合いかと思うのだが、最近では王侯貴族ではなくて一般の大商会などが商売の為に購入するケースが増えてるらしい。



と言うのもアグーラマ王国の方に食料の輸出で儲けようとして居る者が多い様で、そうすると、一度にドカンと運べるマジックバッグは必須となる。

そんな訳で、市場が飽和する事はなく、まだマジックバッグの需要があるらしい。



漸く王立学園に到着したロータリーで馬車を降りて一旦教室の方へと向かう。


教室には既にハイマン立ちが待ち構えて居て、


「おはよう、と言うか来るのトージ遅いよー!最終日位もっと早く来いよな!」と来て早々にお小言を頂くのであった。

俺としては遅いつもりはないのだが・・・。


「それはすまなかたな。普段より早めに出たのだが。ハイマン達が早過ぎるんじゃないか?」と取り敢えず謝っておいたのだった。


「しかし、本当にトージは殆ど学園に顔を出さずにここまで来たな。有る意味凄いよ。それでいて戦争の英雄的活躍だもんな。」と俺の不真面目な学園生活を貶すのか、それとも活躍を褒めて居るのか判らない言葉を永掛けて来たのだった。


「ありがとう。お褒めの言葉として受け止めるよ。俺も良く単位を堕とさずに乗り切ったと思ってるよ。」と思わず微笑むのであった。


「だよなぁ~戦争だもんな。普通なら単位処じゃないくらいだよな。」とハイマンもシミジミと語るのであった。


そうこうしていると、在校生の2学年がホールに集まる時間となっと呼びに来たので教室を後にする。



Sクラスの位置の席に座って開始を待つ事5分、新入生の頃より退学等で若干人数が減ってる3学年全員で国歌を斉唱して、学園長の最後のスピーチを長々と聞く。


最後に卒業時にも主席であった俺の答辞によって、長くて短かった王立学園での3年間に幕を引いて終了である。


「・・・3年間ありがとうございました。」とお礼を言って締め括ると、盛大な拍手が主にSクラス方面より湧き起こっていたのであった。



おわったぁ~!と思わず壇上から降りてガッツポーズをする俺。


卒業式の後の軽い卒業パーティーに参加したら、晴れて自由の身である。


卒業パーティーにはダンスが付き物と言う事で、知らぬ間にマーガレット殿下が「トージ、皆の者卒業おめでとうなのじゃ!」とゲートでやって来て、会場の皆を驚かせて居た。


「トージ、ダンスもあるので来てやったぞ!」と言うマーガレット殿下がちょっと可愛らしかった。


マーガレット殿下、結構俺が他の子とダンスをするのが嫌らしくて、こうして、隙を与えない様にしているのだろう。


こうして2時間程の卒業パーティーは終わったのであった。


これで本当に3年間の学園生活が終わったのだった。


みんなに別れを告げて、会場を後にするのであった。



マーガレット殿下はそのまま俺の屋敷まで付いて来て、


更に2時間程俺と過ごして、明日からの約束をして王城へとゲートで帰って行ったのであった。

やっと1人になった俺は風呂に入ってから普段着に着替えて、伸び伸びとするのであった。


夕食の時、明日から家に居ると知ったマリーの喜び様がとても可愛かった。


普段から同年代の友達が近所にいないので可哀想な思いをさせているのかも知れない。



やはり、マリーにも学校等に行かせて友達を作らせるべきだろうか・・・と考える俺だった。



とは言え、王立学園は貴族ばっかりだしなぁ~と庶民が行くには身分差別のハードルが高過ぎるしと悩むのであった。


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