第356話 焦臭い匂い その2

と言う事で密命を受けた俺は、アグーラマ王国の王宮の場所にゲートを繋げる様にする為に密かに敵国の王都を目指す事となった。


先日の敵国の砦上空を出発し、街道沿いに西へと向かう俺。諜報員より得られた情報に従って来る日も来る日も街道上空を飛んで行き、その経路で幾つかの所要都市上空を通過しながら本気でヤル時に備えマークして置く。


このアグーラマ王国だが、昔から頻繁にローデル王国に侵攻して来ておりその度に撃退して来て追撃して来なかった為、歴代の敵国の王から意気地無しな国と舐められて来たらしい。


俺としては争いの無い事がベストだと思うが、国家として舐められた結果兵(国民)の血が流れるのであれば、その負の連鎖を断ち切る為にも一度敵国の骨の髄まで格の違いを植え付けてやるべきだと思うのだ。


そうすれば、どちらの国民にとっても無駄な血を流す必要が無くなると言う物だ。と俺は思う。


その為に俺は1人異国の空を西へと向かって飛んでいるのである。


敵国の王都を目指して早1週間が過ぎた頃、東へ向かう敵兵の一団数千人の上空を通過した。面白い。これが、件の情報のあった5000人の遠征隊だろう。長蛇の列の後ろには食料を積んだ荷馬車が連なって居る。


後程、俺がゴッソリ頂く事になる兵站であろう。今はまだ時期では無いのでもう暫く奴らに預けて置いてやろう。


と言うか、ローデル王国では既に荷馬車では無くマジックバッグによる運搬に切り替えているので、兵の移動の妨げになる事もなく、実に機動性が良くなっているのだが、この国の兵は相変わらずの方法で運搬して居るので少々可哀想であるな。


しかも最終的に、それを『俺』に奪われる運命が確定済みなのである。同情を禁じ得ない。きっと後で上官に八つ当たりされたりするんだろうな・・・。




更に1週間が過ぎた頃、漸く敵国の王都が見えて来た。


敵国の王都は我が国の王都と同じぐらいに大きく更に立派な城壁に囲まれて居た。


またアレをヤルか?と思ったがまずは敵国の王宮の中に入り込むのが先決と思い留まり、王城へと向かった。光学迷彩と防音シールドの『隠密セット』を展開して王宮内部に入り込む俺。


やはり、国王の寝室に相当する所を抑えるべきと思って夜になる前に国王と思しきオッサンを発見してその後を付けて自室を突き止めた。



しかしあれだな・・・。ここまで潜り込んでしまえば何時でも暗殺出来るし攫って来る事も幽閉する事も拷問して『改心』させる事も可能なんだよなぁ~。と思わずサクっと実力行使したくなる気持ちを抑えてその日は王都邸に戻ったのだった。



毎日日帰りして居るとは言っても、このところ、日中は出ずっぱりなのでマリーが少々不満気味であるものの、今は両親もタージ君も居るので寂しくは無い筈である。



翌日、王宮の宰相閣下にお目通りを願い出て、状況を報告し、どの程度の妨害活動をするか? または、実力行使すべきか?を確認するのであった。


「もう敵国の懐にまで潜入出来たのか? 流石はオオサワ伯爵よの。」と宰相閣下からお褒めのお言葉を頂く俺。


「はい。敵国の国王の自室まで突き止めまして、何時でも暗殺や攫って来る事も可能ですが如何致しましょうか? もし攫って拷問でもして改心させられれば無駄にどちらの血も流す必要も無くなると思いますが。ご指示を仰ぎたく。」と問うと、


「恐らく、絶対的な実力差を見せつけて最小限の血を流さないと理解しないと思うのじゃ。 果たして、血を流しても理解するかも怪しいのがアグーラマ王国の奴らなのじゃ。」と言う宰相閣下。


今まで過去に自分達から仕掛けておいて、返り討ちにした事を根に持ち言い掛かりや事ある度に国境を越えて来る野田から、質が悪いと宰相閣下が吐き捨てる様に言う。


一応、軍議にかけるので、2日程待つ様にとの事であった。


その後、駄目元で、密な連携の為にこの一件の間は王宮の一室にゲートで直通しても良いかと尋ねてみたら、意外にもすんなりと、前世の王宮の一室の様な部屋を提供して貰えたのであった。


これで、毎回先触れや馬車に乗り換えて・・・と言う面倒な手続きが不要になったので気分が少し楽になったのであった。


さて、王宮から先の質問事項の連絡があるまでの期間、敵の王宮の食料庫や武器庫、それに宝物庫の一を確認して廻って、発見するに至った。


勿論、中に入ってゴッソリと『時空間庫』に回収しておいてやったが、食料庫は今回の侵攻で持ち出した後なのか意外に中身の備蓄量が少なかったのには驚いてしまった。


その代わりに宝物庫の方はビッシリと詰まって居て運び出すのに、丸々3日程時間が掛かった程である。


話によると、このアグーラマ王国は鉱山資源が豊富だが、土地が農業に適してない為に農業が余り栄えて居らず、食料の生産量が少ない為に肥沃な土地を持つ周囲の国にちょっかいを出して居るとの事であった。


つまり、鉱山資源を全うに輸出して、食料を得れば済む話に思えるのだがそうはしないところがこの国のこの国たる所以なのだろう。


何気知れば知る程、このアグーラマ王国に産まれなくて良かったと思う今日この頃である。



漸く宰相閣下から連絡があり、国王を暗殺したり、攫う事は無しとなった。


その変わり、王城や王都の城壁等はボロボロにしても良いとの事だったのでやってしまう事にしたのであった。


夜の闇に乗じて王城の城壁に着地して、まずは何時もの様に物質の強度を部分的に落として廻ってスカスカの石に変えて廻った。


これで何かの拍子に、城壁が崩れて、歯抜け様な見窄らしい城壁となるだろう。


特に、跳ね橋の橋脚となる部分の強度を落としてやったので、大問題になる事は必至である。





なんで部分的にか?と言うと、前世と違って今の俺では、部分部分をスポット的にスカスカにする位しか土属性のランクや魔力量の問題で保たなかったと言う事である。


やはりもっと前倒しで、レベル上げして置けば良かった・・・。後悔先に立たずである。



こうして、敵の王城への嫌がらせはほぼ完了し、敵の出兵部隊を追いかける事にするのであった・・・。



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