第355話 焦臭い匂い その1
アラマ砦・・・それは隣国アグーラマ王国との国境を守る最前線の砦となる。
この砦の歴史は古く、約500年前にアグーラマ王国の大侵攻に際して建設された小さな前線基地に端を発し、今では改築を重ね当初のサイズとは比べ物にならないサイズまで拡大されている。
国防の要所と言う事で当然の様にゲートが建設されており、有事には国軍が直ぐに増援に駆けつけられる様になっている。
そしてその増援が駐屯出来るサイズにまで拡張されたのが現在のアラマ砦である。
さて、
隣国アグーラマ王国に潜入中の諜報員より、密かに侵攻の為の人員の徴集が始まって居るらしいと言う話だった。
願ってもいない貴族となってしまい、しかも伯爵位にまでなってしまった今、知らぬ振りも出来ようが無く。
恐らく遅かれ早かれ出陣となるだろう。我が家はたった15名(当初の予定より若干人数が増えた)の騎士であるが、王宮の騎士団に勝るとも劣らぬ少数精鋭である。
パパンと俺が其処に入れば王国一の軍事力となるだろう。
しかし、戦場に行きたいか?と問われれば行きたくはない。
だが、前世の様な惨劇が起きない様にしたいと思う気持ちは持ち合わせて居る。
マーガレット殿下は恐らく貴族になりたての俺に気持ちの整理の時間をくれる為に極秘情報をリークしてくれたのであろう・・・。
俺は、部下に言って、弓矢の矢の補充や武具の手入れや購入を急がせ準備を始めるのであった。
そして俺はと言うと、1人先行して奴らの国内に入って軍事物資を奪取出来る様にウィングスーツで国内に入り込む事にしたのだった。
アラマ砦より国境線を越えて更に西に向かって行くと古戦場跡と思しき平原を越えて更に西へ飛ぶ。
過去の合戦がこの古戦場跡で行われたのであればこの方向に向かえば敵の前哨基地の候補地がある筈である。
俺のゲートは一度行った事のある場所にしか行けないのでこの様に上空を通過するだけでも意味があるのだ。
思った通り暫く西に進むと砦が在った。きっとこれがアグーラマ王国の国境の砦なのだろう。
俺は、光学迷彩を展開して、砦の中を偵察して廻った。
砦にはどうやら300名程の兵が駐留している模様である。練度は大した事は無い。
一応食料庫や武器庫の一も確認に出来たので、満足して王都邸へと戻ったのだった。
もし敵の王都から出陣したとすると、先の砦に集結するのは1ヵ月位先の話だろう。こっちにはゲートがあるので、知らせを聞いてから対応しても瞬時に増員出来るしなんとでもなりそうだと安心したのだった。
しかし、我が国が諜報員を敵国に送り込んで居る様に敵国も諜報員を此方側に潜り込ませてたりはしないのだろうか?
だとすると、ゲート網の事は敵にバレて居ると思って居た方が良い。そうなると、俺が敵なら、まずはゲートセンターを襲って主要ゲートを破壊するだろう。
まあ、だとしても俺の作った石の門を破壊するのは並大抵の事では無理なんだけどな。
しかし門は壊せなくとも、ゲートユニットは破壊に弱いか・・・。
其処まで気付くかは知らんけど、一応警備の増強を進言して置くべきだろうな。
次にマーガレット殿下が来た時に、先日使って思い出した『光学迷彩』と『防音のシールド』の『隠密セット』をマリーとマーガレット殿下に披露して、教えるとともに、ゲートセンターの警備の増強をそれとなく進言したのであった。
2人とも、光学迷彩には手子摺っていたが、1週間も経たずに物にしたのは流石我が弟子と言ったところか。
それから平穏な1ヵ月を過ごし、先の不穏な出兵の気配は誤報じゃ?と思えていた頃に突如またしても王宮からの召喚状が届いたのであった。
今回はドレスコード指定も無く通常通り貴族の平服で王宮に出向いたのであった。
通された部屋は軍議等を行う会議室で大きな地図が壁に掛けられており、どうやら、我が国とアグーラマ王国の地図で有る事が判った。
「今日皆の者集まって貰ったのは他でもないあの『アグーラマ王国』の事である。」国王陛下が会議の口火を切る。
すると、俺の良く知らないオジサンが、「また性懲りも無くですか?」とボヤく。
どうやら、これでこの会議のメンバーには通じる物があるらしい。
「おおそうであった、皆の者、見知っておるかと思うが、其処の新顔はゲートや『携帯魔動電話』の開発者である、オオサワ伯爵じゃ。」と宰相閣下が一同に紹介してくれた。
そこで挨拶をしつつ1人ずつメンバーを紹介して貰ったら、軍務大臣、将軍、とこの国の国防の要人ばかりに紛れ込んで居る事が判明した。
最初に「また性懲りも無くですか?」と発言したのがこの国の将軍である。
何でこんな重要な会議に呼ばれて居るのか疑問に思っていると、
「このオオサワ伯爵は魔法や武術にも長けて居ってな。面白い意見も聞けようと呼んだのじゃ。」とニヤリと微笑む国王陛下。
恐らく、マーガレット殿下から色々聞いているのだろう。
どうや、5000人の兵が敵側の王都を出立したとの情報が入ったらしい。
俺としては5000人は少ないと思ったので素直に疑問をぶつけると、
途中の都市で合流して行くらしい事を教えてくれた。
「じゃあ敵は約1万と考えた方が良さそうですね。」と俺が言うと全員同じ見積もりだった様で頷いていた。
そこでお恐れながらと何時もの兵站を叩く秤量責めを提案してみた。
「ほう、そんな事が可能なら、面白いですな!」と軍務大臣が逆の立場でニヤリとしながら声を上げた。
そこで、俺は『隠密セット』を全員の目の前で披露して見せてやると、大変好評でそのプランが採用されたのだった。
会議が進んで大体のプランが決まった所で、
「一つ質問して宜しいでしょうか?我が国としては、敵国を滅ぼす気や征服する気は無いと言う感じに産み付けられるのですが合ってますでしょうか?」と手を挙げて聞いてみた。
「うむ、合っておるぞ。敵国を統治等したくもないからの。なんじゃ他に面白い案でもあるのか?」と言う国王陛下。
「はい、敵のトップが変わらぬ限り、何時までも侵略してこようとするなら、一旦敵国に攻め入って王宮を占拠しちゃえば早いかと思ってしまいました。しして傀儡政権を樹立して属国として統治を任せる感じですね。これだと、殺傷人数は最小限で済むと思います。」と言ってみた。
開戦と同時にゲートで敵国の王宮に乗り込む事を言うと将軍が身を乗り出して聞いて来た。
「そんな事も出来るのか?確かにこの王城と同じ位の規模なら1000名くらい在れば掌握出来るな。」と多少乗り気の様子である。
一旦属国にしてしまえば犯行する気を削げば後は両者共に平和である。
結局、兵站作戦で敵の士気を弱めつつ、王宮急襲作戦の両面で行く事となったのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます