第347話 重なるイメージ

流石は俺の妹と言うところか、マリーの上達ぶりは凄く、自宅から離れた寂しさなんて微塵も感じて無い様に日々魔法の訓練に勤しんでいた。

とは言ってもパパンが寂しがるので週一でガガの自宅に顔を見せに連れて行っているが・・・。


その結果今では、無属性魔法による魔力の硬化おも物にして、フォース・フィールドの足場を作れる様になっている。


たったの1ヵ月で凄い進歩である。


俺は新年の謁見の儀に出席したり、『携帯魔動電話』の功績を讃えられて伯爵位への陞爵の話まで出て来たが、流石に短期間での陞爵は他の貴族からの『待った』が入ったのであった。


俺としては元からどうでも良い話なので全く思う所は無いのだが、流石にポッと出の平民上がりが短期間で自分と同じ爵位になったりするのは我慢ならなかったと言うところだろうか?


そんな感じにそれなりに忙しい1月を過ごしていたが、マリーの魔力量は俺の言いつけ通りに毎晩枯渇させて寝ている恩恵で、日に日にまして居る様子である。


早く他の魔法も教えたいと頃だが、土属性と水属性ぐらいなら幼いマリーに教えても問題ないだろうか?


と言う事で、まずは無害な土属性で礫を作る所から始めるのであった。


フォース・フィールドの足場が出来て居るの礫を作れる様になるのも早いだろうとは予想していたが、無属性の硬化を土を硬化させた石の礫に変えるのは一瞬で物にしてしまった。


勿論、無詠唱である。


教えると乾いたスポンジの様に直ぐに吸収してしまう天才っぷりに思わず、サチちゃんやコータを重ねてしまいそうになる。


最初こそ、遠慮気味に殺傷性の低い魔法をチョイスしていたのだが、気が付けば、マリーが気兼ね無く魔法が放てる様な頑強な防護壁に囲まれた練習場を裏庭の目立たぬ所に建設してしまって居た。


一応、防音のシールドの発生魔動具まで完備しているので、ご近所さんへの配慮も完璧である。


そして、今では、ストーン・ブリッドやアイス・カッターから魔弾までも放てる様になってしまっていた。


尤も、魔力量はまだまだ少ないので開花の儀の後のレベル上げに期待したい所である。



マリーは根性があるので、グングンとこの先も伸びるだろう。兄としてドンドンバックアップしてやりたい。



こうしてある意味充実した冬休みが終わりを告げて鬱陶しい新学年が始まってしまったのだった。


悲しそうに泣くマリーを宥めつつガガの自宅に送ってその余韻の冷めぬ翌日から登校するのであった。




もおういっその事、パパンもママンも全員こっちに引っ越ししてくれば良いのに。部屋だって余って居るし。



一番のネックがパパンの仕事である冒険者の依頼が魔宮の森が傍にあるガガの方が圧倒的に多いので其処で決心が出来ないって感じであった。



実質、俺もであるが、特に誰も働かなくても食って行く分には人生100回分でも余り有る程にお金はあるのだ。せんだてのマジックバッグも100個が瞬く間に売れ2500億ウニーがさらに口座にプールされ程である。


なので働かずに浪費しまくっても一向に減らないと思うのだ。 だって、浪費する物が殆どなにも無いので敢えてアンテナショップを開いたり、雇用を生み出す事をちょこちょこやっているのである。



■■■



さて新学年である。


教室が変わって2学年のSクラスの教室に入ると見慣れた10人の顔ぶれが俺を出迎えてくれたのだった。


「トージ、ひさしぶり~。」と言うハイマンに吊られてみんなも口々に挨拶をして来る。


「いやぁ~、今年はトージのお陰でギリギリまでノンビリ出来たよ。凄いな、ゲートは!」と言うハイマンに同調する。クランツやその他のみんな。


「そうか、それは良かったよ。俺も冬休みは妹とノンビリしたたよ。」と近況を報告し合う。



「そうそう、トージ、何かこっちに帰って来たら何か店が噂になってて聞いたらトージの所の店らしいじゃん!!」と情報に聡いハイマンやペギーから追求された。



どうやら、ミノ亭の事らしい。


「ああ、そうなんだよ、今までに無い新しい料理を食べられる店を2店出したんだ。1つはミノ亭でもう1つは庶民向けに安くしたトージ飯って言う俺の監修したレシピの料理を食わせる店な。まあどっちもお薦めなんだけど、行く時には一声掛けてくれればサービスするよ。ただ・・・病みつきになるからそこはごめんね?」と先に謝っておいたのだった。


「なんだよぉ~そんなに美味いのか!?」と行く気満々のハイマン。



そんな会話に花を咲かして居るとシェリー先生がスケジュール表の紙を片手に教室に入って来たのであった。



「はい、2学年最初のホームルームを始めます。まあ、内容は1学年の時と同じで、履修科目の提出を忘れると大変な目に遭うので注意が必要なのと、必須科目を墜とさない様にって事かな。」といい加減な感じの説明が終わったがみんなはそれで理解して居るらしい。



今回、2学年から、社交ダンスの実技と言う地獄の様な必須科目が増えておる。算数は直ぐに『単位免除試験』を取るにしても貴族常識学2は結構面倒らしいので今期は真面目にで無いとヤバイかも知れない・・・。


てか社交ダンスって、マイマイムやオクラホマミキサーとかじゃ駄目なんかい! 自慢じゃ無いがダンスなんか出来る気がしねぇ~し。


これも家庭教師を雇うしかないのか? と新学年初っ端からきがおもくなる俺だった・・・。


邸宅に帰って直ぐにゲイツさんに泣き付いて、社交ダンスの実技の家庭教師を手配して貰うのであった。



3日もせずにセリヌ先生と言う女性の社交ダンスの先生が決まり、初日の授業にはモリーンと言う同じ歳くらいの栗毛の子をダンスのパートナーとして連れて来たのであった。


モリーンは子爵家の庶子で詩人後はいえを出ないといけないのでこうしてすこしづつ世にでて仕事えをして居るらしいい。


同じ歳位かと思ったら厳密には、1つ上の学年で、マーガレット殿下の同級らしく、王立学園の在庫王制ではあるらしい。



緊張のダンス授業ではビシバシと叱責されて何度も姿勢を去勢されてモリーンの足を踏んでしまって都度回復魔法を掛けて謝って居た。

リズム感の問題だろうが、剣の型だと思って足捌きを覚えたら、何かちょっとリズムが違うとダメ出しされたのだった。


週に2日のこのダンスレッスンは俺に取って剣の特訓以上の100倍以上の地獄であった。 何と言うか、場違い感が甚だしい。


漸く少し勘が掴めたと思える様になったのは、学園の方の社交ダンスの授業が始まった頃であった。


その後も、すこしでも傍目に『単位免除試験』を請けられる様にと家庭教師の授業は継続して居たが、俺は意外とダンスに関しては『出来んちゃん』の部類らしい。


モリーン曰く、その方が卒業時の独立資金が貯まるので嬉しいと言われて複雑な心境であった。


そこで、「モリーン、もし、普通に働く気があるんだったら、家の『オオサワ商会』で働くって手もあるよ。今管理とか出来る有能な人材募集中だから。」と言って誘いを掛けると、


何故か頬赤く染めて「ありがとう。考えとくわ。」と言っていたのだった。


「ほら、そこ!!会話してもリズム崩さない!!!」とセリヌ先生の容赦無い叱責が飛ぶ。



どうも口を動かすと何かが疎かになってしまうのは、並列処理スキルがDランクの所為だろうか?


どうも、このダンス中に腹芸の1つも出来ない様では社交界は乗り切れないらしい。


実は社交界はある意味、貴族に取っての魔宮の森と言った所だろうか?



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