第346話 寂しいマリー
さあ、来年の3月末まで長い冬休みである。俺は一旦ガガの自宅に戻る事にして王都邸を後にした。
タージの事も気になるし、更にはこの所ワイバーン以降全くレベル上げ出来てないのが気になっていたからである。
丁度タージの昼寝の頃合いだと拙いと思って「ただいまぁ~!」と小さめの声で声を掛けると、「あ、トージ兄ちゃん、お帰り!!」と嬉し気な満面の笑みとは裏腹に囁く様な小声でマリーが出迎えてくれたのだった。
マリーの話によると、今丁度オッパイを飲んで眠りに就いたところだそうで。「タージちゃん寝てる時はシー!なの」と小声で囁いていた。
マリーも気を遣って物音を立てない様にしていた様なので、書き置きをして、王都邸にマリーを連れて行って普通に伸び伸びとさせてやる事にしたのだった。
「マリー、これから、兄ちゃんの王都の家で少し遊ぼうか。ズッと静かにしてて疲れただろ?」と言うと、嬉し気に「行きたいー・・・」と小声で返事をしたのであった。
当初の予定とは180度変わってしまったがまだ可愛い妹マリーの為であるレベル上げが1日遅れたぐらいは何でも無い。
初めて我が王都邸にやって来たマリーはその広さと豪華さに驚きの声を上げていた。
「トージ兄ちゃん、ここ凄いよ!?マリーここに来て良かったの?怖い人に怒られない?」とビビるマリーに、
「大丈夫だよ、マリー、ここは俺の家だから、ここで俺より偉い人は今は居ないから安心して良いからね。」と言って、取り敢えず、ゲイツさんや他のスタッフ達にマリーを紹介して廻るとちゃんとご挨拶の出来るマリーにみんなも笑顔で歓迎してくれたのであった。
そうそう、ゲイツさんは当初王宮からの派遣で暫定の状態だったのだが、俺を主として認めてくれた様で、『暫定』が取れて正式な当家の執事になってくれたのだ。
他の派遣されたメイド達やメイド長ケリーさんも料理人のサティスさんもほぼ全員残留を希望してくれて現在の当家の主要スタッフの一員となってくれている。
そんな訳でそんな彼らが新人のの見習いの子らを教育してくれているので基本我が家の人員問題は現在のところ解決しており、俺も精神的に楽をさせて貰って居る。
「ゲイツさん、折角なのでマリーに王都を見学させてやりたいんだけど、馬車を出して貰って良いかな?」とお願いすると、
「はっ!承知致しました。直ちに準備致します。」と恭しく頭を下げてくれたのだった。
15分くらいで馬車の準備が整い、俺とマリーとゲイツさんを乗せた馬車が王城の付近を通過して王都を巡って途中で市場に寄って、散策をする。
ゲイツさんだけはシャンとした執事の恰好をしているが、俺はマリーと同じ一見して庶民と判る服装の為微妙に目を引く集団になっているのはご愛敬である。
「兄ちゃん、お腹減った。」と言うマリーの要望に応えて、屋台の肉串を3人分購入して、1人1ぽんずつ食べて、お土産を幾つか買って屋敷に戻るのであった。
マリーは初めての王都の散策ではしゃぎ過ぎたのか眠そうにしていたので、ゲストルームのベッドで昼寝をさせてやった。
相当に疲れて居た様で、ベッドに運んでやると、電源が落ちた様に一瞬でスゥーっと寝息を立てていたのであった。
多分普段から騒いだり、我が儘を抑えて溜まっていた物があったのかも知れないな。もっと俺も気を回してやらないといけないなと少し反省するのであった。
俺の時? マリーが生まれた時には既に前世の記憶有ったし、静かに1人遊びならぬ1人修行してたから、全然鬱憤も不満も募らなかったよ。
その点、年齢=精神年齢のマリーには辛いんじゃないかと思った訳だ。
そう言う意味ではパパンに言って暫くの間、マリーを王都で預かるのも一つの手だな。と心に決めた俺だった。
マリーが寝てる間に一旦ガガに帰って先の書き置きを変更して、『暫くマリーを王都で預かって良いか?』と書いて置いて直ぐに王都に戻ったのだった。
王都に戻って暫くすると、書き置きを見たパパンから電話があって、時間が出来たので戻ったらマリーが息を殺してジッとしておりちょっと可哀想だったので、王都に連れて来て伸び伸びとさせてやったらはしゃいで疲れて寝て居る事等を伝えた。そして折角だから、冬休みの間こっちで預かって良いかと聞くと、
「うーん、
どっちかと言うとママンが寂しいって言う言うよりも自分が寂しいって感じに聞こえる俺であった。
そりゃあ、親だったらそう思うよね!?と理解はするが、ちょっと家に戻った際のマリーの息を殺した様子が旨を締め付けられたので思わずしゃしゃり出てしまったのだった。
尤もマリーがホームシックで帰りたいと言う可能性も多少あるからな・・・。
マリーが昼寝から起きた頃に、ゲストルームに行って
「マリー、暫く兄ちゃんのこの家で一緒に暮らそう。お父さんにはちゃんと伝えて許可を貰ったから。 それで良いか?」と聞いてみると、
「マリーもここに居て良いの?ここならシー!ってされないよね。」と聞いて来たので頷いてやると嬉し気に抱きついて来るのであった。
この家に来て初めて誰かと一緒に食事をする事になった訳だが、何時もの料理よりも美味しく感じるのであった。
マリーはマリーで、初めて食べる美味しい『味』のする料理を嬉し気に平らげていたのだった。尤も食事のマナーはなって居らず、少しずつ注意をして徐々に教え込むのであった。
マリーは喜んで食べてくれたけど、今更ながらちょっとマズったと思ったのは、この『味』に関してである。
我が家のママンの料理は調味料や出汁云々の使い方が悪いのか節約しているのか不明だが、壊滅的に『薄味』なのである。
俺は自分の味覚を持って居るけど、幼いマリーにこの味に慣れさせてしまうと、自宅に戻った際に問題になりそうな予感がしてならない・・・大丈夫だろうか?
■■■
折角王都邸に居るのでマリーに基礎的な勉強や魔法を教える事にした。
読み書きに関してはママンとパパンから習っていた様でおれは算数を教えて、魔法をメインに教える。
「マリーも魔法が使える様になりたいだろう?」と聞くと「はーい!」と元気に手を挙げて肯定するマリー。
まずは魔力を感知する所からと言う事で両手を取って俺の魔力をマリーに流すと「お兄ちゃん、何か温かい物が流れて来たよ!」と目を輝かせながら報告して来た。
「マリーそれが魔力と言って、魔法の素となる力だよ。自分の中にもマリーの魔力が有るから探してごらん。」と言うと、
「判ったやってみる!」とうーんと唸りながら魔力を探し始めるのであった。
マリーは意外にもヤル気のある子で、1時間程の間唸ったりもう一度魔力を流してと言って来たり粘った後、自分のお腹の奥底に溜まっている魔力を見つけ出す事に成功したのであった。
それからの展開は早く、魔力操作を身に付けるのに40分程掛けただけで、魔力を動かす事に成功してしまった。
とは言え、流石に初っ端からハードだった様で集中力が途切れ船を漕ぎ出したのでゲストルームで昼寝をさせてやった。
続く3日の訓練で取り敢えず、魔力を自分の身体の中で廻せる様にまでなったので、素質が在りそうである。
これで10歳になったらステータスに魔力感知と魔力操作が表示される事は間違い無いだろう・・・。
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