第345話 食の革命

 モリクール公爵領の隣のサバール伯爵領は大豆の産地でこれまた和食には切っても切れない重要な食材である。

俺はモリクール公爵同様にこのサバール伯爵ともパートナーシップを結び、積極的に醤油や味噌を製産して貰える事になったのであった。


慌ただしい俺の毎日が続き、67箇所のゲートを全部設置し終えたのは、夏が過ぎて夏が終わりかける頃であった。


それからは、ヒュージ・フロッグ狩りに徹して、出遅れた分を取り戻す様に狩り廻った。


結果として、600匹以上のヒュージ・フロッグを狩って胃袋を手に入れたのであった。


そして漸く100匹分の胃袋をジョージさんに渡して出来上がった物に魔方陣を付与して廻ったのだった。


全てが終わったのは、秋も終わりを告げる肌寒さを感じる頃となった。



月曜のホームルーム以外ほぼ通学しない俺であったが、ハイマン意外の同級生のクラスメイトからは辛うじて忘れられてなかった。


漸く機は熟したので、食の革命に取り組もうと思う。


まあ、やる事はおれがマッシモでやった事と同じでレシピの登録とアンテナショップでの実際の食堂業である。この為に多くの孤児院出身者達を雇い入れて、教育を実子した。



『トージ飯』王都店の開店である。


ゲートを開発した子爵と言う事でここ王都でも有名になっていた恩恵もあって、開店初日から、満員御礼で、割と安い庶民価格にした事で多くの庶民が連日通ってくれた。


この世界には家畜化された牛の魔物ブラック・カウが居るので牛肉の供給は問題無い。ミノタウロスの肉では無いけれど、ミノ亭焼肉屋も開きたいのだ。問題は高額な値段にして思った様に富裕層が店に来てくれる稼働か?である。


『トージ飯』のお陰で爆発的な勢いで王都に白米を食べる習慣が普及し、新しい調味料として醤油や味噌も普及して来て良い感じに広まって来た。


トージ飯意外からも醤油の焦げる香ばしい匂いがして来る事も多くなったのだった。


漸く良い物件が見つかったのでミノ亭を開くべくスタッフ教育も始める頃、パパンからの電話を貰って急遽ガガの自宅に帰ったのであった。


ママンの出産である。オロオロするマリーを俺が面倒みつつ、家の外で無事に出産が終わるのを待つ。俺とマリー暫くすると「オギャー」と言う可愛い声と共にパパンが家から出て来た。


産まれたのは元気な男の子らしい。


産んだのはママンだが、付き添っただけのパパンもグッタリしていたので、「おめでとう!」と言ってクリーンと回復魔法を掛けてやった。


暫くして、産婆さんに許可を貰ったので3人とも再度クリーンを掛けて家の中に入って、我が家の新しいメンバーである弟君にご対面した。


俺は念の為に家とママン、弟君の全てにクリーンを掛けて、ママンと弟君に回復魔法を掛けたのであった。


マリー以来久々に見る赤ん坊に感動しつつ、抱かせて貰ったのだった。

マリーもちょっとおっかなびっくりって感じで抱いていたが、小さい生命に触れて俺以上に感動して居る様子であった。


「お父さん、暫くは家でママンの面倒見ないといけないから、俺に支援させてくれないか? 本当は俺が家に戻って手伝えれば良いんだけど、毎日は難しいのが現状なんだよ。駄目かな?」と言うと、


パパンも俺の気持ちをを汲んでくれた様で。「判った、すまんが頼む。」と頭を下げられたのだった。


1人お手伝いのおばちゃんを通いで頼む事にして、その費用+αを俺が支援する事にした。


まあ本当は全面的に生活費を出す事も提案したのだけど、パパンから拒否されてしまったのだ。


「ありがとう。でも自分の子ぐらい自分の稼ぎで育てるさ。」といわれては無理強いも出来ないからね。



そして11月になって俺が13歳になる頃にはミノ亭焼肉屋もオープンしたのであった。


貴族連中を呼んでのプレオープンは大盛況の内に終わり、近所に漏れる焼肉の良い匂いに釣られる様に毎日予約でイッパイになるのであった。


マッシモのミノタウロスの肉を使った焼肉には一段落ちるものの、この牛肉ブラック・カウもなかなかに良い肉である。


こうして草の根運動の様な地道な努力の末に、貴族達の中から徐々に箸を使う習慣が巷にも影響を及ぼして来たのであった。



そうそう、俺の弟はタージと名付けられた。どうも、パパンにはこの『○~ジ』のシリーズに拘りがあるらしい・・・。



週末に時間が取れる時にじゃガガに帰る様にしているが、コータの小さい時を思い出してタージが可愛くて仕方が無い。



久々に学校に行くと、クラスメイトから、ミノ亭が美味しかったと絶賛を貰ったので、「毎度あり~」とお礼を言っておいたが意味が通じず、ポカンとされてしまった。


説明をしたら、漸く笑って貰えたが、俺は時々こう言う意味の通じない事を呟くらしい。イカンな・・・気を付けねば!


それそろ、年末の準備を始める季節になったが、クラスメイトのみんな進級を賭けた学年末試験の準備で大変らしい。


まあ俺は既に単位を取って居るので関係無いのだが、そう言うとみんなに羨ましがられた。


結局、みんなに勉強を教えろと強請られて空いてる日の放課後に学校の教室で勉強会を開く事になってしまったのだった。


まあ、たまにはこう言う『学園物』っぽいのも悪くは無いと思う事にしてみっちりクラスメイトを扱くのであった。



俺の扱きが功を奏したのか、みんなが頑張ったのか? 俺達は全員そのまま2学年にスライドして進級出来た。


シェリー先生は皆の成績が良かった事で評価が上がったらしく、ホクホクした表情をしていた。


そして12月に入って長い冬休みが始まったのだった・・・。


この冬休みは12月~新学期の始まる3月末まで続くので、領地のある者は遠路領地まで馬車で帰る者も居るのだが、ハイマンを含め殆どの者の領地にはゲートを俺が建設済みなので帰るのも一瞬である。


「いやぁ~。トージのお陰で今年は帰るのが楽だわ・・・。」と嬉し気に呟くハイマン。


「だよな!? ハイマン所のゲルバトス領、滅茶滅茶遠かったもん。よぉ~く感謝しながら帰る様に!!」と俺が言うとハイマンが笑っていた。

とは言え、シャロンの実家だけは家と同じ子爵家で直通ゲートの恩恵は無いものの、最寄りの伯爵領からの馬車帰りとなるのだ。


なので、「みんなは良いなぁ~直通で・・・。」と愚痴って居たのだった。


「シャロン、すまないね。線引きしないと滅茶苦茶な数になるから、伯爵家以上って事にしたんだよ。」と言い訳すると、


「大丈夫よ。ごめんなさい。気にしないで。」とシャロンに言われたのであった。

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