第342話 トラブルの収め方

ギイと扉を開いて中に入って受付嬢にBランクのギルドカードを見せて話掛ける。


「この街から北へ行く街道沿いにワイバーンが出没したんで討伐したので報告に寄ったのだが。」と俺が言うと、受付嬢は


「坊や、そんな笑えない冗談は止めなさい。この街の者ならあのワイバーンの事はみんな知ってるけど、貴方何処からそのギルドカードを手に入れたの?」とまるで信じて居らず、子供の悪戯程度に取られて話にならない。


「おう、坊主!エリカ嬢を困らせちゃ駄目だろう。」と関係無い冒険者まで口を挟んできて面倒な状態になって来た・・・。


「余計な部外者は黙ってろよ、オジサン。」とイラつきの所為で思わず剣呑な態度になってしまう俺。大人げないとは言わないで欲しい。


改めて取り出したBランクのギルドカードに魔力を注入すると正しい持ち主の魔力にのみ反応する様になっているギルドカードが光る。


「これで俺のカードって判ったか?ポンコツよ!? 再度言う、ワイバーンを討伐したので態々Uターンして報告に来てやったんだ。お前で話にならないなら、ギルドマスターか真面な職員を呼べ。これが最後の警告だ。それから受付嬢に媚び売りたいのかは知らんが、人を見てから喧嘩を売れよ!オッサン。下手二カラムと不敬罪になるぞ!」と口を挟んで来たオッサンに釘を刺すのであった。


「どうした?何をギルド内で騒いで居る?」と初老のオジサンが割って入って来た。

「俺の名はトージ。BBランクの冒険者で子爵位を持つ者だ。これがそのギルドカードでこれが爵位を証明するメダルである。ここより北の街道上空でワイバーンに遭遇して襲われたので兜跋したのでUターンして報告しに来たんだが、この受付嬢がまともに相手をしてくれず。このオッサン冒険者に絡まれてどう処分するかを悩んで居たところだ。で、あんたは?」とギルドカードと貴族位証明するメダルを見せつつ一気に説明すると、三者三様に青くなったり焦り始める。


「えっっと、トトージ様がワイバーンを討伐して下さったんですね? ありがとうございます! 対応がちゃんと出来ずに申し訳ございません。して討伐証明部位等はお持ちでしょうか? 私このウーガス支部のギルドマスターを務めるサンダーと申します。何卒、此奴らの事は穏便にお許し下さいませ。」と頭を下げるサンダーさん。


「ギルドマスター、丁度良かった。話が早い。亡骸を全部持って来てるので、丸ごと買い取って貰いたいんだけど、サイズ的に訓練場とかだったら出せると思うが。」と言うと丸ごともって来て居ると言う言葉に驚きつつも裏の訓練場へと案内されてそこに丸々回収しておいたワイバーンを『時空間庫』から引きずり出して見せるとサンダー酸だけで無く、付いて来ていたその他の冒険者や件のエリカ嬢も「わぁ~!!」とか「うぉー!」と言う驚きの声を上げていたのだった。



しかし、驚きの次に来るのは自分らのした行動による恐怖の様で、貴族相手に不敬罪となれば最悪死罪が普通にある世界故にガクブルしていて顔色が悪くなっていた。


「まあ、今回は特別に不問にするが相手を見て喧嘩を売るんなオッサン。それと受付嬢なら色眼鏡で見ずにちゃんとした公平な対応を心懸けろよ!」と苦言を呈して置いた。



結果として、このワイバーンに掛かっていた懸賞金では無いが請け手の居ない依頼が達成された事に寄る依頼料と買い取り金額をプラスしたお金を貰い、Aランクに上がる為の推薦状を貰ったのであった。


このAランクになる為のシステムであるが、Sランク相手のAランクランクアップ試験を受けるか、Aランクへの推薦状2通を貰う事でAランクになれるのである。と言うのもSランクが現在不在の為ランクアップ試験が行えない事が原因なのだがな・・・。


つまりどう言う事かと言うと俺はパパンと同じAランクにリーチが掛かった状態と言う事である。


そして、サンダーさんは詫びのつもりなのかは知らないが、1通の紹介状を俺に渡し、「もしこの先のガランツの街の方に行くのであればこれをガランツの街の冒険者ギルドのギルドマスターに渡せばもう1通のAランクへの推薦状が貰える筈だ。」と言ってニヤリと笑って見せたのであった。


「ありがとうございます! どうせこのまま北上してハリス辺境伯領まで向かうのでこの後寄ってみます。」と礼を言って冒険者ギルドを後にするのであった。



この後1時間位掛かってガランツの街に辿り着き、冒険者ギルドに立ち寄って、ここでは何の問題も起こらずに件の紹介状をギルドマスターに手渡しサンダー酸の言う通りに2通目のAランクへの推薦状と、更に此方でも問題になっていたワイバーンを倒した報奨金を別途貰えたのであった。



こうなると、ちょっと先にガガの街でギルドカードの更新をしたくなるよね。尤別にどこのギルドでも出来るのだけど、折角なら、俺の原点であるガガの街で行った方が良いだろうし。ガラコさんも喜んでくれるだろう。



善は急げと言うのでガランツの街を出て直ぐにゲートでガガの街へ戻って久々にガガの冒険者ギルドにやって来ると、「おう、トージじゃないか!」とガラコさんが嬉し気に俺を出迎えてくれたのだった。


俺が2通の推薦状を持って居るのを知ると、「もうか!? 思った以上に早かったな。お前さんならこのまま行けば親父さんがなれなかったSランクも夢じゃないと思うぞ。」と驚きつつAランクに更新したギルドカードを俺に手渡しながら言ってくれるのであった。


Sランクの冒険者になるにはAランクとして十分以上であると複数のギルドマスターが認め十分なギルドへの功績が必要らしい。この功績値がこれからの俺にとっては厄介そうで、学業と貴族業と忙しい身故になかなか溜まりそうに無い。こうなったら、亜竜のワイバーンなんかじゃなくて、本物のドラゴンでも討伐しないと無理かも知れないな。


尤も一番手っ取り早くギルド功績値を稼ぐ方法は王侯貴族の依頼を受ける事らしいのだけど、それはそれで厄介そうなので今後の動向を見て考える必要がある。


今のところ、俺が冒険者をやっている事は面倒事を避ける意味でも内緒だからな・・・。


え? じゃあ何でウーガスの街で貴族のメダルを見せてまで暴れたんだってか? だってムカついたんだもん。あの場で平和非暴力的に事を収めるには有効だろうって思ったんだよね。


実際効果はあったし、大事にもならなかったから今回は良しとしようじゃないか!?


と心の中で思いつつ、今日はガガの自宅に帰って一泊して翌日に備える事にしたのであった。


■■■



Aランクになって3日間、只管連日飛んで漸くハリス辺境伯領に到着し、この世界初の海の見える街を堪能しようと、ワクワクを隠せないのであった。



先に仕事を済ませないと拙いので、南門の衛兵に貴族のメダルを見せてハリス辺境伯領にお目通りをお願いし、暫く、衛兵の詰め所の待合室みたいな場所で待っていると、ハリス辺境伯が馬車で矢って来て、


「これはオオサワ子爵遠路遙々忝い。まずは我が邸宅にて旅の疲れを・・・。」と言うハリス辺境伯を遮って、「お言葉ありがとうございます。しかし、先にやる事をやってこの領の海産物とかをジックリ見たいのです。そうしないと心から寛げませんので先にゲートの建設予定地にご案内頂けると幸いです。」と俺が言うと、

「お若い方は流石ですな。了解し申した。まずは建設予定地にお連れ致します。ここから直ぐですので。」と言って5分も掛からずに予定地に到着したのであった。


馬車から降りて、ハリス辺境伯が見て居る前でちょっと整地をし地面を石化して固めた後、アッという間にゲートの石門を築いてゲートユニットを取り付けて、王都にテスト接続を済ませて、工事完了である。


「もう終わったのですか!?」と余りの早さに驚くハリス辺境伯に、「もう既に何十と言うゲートを建設しておりますのでかなり慣れましたので。」と言ってニッコリと微笑んだのであった。


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