第335話 謁見の儀 その2
ギギギギと言う重厚な潤滑剤スプレーを蝶番に拭きかけたくなる重厚な音と共に目の前の謁見の間の扉が開かれて中へと促される俺。
無数の貴族の目が俺に集中して視線に貫かれそうだ。
「予想以上に若いな。」と言う、見たまんまの感想の呟きが聞こえる中、
「オオサワ商会のトージ殿、前の方へ。」と言う宰相閣下の案内の声がして打ち合わせの通りに線の書いて在る場所まで進んで片膝を付いて頭を垂れる。
「面を上げ良い・・・。」と国王陛下が1回目の声を掛けて暫くすると「トージよ、面を上げよ。」と2度目のお声が掛かる。お約束通りである。
「はっ!」と短く応えて顔を上げると、
「トージよ、その歳にしてこの度の国への貢献、過去に類を見ない程に素晴らしく、皆で話し合った結果其方に子爵位を嬢爵することに相成った。面倒等と思わずに心して受ける様にの!
但しじゃ。其方はまだ低年齢故実際の襲爵は成人後とする。それまでは平民では無く子爵当主としてに王立学園に通い入り色々と貴族の知るべき事等を学ぶが良い。」と宣国王陛下。
うわぁ~・・・。恐れていた面倒事が屋って来てしまったがここで拒否は不敬罪に当たるだろうし、お約束のキメ台詞を言うしかないのか・・・。
「ありがたき幸せ。謹んでお受け致します・・・。」と口から出そうになる拒否を表すの暴言を飲み込んで辛うじて定番の言葉を告げたのであった。
てか学園って??と初めて聞くキーワードに?マークを浮かべた俺をみて国王陛下が面白そうに俺を覗き込み、
「そうか・・・トージは王都民ではないから馴染みがないかもしれぬが、王都には王立学園と言う学校があってそこで、貴族や優秀な平民は文武両道に学ぶのじゃ。」と陛下が教えてくれたのだった。
「後の詳しい事は宰相のエンデルに聞くが良い。」と宰相閣下に丸っと振ったのであった。
後に宰相閣下に受けた説明によると貴族には法衣貴族と領地を持つ地方貴族に分かれるが、俺の場合領地は無いので法衣貴族となるらしいい。
前者と後者の違いは色々あるが、法衣貴族の場合役職があれば日本で言う官僚に近く、役職の有無に関係無く貴族年金が毎年一定額貰えるらしいい。地方貴族の場合
は多少の貴族年金は出る場合もあつが通常は領地経営で得た税金の何割かを自分の収益とする事で全てを賄う事になる。そして、国への税金の納付だな。
どっちもどっちだが領地のない俺は比較的自由で、このまま冒険者を続けるのも商会を続けるのも自由との事であった。
それを聞いて少しホッと胸をなで下ろす俺だった。
そうそう1つ重要な事を忘れて居たが俺には今回の叙爵に際し先渡しとなるが王都に邸宅を授かるらしい。これは拠点となる屋敷の購入前なので何気に嬉しい誤算である。
まあ良く無い方の誤算は国によって首輪を填められてしまった事だろうか? しかも同じ年頃のクソ生意気そうな貴族の子弟と一緒にお勉強と来たもんだ・・・考えるだけで憂鬱である。
マッシモでは何方かと言うと教える立場だっただけにコレが最大にキツイかも知れないな。
しかし、この世界の一般常識の範囲を知る機会を得たと善意に解釈するとしよう・・・と宛がわれた自室に戻って今日起きた事の全てを静かに整理して居ると、コンコンと言うノックの音がするや否やドアが開けられてマーガレット殿下の突撃を受けたのだった。
「トージよ!おめでとうなのじゃ!!これで一緒に学園生活出来る様になるのじゃぞ。喜ぶのじゃ!何か判らぬ事があれば妾を頼ると良いのじゃ。」意外に面倒見の良い感じの言葉を投げ掛けてくれるマーガレット殿下。
「それはありがとうございます!まあしかし同じクラスになるかは試験次第でしょうから難しいかも知れませんね。読み書き計算以外の勉強って先日図書館でちらっと本を読んだだけですからね・・・。」と俺が言うと、
「妾が幼い頃に勉強で使っておった本があるのでそれをトージに使わそう。それで勉強すれば満点合格じゃぞ?」と言って付いて来た侍女に本を持って来る様に告げるのであった。
これで愉しくなるのぉ~♪と上機嫌でマーガレット殿下が帰って行ったのだった。
驚く事に、本当にお祝いだけの用事だった様である。
少し休憩を取って落ち着いて来たのでやるべき事を1つずつ片付ける為ゲイツさんに一言断りを入れて一旦ゲートで両親に叙爵の件を報告に帰る事にしたのだった。
先日振りに戻った我が家。尤もそんなにユックリ出来る訳では無いので「ただいま。」と家に入ると、
家に居たママンが「あらお帰りなさい。どうだったの?王都の用事はもう良いの?」笑顔で迎えてくれたので一時的に戻った事をまずは報告し、後はパパンの帰宅を待ってから諸々を報告する事にしたのであった。
マリーは俺が帰って来たのでご機嫌だけど、また王都に帰らなきゃならないんだよね・・・。
夕方前にパパンが戻って来て久々の家族揃っての夕食を頂き、子爵位を叙爵した事を伝えると「はぁ~?」と素っ頓狂な声を上げて大騒ぎになったのだった。
更に、半ば強制的に王立学園に入学する事や王都に家を貰った事等を伝えるとパパンとママンの両方が「良かったね」と喜んでくれたのだった。
これからの事を色々話し王都に移らないかを聞いたのだが、「今はその時じゃない。お前はお前で自分の足下を固めろ。」とパパンに言われてのであった・・・。
帰り際にマリーが少しグズったけど「また直ぐに帰って来るから大丈夫。」と言って王城の部屋へと戻って来たのだった。
俺は薄情なのだろうか?強制的に巣立ちっぽくなってしまったのだがそれ程寂しいと言う気持ちが湧かない。
既に2度家族との別れを経験してるのだが今回は失ってはおらず、何時でも会えるのだ。
きっと何時でも戻って会えると言う事が大きいのか?
既に12歳だし中身はアラフィフのオッサンだしなぁ~。泣いてられないよな。
こうして俺の激動の1日が終わりを告げるのであった・・・。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます