第331話 プレゼンと王都散策 その3
翌日は部屋でマッタリ過ごし・・・とはならず、王宮の片隅でヒッソリと昨日購入したお米を前世で作った脱穀機で脱穀して白米にした。
まあヒッソリと言ってもゲイツさんに聞いて許可の上やっているので咎められる事は無いのだけど、まあ王城の中なので気持ちだけコッソリって感じだね。
俺のやってる事を不思議そうに見るゲイツさんに一々説明しながら作業するのは面倒だけど、この後炊飯もさせて頂く予定なのでそこはちゃんと悪い事しているわけでは無いのをアピールしている訳だ。
脱穀が終わったら羽釜を出して※を磨いで水加減を調節してそのまま魔動具のコンロに置いて炊飯に入るところでゲイツさんから『待った』が入った。
何でも王侯貴族の常識として、相手の家で出された食べ物が口に合わないと言う様な相手のもてなしを貶める行為と・・・つまり喧嘩を売ってると思われる行為となるらしい。
なる程、そう言われればそうともとれるのか。と納得し即座に謝罪してそう言う意図は無い事を表明し、撤収したのであった。
危ない!実に危なかったついつい何時もの癖で地雷を踏み抜くところだったぜ・・・。と自室で冷や汗を拭う俺だった。
まあそうなるとやる事が無いんだよね。
俺にとっての王都行きの99%は今回の買い物で終わり、行き掛けの駄賃程度に考えて居たゲートセンターのプレゼンは終わって現在宰相閣下や国王陛下辺りで検討中だし最早何も思い付く事が無い。
と言うか、何故俺が11月の30日の謁見の儀に参加せねばならないのかも不明である。折角11月は誕生月なのにな。さっさと解放して欲しい。
そこで、俺はゲイツさんに俺でも閲覧出来る図書館が無いかを尋ねたのだった。
「図書館ですか?保証金は掛かりますが一般公開して居る図書館が王都には在りますよ。」と教えてくれたのだった。
所謂歩書金とは何かの破損等を起こした場合の最低賞金を先払いして預けて置く制度の物である。
「そうですか、是非その図書館につれて行って貰えますでしょうか?」と速攻でお願いして図書館につれて行って貰ったのであった。
立派な石作りの建物の図書館の入り口では身分証の提示が必要になるので、商業ギルドのSランクカードを見せて保証料を支払い中に入ったのであった。
内部には壁に聳え立つ本棚が在りビッシリと本が詰まって居る。俺はこの世界の常識を知る為周辺諸国の本や魔動具系、錬金術系の本を数冊借りて来て、流し読みを始めた。
この国の周辺には敵対するフランツ王国が在り頻繁に小競り合いが起こって居るらしい。なる程、そうなると、砦への増員や救援物資等の兵站を考えるとゲートは必須だな。
ゲートがあればかなりの距離的問題は解決するし。と頭の中で考えニンマリと笑うのであった。
そして薄々は感じていた事だがこの国の一般的な魔動具の概念と俺の持つ魔動具のそれは大きく異なり、この国のレベルが真空管で俺の持ち込んだ概念はトランジスタを越えてICレベルで有る事が微妙な魔動具系の本を読んで判ったのだった。
これは単に世界の熟成度の差や文明の熟成度の差なのだろう。師匠の教えてくれた錬金術や魔動具作成の知識はここでもトップクラスで役にに立つと言う事が判明した。
通りで、先程魔動具のコンロを出した際ゲイツさんの反応が薄かった訳である。
今度は王都の魔動具屋を廻ってみるのも良いかな。と1つやりたい事を見つけてほくそ笑むのであった。
魔法系の本を見てみると、魔法の詠唱文が乗っておりちょっとビックリ。
要はイメージを補助する為の詠唱らしいが、その詠唱文によって、威力が変わったりするそうな・・・。マジか!?
この世界の人達にはアニメの様なビジュアル的なイメージを持ってないので文章でないとイメージが湧かないのかもしれない。
更に言うと科学的な基礎知識も無いので原理を理解して熱を上げるとかのイメージの作り方も文章に頼って居る訳だ。
良かったよ。魔王コスに続いて中二的な詠唱で恥を掻かなくて済んで。
保証金は良い金額ではあったが、そこそこに愉しめたので有意義な1日となった。
明けた翌日はゲイツさんに頼んで魔動具屋巡りを行う事にした。
数店舗を廻った結果、やはり先日本で読んだ通りに性能的にショボい物しか無くて、しかも何故かサイズが異様に大きい。つまり俺の持って居る様な魔動コンロはこの世界ではオーパーツ扱いなのだろう。
なる程・・・ここまでも差が在るとは。と現実を目の当たりにしてどうしようかと悩む俺だった。
魔動具をコツコツ出しても良いけどそれの注文に追われるのは頂けない。もっと自由が欲しいのである。
そう考えると、固定式ゲートは程良い物なのかもしれない。そうそう沢山売れる訳でもないし、利益率も良い。余った時間で冒険者も出来てマジックバッグも作れるし。
今世はノンビリ暮らせそうだなとニンマリと心の中でほくそ笑むのだった。
翌日は一日中雨が降っており、外に出ずにゲイツさんに竹を貰いシーツを敷いた上で部屋ジッと竹トンボを作って居た。
無属性の魔法を駆使して作った竹トンボは非常に出来が良く、ゲイツさんにも1つ作って色々付き合って頂いてるお礼にあげた。
「トージ殿は本当に色々な事をご存知ですね。家の息子へのお土産に致します。」とお礼を言われたのだった。
それから数日が経ち、長い長い会議の日々を経て漸くゲートセンターの件が決まったらしい。
俺は出来上がった小洒落た貴族の子息が着る様な服装を纏って王様の執務室へと通された。
「オオサワ商会のトージよ、よくぞ参った。儂がこの国の国王ベンゲル・フォン・アムールじゃ。長らく待たせて居ったが、其方より提案のあったゲートセンターの件、建設する事が正式に決まったのじゃ。詳しくは宰相の方との打ち合わせになるが一つよろしく頼むぞ。」と風格の有る50代の白い髭を生やした初老のおじさんが宣った。
「ははっ!ありがたき幸せに存じます。」と片膝を付いて頭を垂れたのだが、
「ああ、よいよい、この場は正式な場ではない故に畏まる必要は無いのじゃ。」と以外にフランクに語ってくれたのだった。
その後、宰相閣下との打ち合わせを経て通行毎に10%のインセンティブを貰う様な方向で話が決まるのであった。
奇しくも今日は十一月1日俺の12歳の誕生日である。良い誕生日となった。
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