第329話 プレゼンと王都散策 その1

それからのエルサードさんの動きは早く謁見前と言う事で宰相閣下による事前チェックが入る事になったのだった。

普通なら何を11歳のガキが世迷い言を言ってる!?と相手にしないのだろうけど、先にエルサードさんを引き込んだのが功を奏したようである。


逆の立場なら確かめもせずに「巫山戯るな」と叱る自信があるからな・・・。


そんな訳で見事に宰相閣下を驚かせてこちらサイドに引き込む事に成功し、それまで胡散臭そうな目で俺を見ていたのが、子共に接するのではなく、1人の大人に接するような言葉遣いに代わって、

「トージ殿」と呼ばれる様になった。


「で、重要なのは、先程家の裏庭で試作品をお見せした様に対になる門を双方に設置する必要がありまして最初だけは費用的にも大変ですが、一旦ゲート網を築いてしまえば後は魔石交換のメンテナンスぐらいで大丈夫です。


通行料を適切な価格に素居る事で物流の革命が更に加速しますよ。」と子共の俺が解説するのをフンフンと真面目に聞いてくれている。


「素晴らしいですな。後は初期費用次第ですな。」と宰相閣下。


「ええ、まず王都にゲートセンターを作り、各都市側のゲートの建設費用は領主持ちにすれば良いんですよ。で、通行料は国と領主側で半々になる様にすれば領主側にもメリット出ますし、経済が活発化すれば自ずと税収も上がりますので。」と俺も補足した。


「王都側のゲートセンターですが、土地をご提供頂けるのであれば、費用当方持ちで工事しても良いです。但しその場合、通行料の10%を工事料金の代わりに売り上げから頂く事になりますが。その場合国側の持ち出し料金は土地の分だけになります。」と怪しい商材のセールスかの様にマッシュの居ない現在は俺が説明する。


実際に適正か価格が判らんし、通行料が十万ウニーなら1万ウニー貰えれば十分にペイ出来ると思われる。重要なのは不労収入を生みだし続ける打ち出の小槌を手に入れる事だな。と心の中で揉み手をしながらニンマリとほくそ笑む俺。


「なる程、それも素晴らしいご提案ですな。早急に検討して再度お話し致しましょう。」と結構前のめりな感じで最初のプレゼンは終わったのであった。


ただまあこのゲート網は良い面と悪い面があるんだよね。


確かに遠方と直に行き来出来るのは良いけど、その中間の地方の行き来が減る傾向にあるんだよね。まあ、役割分担が進むと言えば聞こえは良いけど、道中の村とかは余程特産物とか無いと厳しいんだよね。


あっちの世界では、領主主体で色々な政策をしていたみたいだが、俺は詳しくは知らない。




プレゼンの翌日はエルサードさんにお願いし、王都の街中を散策に出かける事にしてゲイツさんと言う侍従さんが王都を案内してくれる事になったのだった。



「どう言った所に行かれたいのでしょうか?」とゲイツさんに問われ、


「取り敢えず欲しい食材があるので市場ですね。そこになければ、商人ギルドですかね。」と漠然とした目的を伝えると、


「了解致しました。もし欲しい食材の名前が分かれば事前にお調べする事も可能ですよ。」と言うので話してみる事にした。


「欲しいのはお米と言う穀物と醤油、味噌と言う大豆から作られた調味料ですね。 もしあればみりんやお米で作ったお酒も欲しいですね。」と踊る心を落ち着かせながら早口に伝える俺。


ゲイツさんはメモを取って「調べておきます。今日直ぐには間に合わないと思いますがご容赦を。」と言って中座してメモを渡しに行ったのだった。


ゲイツさん曰く、調味料であれ全ての食べ物は一度は王宮の厨房に収められるので、何処が取り扱って居るのかもその管理課に問い合わせれば判るらしい。


何それ?非常に頼もしい!!これだけでも「王都に来て良かった」と思える。


じゃあ、今日は王都の市場をメインに廻って行きましょう。」と予定を決定するのであった。


王都の市場の近所まで馬車で移動して、2人で市場に入って行くと流石は王都の市場。ガガとは比べ物にならない人と物の量である。


「」ここまで凄いとは予想以上でした。」と思わず舐めていてごめんなさいと素直に心の中で謝る俺だった。


この世界に来て人に酔うって体験はなかったが、流石にここまで人が多いと気持ちが悪くなってしまう。


何やら察してくれたゲイツさんが、

「見難いでしょう?良ければ肩車させて頂きますが?」と言ってくれたのでお言葉に甘える事にしたのであった。


肩車をして貰ったら一気に視界が開け、自分自身に掛けた回復魔法と相まって人に酔った不快感がスッとした。


以降いくつかの食材を大量に買ってマジックバッグのウエストポーチに入れてを繰り返して廻り小腹が空いてきたので、2人で屋台のサンドっぽい物を食べて更に廻った。


ゲイツさんの話だと、大戸は広いのでここの他にも幾つか市場があって、ここは比較的高級品が売られているいちばだそうであった。


なる程、市場にも地域的なランクが存在するらしい・・・。


他の庶民用のランクの市場に行きたいとお願いしたら、怪訝そうな顔で「治安が悪くなるので止めた方が良い。」と止められたのであった。



市場散策初日は庶民でも上流階級が使用する市場を心行くまで視察し、相当量のスパイス等の調味料を大人買いしてゲイツさんから

「こいつそんなに買うの?」ってドン引きされたけどドンマイである。


だって自宅に帰った後も美味しいご飯食べたいからね。


ゲイツさんにここ王都の教会や孤児院についてを聞いたところ、教会の運営する孤児院があるとの事で折角なので市場だけで無く、教会と孤児院も訪問先にリストアップしといたのだった。


早めに第ニのマッシュを見つけないと大変だからねぇ~。


尤もこっちの孤児院の運営方針がそうなのかも不明だからまだ何とも言えないが・・・。

せめて、読み書きと計算が出来る子が居れば良いのだがな。


ああ、そうか。そうなると、ここに拠点となる家が必要なのか。


王宮の用事が終わったら、そこそこの家でも買うかな?


そうなると商業ギルドにも行かないとだな。と頭の中で予定を組むものの、でも身体が子共だからなぁ~確実に舐められるパターンだよな・・・。とちょっと鬱になるのであった。




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