第328話 王都への道 その3

雪のチラつく中漸く王都の巨大な城壁が見えて来て世界は違えど、なんとなく懐かしい様な気分に浸る。



南門が近くなったので地上に降り立って、魔装を雨合羽代わりにして雪のチラつく中を小走りに門へと走って行く。


「おう、坊主、雪の中元気だな!身分証は?無ければ入場料を払って貰うが。」と門番の衛兵のオッチャンにl声を掛けられて、冒険者ギルドのカードを見せるとBランクなのを知って驚いて2度見していた。



「王宮に呼ばれて来たんだけど、商業ギルドは何処にあるか教えて貰えますか?」と聞くと再度驚いたみたいで、丁寧に商業ギルドの場所を教えてくれたのであった。


予想通り、この門は南門で一番王都では寂れた門らしいい。商業ギルドは栄えている、西門の寄りの方にあるらしく歩いて行くには非常に遠いことが判ったのだった。


どうしたものか悩んだ俺は門番の衛兵のオッチャンに礼を言って聞いた通りに西方向にむかいつつ路地裏に隠れて上空へ上がってフォース・フィールドの足場を作って上空から王都を眺めたのであった。


さてどうした物か・・・11月25日までに王宮に出頭せよと言う事だし、まずは王城に接触して指示を仰いだ方が得策だろうか?

尤も今日は10月の28日なのである意味早過ぎたのだが。兎に角見える範囲で王都上空をゲートでショートカットしながら、王城の近所までやって来て、王城の城門門番の方へと歩いて行く俺。


「坊主ここから先には行けないぞ!」と門番のオジサンが俺に話し掛けて来る。


「今日は。王宮からの招集のお手紙を頂きまして雪が降る前にやって来たんですが。どうしたら言いのか判らないので指示を仰ぎに来ました。」と言って王宮からの招集の手紙を見せるとその封印を見てオジサン3人が顔を見合わせて、何かを話合った後に

「坊主、名前は?」と聞いて来たので「『オオサワ商会』のトージと申します。」と答えると、「ちょっと其処で待っててくれ。」と言い残し、1人が駆けて行ったのだった。

そこで暇なので、待ってる間に、オジサンにお薦めの宿を聞いてみた。


「金に余裕があるのなら『悠久の温々亭』が俺のお薦めだが、王宮からの呼び出しなら、王宮の方で部屋を用意してくれるやも知れないな。坊主凄いな!長年王城の門番やってるが、坊主ぐらいの年齢の子が呼ばれるのを見るのは初めてだぞ。」と褒めてくれるのであった。



15分程待たされた結果、執事の様な恰好のオジサンと馬車が城門の所までやって来て、部屋を用意してくれるらしく馬車に乗せられて王城の中へと入って行くのであった。



通された部屋は豪華な客室で俺1人で使うには驚く程に広かった。


[トージ様、失礼ではありますが、謁見の際に着られる様なお召し物はござい増すでしょうか?」と執事のオジサンが申し訳無さそうにに俺に聞いて来た。


「いえ、こんな冒険者の恰好の服しか持っておりません。必要なら作りますけど、間に合いますでしょうか?」と聞いてみた。


「そうですか、ではこちらで間に合う様に手配を致しますのでご安心下さい。あ、申し遅れました、私侍従長のエルサードと申します。」と手配を引き受けてくれたのだった。



ちょっと雰囲気に慣れて来た俺は思い切ってエルサードさんに今回呼ばれた主旨を聞いてみたが、


「申し訳ありません。どう言った趣かは私如きでは測り知れないのですが決して悪い話では無いと思われますのでご安心を。」とはぐらかされたのであった。


それから暫くすると、仕立屋の一団がやって来て、俺の採寸を始め一通り測り終えると恭しくお辞儀をして帰って行った。



どうやら俺はこの部屋で自由にして良いらしい。エルサードさんの代わりにメイドのお姉さんが付いてくれてお茶やお菓子等を出してくれるが、何もする事が無いので2人で無言で居ると息が詰まる。


それを察してくれたのか、部屋の風呂やトイレを案内してくれた後、「御用がございましたらこのベルをお鳴らしくださませ。」と言って部屋から出て言ったのだった。



やっと1人っきりになって、ふぅ~っと深い溜息を付いて靴を脱いで綺麗な服に着替える前に備え付けの風呂に入る事にしたのであった。


そこそこ広くて豪華な風呂であるが、俺の作った我が家の大理石の風呂に比べるとまあまあかな?


石鹸は俺が作った物を使って綺麗に洗って湯船に浸かるホッと生き返る様な感じに緊張も筋肉も緩んで行く。


風呂から上がってドライで水気を乾かして綺麗な服に着替えてデカイベッドに飛び込むとこの世界で最高のフカフカ度合いに思わずニンマリとしてしまう。


そのまま2時間程仮眠を取ってノックの音で目を覚ますと先のメイドが夕食を運んで来てくれたのであった。


王宮の食事は非常に美味しく、この世界に来て最高に美味しいと感じる食事であった。


やっぱりある所にはあるんだな・・・と思うのであった。



翌日侍従長のエルサードさんが部屋に来たのでこれからの予定を聞いてみたら、11月の30日に俺が出席する謁見の儀があるそうで、それまでは特に何も無いそうで・・・。



マジっすか。そう言う感じだったのか!?と正直ショックを隠し切れなかった。


「あのう、ではそれまでの間初めての王都を出回ったりして見物しても宜しいでしょうか? 買いたい物等もありまして。 あ、あと、もう1つ、交通手段や物流の手段としてご提案したい物がございまして。ご紹介するタイミングを開いた時間で頂けないかと。確実に『マジックバッグ』以上に有益な物になるのは明らかだと思うので。」と俺が聞くと、


「王都の見学はご自由に出入りされて問題ありません。お付きの者をお付けしますので。 『マジックバッグ』以上の物ですか、それは素晴らしいですね。簡単に概要だけでもお知らせ頂けませんか?」と興味を示すエルサードさん。


そこで、俺は、「まあ魔動具に鳴りますが。」と言ってゲートを発動して、我が家の裏庭に繋いで見せた。


「これはゲートと言いまして、こうして2箇所を繋ぐ門を作ってやるんです。 この先はガガの我が家の裏庭になります。どうぞ。」と言って先に入ってみせると、少し警戒しつつゲートに入って来た。


「おお、ここはガガなのですか?」と驚きを隠せないエルサードさん。


「そうです。このゲートで王都うと各都市を繋げば物流に革命が起こりますし、例えば他国との国境線の砦に設置しておけば、援軍も救援物資の搬入も瞬時に終わります。」と前世がそうだった様に説明したのであった。


「これは素晴らしいです!コレを魔動具で行えるのでしょうか?」と聞いて来るエルサードさん。


「はい、実は試作品在りますので大丈夫ですよ。」と試作品をセットして繋いで見せたのであった。


興奮醒めやらぬエルサードさんと王宮の俺の部屋に戻って行って、


「このゲートを然るべき方へ今回の序でにご案内出来ればと思ったので、時間も余って、ますし、如何でしょうか?」と聞いてみたら。


「直ぐにこの件は陛下のご判断を仰ぎますので、本日は外出せずにこの部屋にてお待ち下さい。」と言われたのであった。



前世の様に能力を隠さなくて良いのか?と思うだろうが、隠すのもこれで結構大変だと言うのを魔王コスの一件で思い知ったし、ある程度リークして利益供与した方が物事丸く収まる場合もある。


最悪は他国に移る手もあるし、出方をみてみようかと思った訳だ・・・。

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