第317話 ランク・アップへの道 その1

翌朝から冒険者ギルドに寄って依頼をガラコさんから請けて魔宮の森へと向かったりする日が始まる。


今日はヒュージ・ボアと言う巨大な猪の魔物狩りである。


これは俺の『時空間庫』の特性を活かした正に俺の為の依頼と言っても過言では無いだろう。


なんせ、ヒュージ・ボアは2トントラック並みの巨体と重さ故に狩っても全てを持ち帰る事が困難な魔物なのだ。


特徴はワイルド・ボアの巨大版なので見れば一目で分かるらしい。と資料には書かれて在った。


尤も俺には鑑定EXがあるのでそこら辺は全然問題が無い。



この依頼には実は3つの難関がある。1つは先に述べて運搬に関して。そしてもう1つが発見して討伐する事。


こんな巨大なヒュージ・ボアだが、森にいると、巨大過ぎる故に擬態していてジッとしていて発見し難いのだ。

大きな岩と思ったらヒュージ・ボアだったと言う事もあったりするらしい。


おれだったら魔力で気配を感じられるからそれは幾ら何でも無いと思うけどな。

もう一つは個体数が少ない事と、討伐の難易度の高さである。


勿論、肉も皮も納品物となるのだが、討伐し難いからとボロボロにして仕舞っては意味が無い。


つまり、如何に綺麗にスパッとって全てを最高の鮮度で持ち帰るか!?が嗅ぎとなるクエストなのである。


ガラコのオッサン、流石はサブ・ギルドギルドマスター。俺の使い所を良く判ってるじゃん。



そんな訳で朝からヒュージ・ボアを求めて森の上空から気配を探って居る訳だが、これが本当に見つけ難い。


既に午前中3時間廻りきってソロソロ飽きて来た。


一旦昼飯休憩を取りながら昔の日本での知識を思い出していてフト思った。そう言えば、猪って『泥浴び』する習性有ったんじゃ無かったっけ?と。



もしヒュージ・ボアも猪の習性を持って居れば無闇に探し廻るより、泥のある水場の近辺を探した方が早いんじゃ無かろうか?


思い立った吉日、即昼飯を掻き込み空中に上がってウィングスーツで魔宮の森の上空を旋回しながら水場と言うより泥場を探し廻るのであった。


在りました!! 相当デカイ沼の脇に一際泥濘んだドロドロの泥場が。しかもその泥場に大きな泥の岩の様な物が存在して居り、気持ち良さそうに泥に背中を擦り付けて居る。


居た居た!!あれぞ泥の岩でなくヒュージ・ボアだ。デカイな。横幅も相当デカイ。あれって、地下の解体場は入りきれないよな。


裏の訓練場でないと無理なサイズじゃん。


滑空モードから、泥濘んだ泥の上にフォース・フィールドの足場を出して、降りたち、高周波ブレードを出して駆け寄りジャンプして落下の勢いを利用しつつ硬い体毛に覆われた分厚い首をスパンと切断した。


ヒュージ・ボアは断末魔の悲鳴を上げる事も無くそのまま静かに絶命して果てた。


まずは血抜きもだがこの汚い泥だらけの物体を、俺のフォース・フィールドの足場の上に引き摺り上げて、クリーンで綺麗にした後、何時もの様に強制血抜きを行って、無属性の触手を使って『時空間庫』に回収したのであった。



まあデカイとは言ってもドラゴンに比べれば小振りだから全然大丈夫なのだが・・・そう言えば最後に倒したイエロー・ドラゴンまだ肉とか沢山残ったままだったな。と思い出してちょっと食べて見たくなるのであった。


流石に両親に『転生』の事まで流石に気の毒過ぎて言えないからな・・・実は自分達の息子が無い面アラフィフのオッサンだったとか、悲劇を通り過ごしてホラーだもんな。


この世界でもドラゴンに会敵する機会あれば倒して混ぜて比較しながら食うのも良いな。と暢気に考える俺だった。



目的のヒュージ・ボアを仕留めた俺は意気揚々と冒険者ギルドに寄ってガラコさんに報告をした。


「ガラコさん、ヒュージ・ボア、仕留めて来ましたよ。でも問題が在ります。解体場には入りきれないし、裏の訓練場でもギリです。どうしますか?」と直面した問題を告げると、ハッとした表情でアチャーって顔になるガラコさん。



どうやらそこまでは考えて無かったらしい。


「判った・・・そうか、そうだよな、入りきれないよな。南門の脇に臨時の解体場を作る申請をするから、ちょっとだけ何日かそのまま入れて持って居てくれ。」と言われるのであった。


結果、2日と待たずに大きな天幕を張った臨時の解体場を南門の見えにくい所に作って、そこで秘密裏に解体が行われて分解されたのであった。


一時期ヒュージ・ボアが市場に出回り騒ぎには鳴ったものの、幸い俺の仕業とはバレて無い様である。


巷の噂では、『「誰がどうやって運んだのか不明』とされていたし・・・。





ちなみにヒュージ・ボアの討伐でめでたくレベルアップを果たした。



名前:トージ

称号:(御使い)/(大賢者)

AGE:11

LEVEL:9

HP:22/22

MP:572/572

力:26

知能:25

器用:29

俊敏:24

スキル:剣術C/格闘C/投擲C/身体強化/魔装/鑑定EX(アーカイブコンタクト型)/隠密F/(隠匿)/(日本の英知)/魔力感知C/魔力操作C/錬金F(A)/並列処理D

魔法:無S/土A(S)/火A(S)/水A(S)/風A(S)/光A(S)/聖D(S)/時空C(S)/生活

※()内は魂に刻まれた才能値を表す一般には見えない



徐々に魔力特化型になって来ているが、前世に比べるとまだまだ足り無い。



今世は少々の事では枯渇しない程の魔力量になる様に頑張ろう!


ギルドの貢献度も美味しかったらしいが、金額的にも街全体がヒュージ・ボアで賑わう程の経済効果があって結果おれの懐にもそれ相応の美味しい金額が転がり込んで来た。

更に言うと自宅用に貰ったヒュージ・ボアの肉で作ったヒュージ・ボア・ステーキは蕩ける様に美味かった。


今までこの世界のと言うかママンの料理に余り触れて来なかったが、特に飯マズではないと言及しておこう。


ただ例えるとすると、素材の味を大事にすると言うか、率直に言って味気ない物が多い。確かに内陸故に塩もソコソコの値段はするが、基本的に病人食の様に低塩分の薄味で出汁などの概念は薄いのだ。


もう産まれて11年この味付けに馴染んでしまったので元の記憶無かった頃を含め強烈なショックなんかは無い。


ただ、ヒュージ・ボアのステーキの時だけは別人に生まれ変わったかの様に美味かったので思わず頬を抓った程であった。


早くこの世界の食の常識をグレードアップしないとな・・・。



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