第296話 ゲヘラー・フォン・マルローデリアン国王 その1
マルローデリアン王国の67代目国王、ゲヘラー・フォン・マルローデリアン国王はこの期に及んでまだ国境線が厳重な城壁によって封鎖された事も、前哨基地であるマ・クバーヌ砦が理由も判らずにボロボロに朽ち果てた事も信じて居なかった。
人の手でそんな事が可能なのか、未だに信じ切れずに居たのだ。
そう『自分の両目で飛行船の編隊飛行を見た』にも拘わらずである・・・。
そんな彼は自分の目でいつの間にか完成して居たと言う『隔絶の城壁』を自分の目で見に行く事を決意するのであった。
「陛下そんな最前線にお出かけされたら危のうございますれば。どうぞ、お止め下さい。」と必死で止める腹心や宰相の進言を振り切って決定してしまったのであった。
この国に於いて国王の一言は神の一言に等しいのである。『神に二言無し』なのだ。
しょうがなくマ・クバーヌ砦の先の国境までの遠征プランを超特急で練り上げる事となったのだった。
これまでゲヘラー国王の御代になって国王自身が遠征に出かける事等皆無であったので、王宮は上を下への大騒ぎである。
特急で侵攻時に近い物資や人員の準備を1ヵ月掛けずに終えたのは流石は脳筋な独裁国家たる所以だろうか。
こうして12月の1日に国王を含む遠征部隊は王都を発ったのであった。
3ヵ月の時を経て3つの都市の領軍も巻き込んで膨らんだ5000名にも及ぶ部隊の列は漸くマ・クバーヌ砦に到着し、ホッと一息付く間もなくそのまま進行して、
城壁の手前に辿り着いたのは年を越えた4月の下旬であった。
ゲヘラー国王は自分の眼前に聳え立つ城壁に思わずヘナヘナと座り込んだ。
直ぐに側近が支えようと手を出すも、振り切られて暫し呆然とするゲヘラー国王。
取り敢えず、野営の準備を始める本隊と漸く寛ぎ始める歩兵達。
しかし、1時間もしない内に城壁上空には先日王都上空で目撃されたの飛行船が1機現れ、更に城壁の上には敵であるヘイルウッド公国の兵士がズラッと並んで今や遅しと弓を構えて居並んで居る。
つまり敵はこの1時間で城壁の上に居並ぶ100人規模の兵を配備したと言う事にならる。
そして、2時間も経った頃には先日王都に現れた
そして、後に現れた飛行船から1人人が空中に飛び出してそのまま浮遊してもう1機へと入っていった。
もうこれは全く意味が判らない。何時から人は空を飛べる様になったのだろう? ざわめく兵士達に広がる不安と緊張。
もしこのまま衝突とならばビラの通りに良く無い何かで蹂躙されるのは自分らである。
しかし、先に動いたのは
「マルローデリアン王国の部隊に告ぐ。先日警告したにも拘わらず、武力を行使しようと言うのであれば、その償いは、貴国の王都を含む全都市の国民らにもそんな王をのさばらせてしまった責任を負って貰い焼け野原になって貰うがそれで良いのか?嘘と思うのであればこれを見るが良い。」と言うや否や、城壁の上に先程の空を飛んだ黒意衣装に身を包んだ不気味な仮面の男が現れて。城壁からフワリと飛び降りて地面にスッと着地した。
すると、その黒ずくめの男を中心に白い靄の様な物がモクモクと現れて地面を覆い尽くして行く。
3分もせずに、城壁の前20m位を覆い尽くした頃にその男がふっと消えたと思ったら・・・チュッッドーーーンと言う爆音と後からやって来た爆風に先程まで男が立っていた所には深さ5m程のクレーターが出来ていたのであった。
兵士の多くは混乱し、耳から血を流す者や、爆風で腹を強打して転げ廻ってのたうつ者等が多数居り、もはや戦う処か、ゲヘラー国王の護衛さえままならない状態であった。
マ・クバーヌ砦まで聞こえた爆発の後、マルローデリアン王国の部隊は即座に回れ右をして一旦マ・クバーヌ砦まで戻り、治療を済ませて動ける者のみで這々の体で王都へと逃げ帰ったのであった・・・。
■■■
さて、やっぱりまた呼ばれてしまった・・・。と心の中でボヤきつつ、マッシュと2人でフル・スロットルで城壁を目指す俺。
そう、ヘイルウッド国王陛下に泣き付かれてしまったのだ。
しょうがないので、マッシュと急行して一発大きいのを見せてやれば二度と来ないだろうと言う事にして城壁上空で王国機に乗り込んで3分程で打ち合わせを終えて、『魔王』コスで城壁の上から見せつける様にフワリと降り立ち、一発大きいのと言う事で『ミスト・バーン』をチョイスし城壁に損傷がで無い部分だけに白いミストを充填して爆発させてやった。
思った以上に衝撃波が凄かったが、城壁の上の兵は全員伏せていたので全員セーフ。
方やマルローデリアン王国軍の方は爆発の衝撃波でかなりの重体で、這々の体で帰って行ったが、これに懲りて二度とこっちに絡んで欲しくない物である。
そうそう、毎回呼ばれてもこっちも困るし・・・。今はローデル王国機と帝国機の2機の着陸灯を追加装備してて忙しいし、何気にジェシカ夫婦に生まれた男の子の名前付けまで急かされており結構大変なのである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます