第295話 大祝賀祭
当然ではあるが無事に戻って来る事が出来た。
直ぐにお暇しようと思っていたら、全力で引き留められてしまい、結局この後の軽い『完勝祝い』パアーティーに出席せざるを得ない状況となってしまった。
そもそもだが戦ったのは俺1人で他に誰も実戦をして無いのに『完勝』って使うのも変な話である。
そうは思って居ても口に出さないだけの分別は持って居るのでご安心を!
まあだからこそ、1人だけ実戦を行った俺が帰る訳にいかなかったのだけどな・・・。
そして、この日の軽い打ち上げ程度だけでは終わる訳も無く後日改めて国を上げての大祝賀祭をやる事になったらしい。
実際に戦闘すら行ってないのに、些かヤリ過ぎなんじゃ?って思って聞いてみたら、
「トージ殿、それ程の悲願だったのですぞ!?」と今にも泣きそうな勢いで両手を捕まれて切々とマルローデリアン王国に纏わる苦労話を聞かされたのだった。
で振り出しに戻るが一抜けしようとおもったら、今回の勝利の
こうして作戦終了当日の軽い打ち上げはソコソコで終わり、「1週間後に盛大にやるのでご家族もご一緒に『飛行船』でお越し下さい!」と妙に飛行船を強調されてしまった。
つまり、1機より2機の方が祭りの目玉になると言う事らしい。
まぁ~確かに客寄せパンダにはなるわな。と納得して漸く夕方前に解放して貰えたのだった。
今回、飛行船と万里の長城の建設と言う、とてもご贔屓にしてくれた『大』が付くお得意さんの意向なのでここは素直に右先方の要望を受け入れよう・・・。と帰りの1人寂しい飛行船のコントロールルームで決心するのであった。
夕闇が迫る中、必死で飛行船をフル・スロットルで飛ばして帰っていると、普段見られ無い様な素晴らしい夕焼けの景色を見る事が出来てちょっと1日の疲れが解ける様な気がした。
一応、直ぐにカメラに収めたが、是非とも家族に見せてやりたいものだ。
何とかギリギリ夕食に間に合ったが着陸と日の入りが殆ど同時位になったので、数分遅れたら着陸も危なかった。
これは証明装置的な何かを作るべきなのだろうか?
本物の飛行機には着陸灯と言う滅茶滅茶明るいライトがランディングギアに付いているが、飛行船にも、着陸箇所を照らす『着陸灯』を付けるべきだろう。
■■■
1週間後の大祝賀祭当日早朝、アリーシア、サチちゃんとガスリー君、コータ、ユーキちゃん、それに1枚も2枚も噛んで居る
フル・スロットルによる1時間のフライトをを終えてして居された駐機位置に着陸すると、満々の笑みでマッシュが操縦を教えた官僚が「ようこそいらっしゃいました。」と出迎えてくれた。
詳細は省くが、俺とマッシュは式典の舞台の上で何やらメダルを頂いて、ポカンとしてしまうのであった。
こう言う事は事前に通達しといてくれないとリアクションのしようもないのだ。
しかも、なんのこっちゃ判らないメダルの授与の後に一言!と言われてもなぁ~。
「え~、他国の者なので、如何に光栄なメダルなのか欲理解して居りませんが、ありがとうございます。ヘイルウッド公国の皆さんが平穏に暮らせる事に少しでも貢献出来たのなら幸いです。本日はこちらのマッシュ共々本当にありがとうございました。」とマッシュの分も一緒にスピーチを纏め、2人で深々と頭を垂れておいた。
何か知らんがこのスピーチで『ワーー♪」と観客席が盛り上がりちょっと逆にビビったのだった。
何かこのメダルに副賞的な効果や身分とか『義務』とかあったら、最悪暴れよう!と心に誓うのであった。
よくある『名誉市民』的な物ならセーフだが、『貴族』的な物ならアウトだ・・・。
「お父さんもマッシュ兄ちゃんも、大勢の人に拍手されて凄いの!」とサチちゃんに褒められて、先程のビビりも忘れて満更でもない俺とマッシュ。
「そ、そうか?実は何のメダルか知らないんだよな・・・。」言葉を濁す俺。
丁度お俺達を出迎えてくれた件の官僚が居たので聞いてみると、『名誉市民』的な物で特に義務等の縛りも無い単なる庶民向けの栄誉賞である事が判明してどうやら暴れる必要は無いらしいと、ホッと胸を撫で下ろしたのであった。
そうそう、忘れていたが、公国には音楽や楽器がああり、終日盛大に鳴り響いていた。
こっちの世界に来て音楽らしい音楽を聴いたのは何気に初めてかも知れない。芸術や音楽に無縁だった俺でもちょっと感動して聞き入ってしまったのだった。
午後3時を過ぎた頃、かなり引き留められたが着陸灯の改造は済んだとは言え、「日没前に帰り着きたい。」と言って、公王陛下を漸く振り切って帰途に就いたのだった。
その代わり、今度公国機にも着陸灯を追加装備すると約束して解放して貰えたのだった。
帰り道の途中に見る夕日の絶景に子供達だけで無く、アリーシアもリンダもマッシュもウットリと魅入っていたのだった。
■■■
さてお祭り騒ぎのヘイルウッド公国と対象的な通夜ムードのマルローデリアン王国の王宮では連日決戦か降伏かで割れて居た。
現実的に敵の兵器に抗う手段も無く、戦えば全滅もあり得る話である。王都民の中には今の内に王都から逃げだそうとする者もかなりの数が居たが衛兵が門を管理して居り、1人も逃がさない様に封じ込めて居た。
王都民の不満と恐怖は日々増すばかりである・・・。
マルローデリアン王国の67代目国王、ゲヘラー・フォン・マルローデリアン国王はこの国の気質通り脳筋で今まで「武力こそ全て、欲しい物は奪え」が服を着て歩いて居る様な奴であったが、
そんな奴にでも、アリンコが空のドラゴンに勝てないのは容易に理解出来ていてそれ故にここ1週間は不機嫌な日々を過ごしていたのだ。
件の城壁の所為で何世代も掛けてヘイルウッド公国に潜伏させていた諜報員との連絡も遮断されてしまい、全くヘイルウッド公国内の情勢が入って来なくなってしまった。
尤も、逆に今のヘイルウッド公国の浮かれっぷりの情報が入って来ていたら、激怒して居ただろう・・・。
幾ら連日軍議を開いても堂々巡りで一向に進まない。
結局彼の出した結論は・・・「その城壁をこの目で見てみたい。」と言う物であった。
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