第294話 雉も鳴かずば打たれまい その4
2機による編隊飛行は思わず俺も外から見て見たくなる光景だったがグッと我慢してシートに座っていると15分もせずに俺がボロボロにした件の砦に辿り着き、今も正に修復の真っ最中であった。
「トージ殿、あれは?」と聞くヘイルウッド公王陛下に、
「あれ?言いませんでしたっけ?攻撃受けた10倍返しって事で砦の城壁も全てボロボロのスカスカにしてやったんですよ。序でに食料の備蓄庫の中身もスカスカにしてやりましたけどね。それらが丁度良い時間稼ぎになってくれました。」といってニヤリと笑ってやると、
何故かヘイルウッド公王陛下の顔が強張ってに少しビビられてしまった様であった・・・。
なので勘違いされない様に「ご安心下さい。俺はそもそも平和主義者なので、敵対行為や私の身内や周囲に害を及ぼす敵には容赦しないけど、普通にしてくれれば無害なので。」とフォローをしておいた。
「なる程、これがかの『魔王』様の逆鱗に触れたって事なんじゃな。」と何やら勝手に納得した様であった。
砦の上空にたどり着くと、砦を修復して居た兵士達が上空を見上げなにやら騒いで居る。丁度良いタイミングでちょっと高度を地上50m位まで下げて平を搭乗口からバラ撒いてやると、地上の響めきが更に大きくなって居る様であった。
そして何人かがビラを手に取って、内容を読んで大騒ぎして砦の内部に駆け込んで行った。
敢えてその場に10分程停滞し、十分に姿を砦な内部に居たであろう上層部に見せつけた後、そのまま上昇して王都を目指すのであった。
実際の所、俺自身に弓矢で攻撃されたのは言う程問題にはして無いのだ。倒れにしてみれば偶々訪れた隣家の夫婦喧嘩のとばっちりで飛んで来た茶碗の流れ弾ぐらいのかんかくなのだけど、城壁工事の妨げになりそうだったので気勢を殺ぐ意味も有って反撃行動に出たのである。
驚く事にこれまで何度も攻め込まれておきながら、ヘイルウッド公王陛下曰く一度たりともマルローデリアン王国内部に侵攻と言うか反撃や追撃に出た事が無かったらしい。
なので、これが初めての『侵攻』なんだとか。まあ侵略目的じゃなく、威力偵察だからノーカウントだろうな。
つまり、何が言いたいかと言うと、敵国の地理が全く判らないのである。
唯一の資料は俺が砦の司令官室から拝借したお絵かき程度の地図らしき物だけである。
それによると、この砦に繋が街道沿いに北西方向に進んで行くと、3つの都市を経て王都に到達すると思われると言う事ぐらい。
まあ時間があれば沢山ビラを用意しても良かったが、一晩で用意出来たのは5000枚程度なので、これからの各都市にバラ撒く程の枚数は無い。
このビラ自体は完全に俺の所の持ち出し分なので、時間も無かったし、5000枚だけサービスで急遽刷った物なのである。
まあビラは虚仮威しのフレーバーみたいな物だけど、これで、本当に王城の連中の気勢を殺げれば良いのだがな。
各都市に到着すると、地上の者が上空の異変に気付き騒ぎ出すのを待ってから、出発する様にしていた為に結構な時間が掛かってしまって居る。
声には出さないけれど、正直なところ、第三者の俺としては少々飽きて来てしまった・・・。
ここに居たるまで無理な日程で工事をゴリ押しして来たので少々疲れが溜まって来たのかな。ふぁ~っとおおきな欠伸をしつつ、早めの昼飯の用意に入る事にしたのであった。
ほら、動いてないと寝そうだったし、今日の面子を見ても誰もそんな食事の事とかまで気の回りそうな奴が居ないのだから必然的に俺の役目になってしまうと言う・・・。
「大した物は在りませんが、今の内に昼食を順番に取りませんか?」と全員に声を掛けて
ヘイルウッド公王陛下にも素手でおにぎりを食べて貰って、適当に置かずを突いて貰うと、マイマイ自体を初めて食べるらしく、美味しいと大喜びされてしまったのだった。
もう1機の方だけ昼食無しは可哀想なので、俺が搭乗口から飛び出して向こうの機体に乗り込んで同じ様に昼食を振る舞うと、2人でこの機体(俺の機体)をマカされて居た官僚の2名は大喜びでパク付いていたのであった。
俺が何故この機体に進んでやって来たか?それはこの機体内ならヘイルウッド公王陛下達の目が無いので床にでも寝転がって眠れるからである。
徹夜でビラ刷りしてたぐらいなので、少しぐらいダラけても許されるだろう。
何しろ、漸く2つ目の都市上空に辿り着いたぐらいなので作戦終了までにまだまだ時間が掛かりそうなのである。
砦上空から3時間が過ぎて漸く3つ目の都市でミッションをコンプリートし各都市から伝令の早騎竜が飛び出すのも確認した。
後は最後の王都のみだ。
更に2時間が過ぎた頃前方下方に大きな城壁が見えて来た。
大きいと言ってもマッシモの城壁よりもショボいサイズで吹けば飛ぶとまでは言わないにしても、割と脆弱に見えるのは俺の目が俺の作った城壁基準になっているからだろうか?
少なくとも、 ローデル王国の旧城壁程の頑丈さはなさそうである。
城壁の手前から速度と高度を落としユックリと王都上空へと侵入して行く2機の飛行船高度50m以下なので否応なしに目に入る事だろう。
奥の中央の方にはそれなりの城が建って居るが、豪華さは無く、無骨な古城と言う感じである。
ヘイルウッド公王陛下機からの合図が有ったのでビラをバラバラと2機からバラ撒く。
地上の方ではパニック状態となった庶民達が大騒ぎして逃げ惑っている。最後に王城上空でビラをバラ撒きジワリと高度40mまで上昇した。
最後に駄目押しで王都上空をグルッと1周した後、高度100mまで上昇して、通常巡航速度で公都を目指したのであった。
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