第290話 ジョニー殿下の義父 その3
翌日再度王宮へとゲートで赴きジョニー殿下と落ち合うと、既に気の早いヘイルウッド公王陛下が先入りしてて思わず内心で苦笑してしまう。
ヘイルウッド公王陛下は国王陛下と違ってもっとドッシリと構えているイメージだったのだがどうやら見かけ以上に少年の心を持っているらしい。
「おう、トージ殿やっと現れたか!? 待ちかねたぞ!」と宣うヘイルウッド公王陛下の横で若干グッタリして居るジョニー殿下と父親を窘めるマリアーヌ妃殿下。
「それは父上・・・・公王陛下の気が早すぎるのです。朝の6の時から子供の様に来られてもこちらも迷惑ですわ。」と。
えー!?6の時って事はまだ薄暗い朝の6時くらいだよね?とおもったら、ヘイルウッド公国との時差の関係で6の時になったけど、実際は自国を出たのは4の時と言う事が判明。
そうか、そんなに時差あったのか・・・マッシュには悪い事をしたな。毎日通いはさぞキツかっただろうな。後で謝っておこう。
てか、どっちにしても来る時刻が早過ぎである。
「それは
大変お待たせしてしまい申し訳ありませんでしたね。早速納品して試運転をして頂きましょうか。」と言うとゲートが開くのを待つ競走馬の様にソワソワするヘイルウッド公王陛下。
「一応、一通り操縦の講習は行いますが、事故を起こさない為にも、先日家のマッシュとご一緒した官僚の方に帰途の操縦は任せた方が安全でしょう。」と言うとややご不満顔である。
駐機場に場所を移し、出来上がった自分の機体とご対面するとヘイルウッド公国の目が少年の様に輝いている。
やっぱり、男は幾つになっても国王陛下然り、ヘイルウッド公国の様にこう言う物にワクワク胸躍らせる物なのだろう。斯く言う俺もその1人だしな。気持ちは判る。
機体の周囲を一周して外装部分に瑕疵のない事を確認して貰って、搭乗口から内部へと入って行って各部の案内と説明をして行く。基本は何処の誰の機体も同じ様な構造の為ほぼ同じ。
単純に要望によって、部屋の用途を客室にしたり、貨物部屋にしたりの差くらいである。
「じゃあ、まずは一旦私の操縦で説明しながら軽く飛行させて、その後後退して操縦の練習をしましょうか?」と言うと、食い気味に
「ああ、それで頼むぞ!」と承諾して、サッサと飛ばせと言う無言の圧を後ろから掛けて来るのであった。
「えっと、これがメインのスイッチとなります。これをONにしてコントールユニットを起動します。
これで、機体の外装や
グッと、床に押しつけられる様なGを感じて機体がフワリと浮く。
「おお!浮いたぞ!!」と浮かれた声を上げるヘイルウッド公王陛下ガラスモニターに映し出される風景に喜びを爆発させている。
「この機体は他と違ってゴールデン・キャタピラー・シルクを使った所為か、他より動きが軽くて機敏なんですよ。なかなか良い感じです。」と一応事実を報告すると、「そうか!そうか!?」と喜んで居た。
10分ぐらい操縦しながら説明して、一旦着地しヘイルウッド公王陛下に操縦席を明け渡す。
「良いですか? ガッと動かすと事故になります、ソッと操縦桿やスロットルを動かすだけで大きく姿勢変化や速度が変わるので注意して下さい。最初は私が手を添えて動かしますので加減を学習して下さい。」と言いながら離陸させると、
「浮いた浮いた!!」と大騒ぎ。
そんな感じで15分程、おれのサポート有りの状態で慣熟飛行した後、1人で離陸から着陸まででやらせてみると、国王陛下よりも筋が良い。
「なかなか筋が良いと言っては失礼ですが、操縦のセンスが在りますね。素晴らしいです。これなら余程の事が無い限り事故を起こさないでしょう。あ!飲酒時は操縦しちゃ駄目ですよ!!『飲んだら乗るな!』です。」と飲酒運転をきつく禁止して置いた。
その後も1時間程この飛行に付き合って漸く満足してくれた様で王城に戻って、その後直ぐに解放では無く、2時間程、たわいのない世間話と言うか、俺にはほぼ関係の無いこの世界の国際情勢・・・・つまり支配者トークに付き合わされてしまい、ゲッソリとするのであった。
しかし、その話の中で先日聞いたヘイルウッド公国の隣国がちょっかいだして来るのを黙らせられないか?と問われ、
「飛行船は製造前にお約束頂いた様に軍事には利用しないで下さいね。あくまで平和利用限定で。兵器じゃないので。黙らす方法はあるけど、いっその事『万里の長城』築いた方が安全なんじゃ?」ってポロッと余計な事を言ってしまい、
「なんじゃその『万里の長城』とやらは?」とツッコまれ、誤魔化しながら国境を隔てる長い城壁を意味する物と言う事をなんとか説明したのであった・・・。
まあその所為で、余計に話が伸びてしまい昼飯をご馳走になった後、漸くお暇出来る空気になって帰って来たのであった。
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