第288話 ジョニー殿下の義父 その1

豪勢な結婚の儀から5日が過ぎた頃ジョニー殿下から電話があって今からちょっと相談もあるのでお邪魔したいと連絡を貰ったのだった。


何処かの陛下と違ってジョニー殿下の良い所はちゃんとこうして来る前に連絡を入れて都合を聞いてくれるところである。


しかし、相談事とは何ぞや?上手い嫁さんとの接し方を教えてくれ!って事は無いだろうし、新婚旅行先のお薦めとか聞かれても、俺も『あの温泉』ぐらいしか知らないからな。



やって来たジョニー殿下は何時もの様に1人では無く、奥さんとなったマリアーヌ王太子妃と更に先日顔合わせしたへイルウッド公王陛下と一緒だった。


俺は3人を応接室にご案内しつつ、慌ててマッシュを招集したのだった。


遅れて部屋に入って来たマッシュは部屋の中の面子を見ました瞬間に状況を把握したらしく若干顔が引き攣っていたのだった。


「トージ、突然尋ねて来て申し訳無いね、ちょっと2つ程相談があったんでへイルウッド公王陛下をお連れしたんだ。」と言ジョニー殿下。


嫌な予感がしたが、何だろうと思っていたら、

「先日以来じゃの。トージ殿とお呼びして良いかな? いや、先日な、ローデル王国の王都で初めて実際に『ゲートセンター』なる物を拝見し、体験させて貰ったのじゃ。あれは素晴らしいの!! あれを是非我が国にも導入したいのじゃ。そう願ったら婿殿がトージ殿の所に連れて来てくれたのじゃ。」とニコニコ顔のへイルウッド公王陛下。


「なるほど、そう言う事でしたか。じゃあ、家の商会の総支配人のこちらのマッシュと打ち合わせして頂ければ可能です。」と話をサラッとマッシュにパスする俺。


「ああ、良かった。マッシュとやら、よしなに頼むぞ!」とマッシュに挨拶をするへイルウッド公王陛下の言葉に畏まって、

「はい、金額は繋ぐ都市の数によって変化致しますので、どの規模で構築するのかをお知らせ頂ければお見積もりを致します。」と素早くビジネスモードに移行する優秀なる我が商会の総支配人マッシュ。



俺は席を中座して新しいお茶と茶菓子のシュークリームを用意して持って来てテーブルに配膳する。



活発な意見の交換で、40分程で第一段階の商談が纏まった様で、ゲートセンターの話題から談笑に切り変わったが・・・。


「そうじゃ、トージ殿、あの『飛行船』なる物を我が国も欲しいのじゃが?1機お願い出来るかの?」と今までのゲートセンターの商談は只の『口慣らし』で本題はこちらと言わんばかりに前のめりに圧を掛けて来るへイルウッド公王陛下。


ゲートセンターの時と全然トーンが違うのだ。俺はそれとなくジョニー殿下の方を見ると、目で『すまん』と言って居る様に読み取れる・・・。



「ええ、作れんな区は無いですが、ある程度必要な材料をそちらで提供して頂く必要があります。特にミスリルやケープ・スパイダー・シルク、それに白銀などですね。それに運用には『ホーラント輝石』2個が必要となりますがお持ちでしょうか?無ければその代金も更に加算となりますので、莫大な金額となりますよ。」とかなりの金額になる事を伝えると、


「うむ、大まかなそれ金額は婿殿から聞いて居る故に問題無い。ローデル王国程の歴史の無い我が国だが幸運な事にミスリルの鉱床もある故に現物支給も出来る。料金の支払いもそちらが望めばミスリルで支払う事も可能じゃぞ!?」と何とも心強いご返事。



「なる程!! ミスリルでのお支払いは素晴らしいですね。錬成前の鉱石で頂き、こちらで高純度で錬成出来るので無駄な工程が減ってありがたいですね。で、『ホーラント輝石』2個もお持ちですか?」と尋ねると1つは持って居るとの回答であった。



何だ、ヘイルウッド公国って有望じゃないか!! やるなぁ!と心の中で舌舐めずりしてニコニコ顔で「良いですね、じゃあ1個は家の在庫をご購入と言う事で宜しいでしょうか?」と確認してトントン拍子に話がきまるのであった。


この『飛行船』の一件でこんなに滑らかに話が決まるのは珍しいと思いきや、ケープ・スパイダー・シルクの現物支給だけは難しいと言う。


ヘイルウッド公国ではケープ・スパイダー・シルクでは無く、ゴールデン・キャタピラーと言う芋虫の糸で編んだゴールデン・キャタピラー・シルクが名産だそうで、ゴールデン・キャタピラー・シルクなら支給出来るらしい。


「なる程、現物の特性を試して見ないと何とも言えないですが、代用出来る可能性は有りますね。一度サンプルを頂けませんか?」とお願いすると、直ぐに手配してくれると言う事だった。。



こんな話ばかりで、退屈だろうとマリアーヌ王太子妃をチラリと見たら、正にシュークリームをガブリと行ってる最中であった。


マリアーヌ王太子妃はハッとして。上品に口の周りをハンカチで拭きつつ、

「大変美味しいお菓子ですわ。何て言うお菓子ですの?」と俺に聞いて来た。


「お口に合った様で何よりです。これはシュークリームと言うスイーツですね。こう言う物の事とお菓子では無く、一括りに『スイーツ』と呼んで居ります。他の種類もお持ちしましょうか?」聞くと目を輝かせて頷いたので、人を呼んで、新しいお茶とチーズケーキうあショートケーキ、それにフルーツタルト等qお更に盛って盛ってk自他貰ったのだった。


「トージ殿の所は魔法や魔動具だけで無く、食べ物も素晴らしいのじゃな。流石じゃ。」とヘイルウッド公王も我が家のスイーツを褒めてくれたのであった。



話はダンジョンの話に飛んで俺がダンジョン最下層まで攻略した事を告げると驚きつつ賞賛してくれたのであった。


やはり、ヘイルウッド公国にもダンジョンはあるが攻略が全く進んで居らず、希にダンジョン・ブレイクと呼ばれる所謂スタンピードを起こす事があるらしい・・・。



「ジョニー殿下、王国のダンジョンはどうなのですか?近年でダンジョン・ブレイクって起きた事あるのでしょうか?」と聞くと、


「我の知る限りではここ100年は無かったと思うぞ。まあ、年代によって、資料がいい加減な時代もあるのだがな。」と教えてくれたのであった。


ジョニー殿下御一行は3時間程滞在し、飛行船の色や内装等色々と注文をつけつつ嬉し気に帰って行ったのであった。


3人が去った後、ドッと疲れが出てグッタリする俺とマッシュであった。

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