第287話 世代交代の準備? その3
ジョニー殿下とマリアーヌ王女が顔見せにやって来てから2ヵ月が経った。
本日はいよいよ結婚の儀の当日で、王国全土がお祭り騒ぎである。
ここマッシモも例外では無く朝から街中が騒がしい。
尤も俺は結婚の儀自体に商隊を受けて居るので早朝からパリッとした服装に着替えて出かける準備をしている。
本当は俺の伴侶であるアリーシアも同席かのうなのだけど、ユーキちゃんがいるので家でお留守番になった。
そんな華やかな席に子共は連れて行けないしサチちゃん、コータも勿論お留守番。
でもそれだと俺の心が保たないので、困った時のマッシュと言う事で付いて来て貰う事になったのだった。
「マッシュ、いつもすまないねぇ~。」と俺が顔が強張って居るマッシュに話掛けると、
「まあ、それは言わないお約束でしたっけ? 本当にそういう晴れやかな場は・・・あー気が重い。」と呻くマッシュ。
「すまんって!道連れ欲しくて・・・。」と弁解する俺。
俺もマッシュも華やかな場やこう言う状況が不得手ってのは同じだな。
そんな訳でマッシュと共に王宮の件の俺専用のゲート部屋に飛んで、呼び鈴の紐を引っ張って来賓の待合室に案内されたのだった。
一応気を遣ってくれた様で、他の王侯貴族の待つ大部屋では無く専用の個室だったのは救いだった。
「こちらにて、お時間になってお呼びするまでお待ち頂けますでしょうか。」と言って案内してくれたメイドが退室し、部屋に待機していたメイドがお茶を2名分出してくれたのであった。
部屋で待っていると、ドアがノックされて、ジェシカ夫婦が、「トージ師匠!!お久でーす!」と言ってズカズカと入って来たのだった。
「あ!久し振りだったか? 確かご懐妊って聞いたけど出歩いて大丈夫なのか? ああ、皇帝陛下もご機嫌如何ですか?」と挨拶を返すと、
「トージ殿、お久し振りじゃな。お元気そうで。ジェシカの方も順調なので羽目を外し過ぎない程度で参加する様に言いつけて居ります。」嬉し気に気さくに答える皇帝陛下。
「ジェシカ殿下?妃殿下?も妊娠中はお酒類は厳禁なのでご注意を!!胎児に悪影響出るから!」とくぎを刺すと、
「それは判ってますよ、師匠。 マッシュ兄弟子もお久し振りぃ~。あ!!そうだ、マッシュ君の所って女の子のお子さん産まれたんですよね?名前は?」と目を輝かせて尋ねて来るジェシカの質問にに、ヤバって一瞬にして背筋に冷や汗が吹き出る。
「ええ、元気で可愛い女の子が生まれましたで、トージ兄ちゃんに『コハル』って名前を付けて貰いましたよ!!」と何の気無く素で返すマッシュ。
「あーー!!良いなぁ~コハルちゃんかぁ~。家も師匠に名前付けて欲しいんぁ~。」と国家を揺るがす様な事を平気で言ってガリガリと俺の平常心を削りに掛かるジェシカ。
「いや、そ、そう言うのは帝国の伝統あるルールとかあるから駄目だよ。」と俺が窘めると、
「ああ、コハルちゃん、良い名前ですね。帝国には無い響きで、流石はトージ殿ですな! 『魔王』様にお願いしようかとも考えておりましたが、トージ殿のセンスも良いですな。我が家の子も一つ案なと出して貰えると、帝国にも新しい風が吹くかも知れませんな。」と予想外に前のめりなヘンリー皇帝。
てか、俺か魔王かって・・・・どっちも俺じゃん・・・。
「いや、本当に値付けのセンスないのでそんな重要な役割はご勘弁を・・・・」と俺がタジタジになって居ると、判って居て面白そうに見てケラケラ笑うジェシカ。
「弟子差別は良く無いですよぉ~、家の子産まれたら良い名前お願いしますね!!」と言い切りやがったのだった。
ドッと疲れる待合室の攻防が20分程続いた後、漸く呼ばれて結婚の儀に参列する頃に俺は既にクタクタになってしまっていた。
厳かな王家の結婚の儀が執り行われ、今日縦巻きドリルでは無い美しく着飾った マリアーヌ王女が輝いていた。
ジョニー殿下は緊張はしているものの、流石は次期王様、それなりの貫禄と言うか風格まで携えて立派に式典を熟していた。
そして正式に国王へ下から、
「ジョニーを王太子に任命する。謹んで王太子としての任に励む様に!」と宣言されて、晴れてジョニー殿下が王太子殿下へと昇格したのであった。
これに伴いマリアーヌ王女も第一王子妃から王太子妃へと昇格である。
そして1時間に渡る儀式的な物を終えて国民へのお披露目の為にバルコニーから手を振り、王都民へのスピーチをしていた。
スピーチが終わると、王都中に響き渡る割れんばかりの拍手と歓声。
これを見てもジョニー殿下の人気の高さが覗える。
災害時に先陣を切って陣頭指揮を執って救援物資を自ら被災地に送ったりした事で国民からの信頼が厚いのだ。
俺とマッシュは先程の待合室に再度案内されて午後から始まる披露パーティまで待機となってしまったのだった。
「いやぁ~流石はジョニー殿下。国民からの人気も凄いですが、あの大勢の前での威風堂々としたタイドは素晴らしいですね。流石は王家の一員ですね。」と小声で俺にマッシュが囁きジョニー殿下を讃えて居た。
「うん、本当に凄いよな。俺には1万回人生やり直しても無理だな。本当に生まれ持ってのカリスマって物かもな。」と俺も心から同意するのだった。
俺もマッシュも自分の結婚式でさえテンパってたからな。真似出来ないのは当然だ。
そうそう、ジョニー殿下への結婚祝いだが、散々考え倦ねた結果、イェロー・ドラゴンの肉にして1ヵ月前に幸ったししておいた。
ほら、ドラゴンの肉ならこう言うパーティーの時にハッタリが効くじゃん!?
来賓の度肝を抜くと言うかこれ以上無い程の味だからね。
パーティーはビュッフェ型式だが、ドラゴンの肉料理の所には普段列で待ったりしない様な高貴な方達が列を作っているのでちょっと面白かった。
その列を見てニヤニヤしていると、今日の主人公であるマリアーヌ王太子妃がなにやら風格のあるオッサンと一緒に俺達の所へヤって来て、
「魔・・・と、トージ殿、本日はお越し頂き、誠にありがとうですわ!それに、あのドラゴンのお肉も!!! さすが魔・・・トージ殿ですわね。 ご紹介します、こちらが我が父へイルウッド公王ですわ。」といきなり紹介して来るマリアーヌ王太子妃。
「あ、失礼いたしました。」と慌てて頭を下げようとするも、直ぐに止められ、「いやいや、そのままで構わんよ、トージ殿。貴殿の武勇伝は色々と伝え聞いて居る故に。これを機会に我が娘も宜しく頼むぞ。あ、我はギルバート・フォン・ヘイルウッド2世じゃ。よろしゅうな。」と気さくに声を掛けられたのだった。
「お初にお目にかかります。オオサワ商会のトージと申します。本日は本当におめでとうございます。噂・・・碌な噂じゃ無いと思いますが、話半分ぐらいに思って頂けると幸いです。」と軽く頭を下げたのであった。
幸いな事にそれ以降も特にスピーチの強要や貴族連中のウザ絡みも無くパーティーを俺とマッシュは無事に乗り切ったのであった。
尤も、後日このジョニー殿下経由でこのヘイルウッド公王からの無茶振りが届くのであった・・・。
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