第284話 工場建設奮闘記 その2
藁半紙工場が操業開始して3ヵ月が経過する頃になると、王国全土で藁半紙は怒濤の勢いで普及して行った。
丁度良い頃合いと言う事で印刷工場を稼働させて、この国初の本格的印刷物による製本を行い、日本でお馴染みのお伽噺や童話をパクッ・・・参考にして子供向けの絵本や魔法関係の教科書、それに『マッシモ東ダンジョン記』をこの世に出した。
子供向けの本には一応教訓を込めた作品に仕上げてある。本の売り上げは絶好調で、嬉しい事に製産が追い付かない程である。
特に俺のダンジョン記は大好評中の大好評でノンフェクション(実話)なのにも関わらず、非現実的過ぎて一般的にはお伽噺的なファンタジー物と思われて居る節があった・・・。
誇張表現もも何もしていないのに全くもって納得いかない俺であった。
尤も我が家のサチちゃん達は特にこのダンジョン記を嬉し気に読んで「この78ページの此奴はどんな魔法で倒したの?」とか色々聞いて来たりページ数で聞かれては判らないと階層数を聞いたりして思い起こしつつ答えるのであった。
尤も俺も全ての魔物の戦いを覚えている訳じゃ無いので、物によってはいい加減な返事にならない様に資料を読み返してみたりしてちゃんと真面目に答えた。
きっと、自分らが第34階層以降に潜れる様になった際の予習っぽかったので、いい加減じゃ拙いと思ったからである。俺の謝った情報の所為で負傷したとかあったら、自分が許せないからね・・。
◇◇◇◇
アッと言う間の2年が過ぎて、ガスリー君は8歳、サチちゃん6歳、コータ5歳になった。
この頃になると、暗黙の了解が周知の事実となって特例を認める方向になり、正式に冒険者として登録出来る事になったのである。しかも・・・実力が認められて最初からDランクが認められてしまったのだった。
これでこれまでの34階層のリミッターが解除された訳で・・・最初の1~2階層だけおれも付き添ってはみたものの、驚く程の成長っぷりに諸手を挙げて送り出すことにしたのであった。
子供の成長を実感するのは嬉しいのだが、何となく取り残される様で少し寂しく感じてしまう俺だった。
大丈夫!俺にはまだ絶賛可愛い盛りのユーキちゃん3歳が残っているし。
しかしこの子も魔法の才に恵まれているらしく、コータの時と同じ様なペースで日々進化して来ている。
願わくば、もう少し赤ちゃんのままで居て欲しいと思ってしまうのは親のエゴだろうな・・・。
3人は毎日夕食までに帰って来るのがお約束なので夕食の食卓でその日の冒険を教えてくれるのが日課になっている。
■■■
製本方法に欠かせない、糸で綴じる為のミシン擬きを作成し、縁の部分を接v吐くさせる樹脂糊を開発した事で、日本にあった様なハードカバーの本に近い物をかなり人的工程を減らして製産出来る様になった。
更に、今までの製紙工場で使っていた原材料をうちの藁半紙工場の原材料に程良く混ぜて新開発した漂白魔動具を経て煮込む事によって、従来の藁半紙よりかなり丈夫で白い紙質にすることが出来たのであった。
紙のプレス工程の恩恵で引っ張り強度や薄さの向上したのである。
これまでは紙のノートなどは貴族や金持ちだけの物だったのが、しょみんでも購入出来る程度にまでは値段も抑えられたのは、更に大量製産が出来る様になった恩恵である。
こうした普及に伴って、一般庶民の識字率も上がり、誰もが本を愉しめる様になったのであった。
こうなると、マッシモの様な理解のある領主の領都では図書館を建設する様になり、一定の保証金を払えば身分関係無く中で様々な本を読める様になった。
そうした世間の流れの所為か街中では今までに無かった『本屋』が各都市でチラホラ見かけられる様になった。
最近不穏な事は特には無かったのだが、王宮からの面倒な無茶振りお手紙がジョニー殿下経由で俺宛に届いたくらいだろうか・・・。
手紙の主は国王陛下で、漸くすると、「何時まで保つのか不安だから何個か『ホーラント輝石』の予備が欲しいので宜しく!」って内容だった。
確かに俺は予備を魔の森で採掘して持っては居るが、そうホイホイ出て来る物じゃないのである。
俺に言えばホイホイお腹のポケットから出て来ると勘違いして無いか?と言いたくなる。
「ジョニー殿下、そうそう簡単には見つからないですよぉ~。まあ、予備は持っては居ますけど、もうちょっと見つからないとお出し出来ないかと・・・。」と俺が返事をしたら、
「希少性は十分に判ってはおる故になんとか予備を頼む。」とお願いされてしまったのだった。
暫くの間大人しかったので油断してたけど、周期的に無茶言うからなぁ~。
「一応、今は少し色々手が離れて居るので、ちょっと採掘してみますけど、お高いですよ?」と言って一応引き受けたのであった。
とは言ってももうお金は十分あるんだよね。これまででさえ使い切れない程のお金があったのに、一連の製本工場が大当たりしたお陰で倍近くまでギルドカード内の残金の数字が膨れ上がってしまって大変な事になっている程である。
まあ、どっちみち、現金で引き出すのは無理なんだけどね・・・。
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