第276話 子供らの魔物狩り@魔の森 その3
所変わって冒険者ギルドである。
子供らに取ってはつい先日、登録を断られた嫌な思いでのある場所であるが、今回は俺が後ろに控えて補助してやる事にしている。
「こんちは~!」と言いながら昼過ぎのガランとした冒険者ギルドに足を踏み入れるとズイズイと奥のゲンダさんの所までやって来て子供らを3人をズイと前に出した。
「ゲンダおじちゃん、今日は。今日は魔物の買い取りをお願いしたくて来たの。それなら年齢制限ないよね?」と言うサチちゃんに笑顔で頷くゲンダさん。
それを観て「やったー!」と喜ぶコータとガッツポーズをキメるガスリー君。
「もしかした3人で狩って来た魔物か? 流石はトージの所の子だな・・・。ホーンラビットか何かか?」と俺の方をチラリと見て聞いて来たので、首を振りニヤリと悪い笑みを浮かべる俺。
「え?」と一瞬たじろぐゲンダさんにたたみ掛けるように『時空間庫』から移し替えたマジックバッグをグイっと押しつけて、中身の魔物を説明するガスリー君とサチちゃん、そしてウンウンと頷くコータ。
魔物の名前の列挙が終わると「マジか・・・。」とボソリと呟くゲンダさん。
「ああ、本当だぞ。俺はマジックバックの提供しかして無い。全く手伝いすらしてないぞ。全部この3人が昨日今日で倒した魔の森の魔物だぞ。」と俺がトドメを刺しておいた。
暫しの沈黙の後、向こうの方で聞き耳を立てていたカウンターの受付嬢が周回遅れで驚きの声を上げていたのだった。
結果、俺仕込みの3人が倒した魔物は狩り方が良いとの事で買い取り金額の合計はギルドカードを持って無い事でやや手数料が割高だったものの、子共の小遣いとしては異例の大金を手にしたのであった。
「良いか?この金額全部を使うんじゃ無くて、次の冒険の為に1/3は貯金しておく事を勧める。理由は判るよね?」と3人に尋ねると、
「はい。賞納品等の買い換えに備える為や万が一の時の備えですね?」とガスリー君が答えたので頷いておいた。
3人で割ったとは言え、2人で1人頭
カレンさん目を回さないかな?とやや心配する俺だった。
尤もお金は一部を渡して物と手料理の食事にするつもりらしいけど、聞いただけで涙腺に来そうである・・・。
■■■
それから4日間、そもそもガスリー君メインのマンツーマンで教えるつもりだったのが、いつの間にか残りの2人(サチちゃんとコータ)・・・多少は料理出来るサチちゃんまでもが、チョコンと横に並んで習う気満々で居るのにはホッコリしてしまって駄目とは言えずに悪い事じゃないからと、そのまま教える事にしたのであった。
我が家の厨房で小さい子らが、踏み台代わりのフォース・フィールドの足場の上に立ち卵割りから練習して、最初こそ失敗続きだったものの、素コス筒成功する様になるまでに相当数の卵が犠牲になったのであった。
尤もボウルの上でやってたので、大半はリカバリーして殻を取り除きオムレツへと転用したりして皆で美味しく頂いたが・・・。
そして全員がほぼ失敗無く卵が割れる様になった頃次のステップである出汁巻き卵焼きを綺麗に作るコツを四角い卵焼き専用のフライパンを使って教え込む。
先生が良いの生徒が優秀なのか意外に4回目ぐらいで綺麗な形の出汁巻き卵焼きが作れる様になってしまうガスリー君。
「ガスリー君優秀じゃないか!魔法だけで無くて料理の才能も在るんじゃ無いか!? ここまで早く出汁巻き卵焼きが出来る様になるならオムレツとか色々レパートリーふやしてみるか?」とおれが褒めながら提案すると、嬉しそうに頬を赤くして「お願いします!」と頭を下げるガスリー君。
一方上手く出来ないコータはち言うと「ガスリー兄ちゃんスゲー!」と尊敬の眼差しでガスリー君を見上げて居る。
サチちゃんは「でしょ!?」と自分が褒められたかの様にドヤ顔をして居る。
何だろうなぁこの雰囲気は?
そして当初の目的の1品であた味噌汁は俺の好物のジャガイモと玉葱の味噌汁にした事でジャガイモの皮剥きに手間取るおぼつかない手つきの3人。
尤も指を切ってもこの魔法の在る世界なら回復魔法で瞬時に治せるから安心である。
当初初期の頃に特注して作った高価なピーラーを使わせる事も考えたのだがこの世界の子供らは、指を切りながらナイフで剥くのが基本なので敢えてナイフで剥かせているのである。
こう言う皮剥きって性格が出るよな。ガスリー君はちゃんと薄く最小限のロスで済む様に皮を剥いているけど、方や我が娘サチちゃんはかなり実が皮に分厚く残って居る。
「サチちゃん、もっとガスリー君の様に実を皮に付けない様に薄く剥く事。 あ、コータはユックリ焦らずに行け。」と三者三様に言葉を掛ける。
そしてタップリと時間を掛けてジャガイモの皮を剥いた後、玉葱を切る訳だけど、全員涙を流しながら可愛く頑張っていたのだった。
ちなみに、この異世界の玉葱も元の世界同様に涙が出る成分が在るみたいなんだよね。
そして材料を切り終わったら出汁を取ってジャガイモと玉葱を入れて煮込んで灰汁を取って味噌を溶いたら完成である。
3人は初めて自分らで作った味噌汁に大感動であった。
いや俺もサチちゃんとコータの作った味噌汁を飲めて密かに大感激してたんだけどな・・・。
「3人共滅茶滅茶美味いぞ!!」とコータの不揃いなジャガイモを味わいつつ褒める俺。
あとは魚の焼き方を適当に教えて一応当初の基本メニューは完了である。
ガスリー君、今回初めて作った料理の出来映えの結果で料理に目覚め、「もっと色々教えてください!」と懇願されたのであった。
「判った。じゃあ次は夕食用のメニューで何品か作れる様になろうか。オムレツ、オムライス辺り行くか!?」と次の講習内容が軽く決定したのであった。
メニューが似てるって?それは言いっこなしで!
あ!!そうそう、出来上がった今回のメニューは勿論、アリーシアにも食べさせてあげたよ!!
2人に取って初めての子共の作ったセットメニューだったからね。独り占めにはして無いよ!
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