第273話 月日の移り変わり その4
魔装があるからと、これまでも全く鎧等の基本装備を渡さずに居た事に今更ながらに気付いてちょっと失敗したなと反省した。
とは言え、マッシモ近郊の森近辺なら魔装だけでも十分過ぎる過剰防御状態なのだけどね。
そんな訳で子供用の既製品の少ないマッシモではなく王都の防具屋へと3人を連れて行く事にしたのだった。
「今更だが、これからもっと骨のある魔物の居る森への魔物討伐をさせるに際して少しお前達の装備を揃えようと思う。」と子供達3人を前にして宣言をすると『骨のある魔物』のフレーズ敏感に反応して無邪気に喜ぶ3人。
そんな微笑ましい雰囲気の中、3人を連れて王都の旧屋敷へと屋って来て王都の街並みや屋台をキャッキャと楽しみつつ防具屋へと向かうのであった。
王都の名店と言われるゴッシュ防具店に到着して店内に入るとドワーフの店主ゴッシュさんが、「いらっしゃい、これは可愛いお客さん達だな。」と出迎えてくれた。
「こんちは。今日はこの子らの防具を購入したくて来ました。軽くて、丈夫な皮鎧を3人分お願いします。」と口火を切ると。
「ほう、予算は?」と聞き返して来た。
「特に予算の制限は無いけど、まだまだ成長期だし過剰に豪華である必要は無いかな。やっぱり、オーガの皮やリザード・マンの皮鎧だろうか?」と俺が意見を求めると、
「そうさなぁ~お薦めはオーガになるな。先日オーガもリザード・マンの皮も入手したし、今ならどっちでも作れるな。生憎吊るしの物はその子供用サイズは無いぞ。どっちにしてもオーダーメイドになるな。」と答えてくれた。
「そうか、子供用はそうだよな。了解じゃあ3人分作ってくれ。お薦めはどっちの皮かな? オーガかな?」と俺が返すと、「そうだな、贅沢にはなるがオーガが一推しだ。ただ、これくらの子供の鎧なんざ、お遊び邸度なら、オークの皮でも十分なんだけどな・・・。」と暗にオーガは贅沢品だぞ?正気か?って事を臭わせられたが、結局オーガの皮鎧一式を作る事にして貰った。
子供らのサイズを測ってメモを取って半金を支払って出来上がりは1週間後と言う事であった。
ゴッシュ防具店を出る時には3人共に自分の特注鎧が作って貰える事に大喜びではしゃぎまくっていた。
それからナイフ等の副装備品等を武器屋を廻って買い集めある程度の形になる様に揃えたのであった。
子供の玩具やランドセルをを買う様に武器や防具を買い与えているのが自分自身ちょっと不思議と言うか悪い事をしている感覚になるのだが、日本で言う端午の節句の鎧兜と同じ様な物だと思う様にして無理矢理納得しておく事にしたのであった。
武器等を与えられてゲーム機を買って貰ったかの様にははしゃがられるって・・・何か不憫な気になるな・・・。
それから、皮鎧が完成するまでの1週間、子供らが毎日五月蠅い事五月蠅い事。
どうやら待ち遠しくて仕方が無いらしい。
そんなある日、ガスリー君のお母さんであるカレンさんから連絡があり、
「すみません、ガスリーから聞いたら何やら高価な防具等を買って頂いたとかで、本当に頂いても宜しいのでしょうか?大した金額はお支払い出来ませんが、多少でも私の方からお支払い致しますが?」と恐縮した電話が掛かって来たのであっった。
「ああ、何時も家の子と一緒に遊んで面倒を見て貰っているし、2人分も3人分も似た様な物ですから。逆にこちらこそ気を遣わせてしまって申し訳無いです。」と答えるものの、スッキリしない様子だったので、代わりにユーキちゃん用のお人形さんを作って頂く事を条件にして了承して貰ったのだった。
斯くして1週間後の鎧が出来上がる日にガスリー君が我が家に来る時にカレンさんから預かったユーキちゃん用のお人形さんを持参して来てくれたのだった。
1週間振りに王都のゴッシュ防具店に行くとニヤリと微笑むゴッシュさんが俺達4人を待ち受けていた。
「いらっしゃい!! 出来てるよ!!」と言って店の中に俺達を引き入れ、子供らにテキパキと鎧や籠手や膝当て等を装着してサイズ等の微調節を行って行く。
中でもコータ用は身体のパーツが小さい分一番大変だったらしく、装着時の位置合わせに一番時間が掛かっていた。
何だかんだで微調整に1時間掛かり、漸く全員がフル装備になって、いっちょ前のミニ冒険者が出来上がったのであった。
馬子にも衣装じゃないが、結構3人共にカッコ良い。
「良いね!!良いね!!バッチリじゃん。流石はプロの技だね!!ありがとう、ゴッシュさん。」と俺が褒めると、ゴッシュさんは「あたりめぇ~だよ。こちとらこれで飯食ってるんだからな!」と満更でも無い表情で応えたのであった。
そして子供達も俺に吊られる様に、「ゴッシュさん、作ってくれてありがとうございました。」と頭を下げてお礼を言うのであった。
「ああ、礼を言うなら俺よりも買ってくれた人にお礼を言わんなきゃな!」と言って、ああ、そうだったと言う感じで、
3人が勢い良く俺に向かって頭を下げて「ありがとう」を告げて来たのだった。
「ああ、良いよ。寧ろもっと早く作ってやるべきだったからな。一応全員魔法系ではあるが魔装以外の防御もあった方が安心だからな。サイズが合わなくなったらゴッシュさんに相談しに行くと良い。作り変えの歳は俺に言ってな!」と遠回しにアフターサポート宜しくな!とゴッシュさんに振るのであった。
さあ、準備は整った。いよいよ俺の古巣である『魔の森』に子供らを連れて行く段階になったのであった・・・。
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