第271話 月日の移り変わり その2

コータの初魔物狩りも無事に終わって自宅に良いムードで帰って来たが、コータはサチちゃんとガスリー君が使っていた『高周波ブレード』を自分だけが使えない事がご不満の様子で、


「お父さん!僕もサチ姉ちゃんとガスリー兄ちゃんが使ってたブーーンって言う魔法の剣を使える様になりたい!!教えて欲しいです。」と懇願されてしまった。


そう言われると悪い気はしないのだが、あの2人もやっていた様に、その前に木剣で剣の使い方の訓練が必要となる。


その事を伝えると、それでもヤル気を漲らせているので、身体のサイズに合った木剣を作って渡し、以前に本職の騎士から習った剣技の基本の型を伝授して素振りを手解きしたのであった。


ほら、俺の剣技って元々自己流のデタラメを身体能力の高さと魔法による強化で無理矢理形にしただけだったから、子供らに教える前にコッソリ王都で近衛騎士団長に習ったんだよね。


やっぱ、子供らの前で良い恰好したいし・・・。



だから家の子らの剣技は全て俺が習った近衛騎士団長の受け売りって訳だ。



こんなヘッポコ剣士の俺でも剣の型をキチッと随所をキチンと止めてブレずに振り抜くとそれなりに格好良く見えるんだよね。


現実の戦闘担ったら結局『黒竜丸』の斬れ味による力技になっちゃうけど、でもちゃんと刃を立てられる様にはなったと思う。


カッコ付けて藁の束とか居合いの様に斬ったりしてるけど、最近はスパンと綺麗に藁が潰れる事無く斬れているからね。


きっと無駄では無いと思う。


兎に角コータが真っ先に気を付けて身に付けるべきは、剣を放さず、自分を自分の剣で傷付けない事だろうな。まだ回復魔法も教えて無いし。


ああ!そうだよ、回復魔法教えて無かったんだよ・・・、ああまたあの『人体の仕組みについて』を手書きしなきゃだ。


いい加減印刷技術を確立しないとやってられんな。


文字は活版印刷で作るのは何となく出来ると思うんだけど、『人体の仕組みについて』とかの場合図が入るからなぁ~。活版印刷よりガリ版刷りの法が良いか。


あのペナペでインクを通す様なフィルターみたいな用紙ってどうやって作る? それよりシルク印刷の方が良いか?


あの蒸着の仕組みで上手くシルク印刷擬きを作れるんじゃないかな?



と言う事で手書きが面倒って発端でシルク印刷擬きを頑張って作ってみた。



ただ結局シルク印刷の原盤を作るのに1回書く事は書いたのだけど、細かいイラストを何度も書き写す寄りは全然マシであったとだけは断言しておこう。


小冊子とは言え、全裏表在りの10ページなので結構大変だった。


今回インクに少し粘り気を出し為にちょっとオイルを混ぜて粘度を上げたりして細かい創意工夫を繰り返したのであった。



結果、コータの剣の修行を見ながら、2週間程で『人体の仕組みについて』の小冊子の印刷大量製本に成功したのだった。



コータには「魔物を斬るにしろ、何にせよ人間や生き物の身体の仕組みを知る方が効率が良いし、最悪自分や仲間が負傷した際に救う事も出来る。

剣だけで無く、この先のお前の人生に役に立つし、サチちゃんとガスリー君の2人もちゃんと学んだからこそ、今の状態になったんだかな?」と言って、

摺り上がったばかりでインクの匂いのする『人体の仕組みについて』の冊子を使って人体の仕組み、細胞や神経やDNAについて等を教え込むと、


「お父さん、凄いです!! 流石です!」と尊敬の熱い視線を向けられるのであった。


うむ。本当に凄いのは俺で無く元の世界のその道の偉人達なんだがな・・・。



そんなこんなで俺の身体の傷を治させると言う若干トラウマ物の荒修行を何度となく行い、コータもちゃんとに回復魔法を使える様になったのであった。


コータが魔法の天才児で本当に助かったよ。 お陰で痛い思いをする日数は5日間も無かったし。

「コータ、一応これで回復魔法は習得出来た訳だが、良いか!? 自分が負傷した場合、強烈な痛みを感じて居ると何時もの様に魔法が発動出来なかったり、焦って効果が完璧じゃなかったりって言う事も在る。良いかどんな時でも焦ったら駄目だ。痛くて血が出て気を失いそうな時でも、深呼吸して3秒待って気を落ち着けて回復魔法を掛けなさい。そうすれば大丈夫。」とアドバイスをしておいた。

「はいっ!お父さん!」と元気良く手を挙げて返事をしていたが、イザその場になるとそうははかなか落ち着けないだろうな。


俺なんて自分の血に弱いから割とダメダメなんだよね。自傷行為して回復魔法掛けてって訓練で何度ヘロヘロになった事か・・・。


本当は俺も余り偉そうな事が言えないのである。


実際訓練で自分で刺した傷以外に傷らしい傷を魔物相手で被弾した事が無いからな・・・。




おっと話が逸れたがこれらのプロセスを経て漸く満を持してコータに『高周波ブレード』を教えてマッシモの場外の岩場に連れて行って試し斬りの訓練をさせたのであった。


やっぱり、子供の頭は柔らかいんだね。普通大人なら岩は斬れないって先入観で失敗してもおかしくないのだが、初っ端からスパスパ豆腐を切る様に岩を切り裂いて居たよ。



流石は我が子!!


尤もこの岩場の真っ二つの岩の怪奇現象の噂が後日マッシモの冒険者ギルド内で囁かれており、思わず挙動不審になる俺だった・・・。




■■■


さて話は変わって、王国の魔法師団の再編について触れておこう。



俺によって全滅させられた前魔法師団の生き残りは皆無なので、新規に魔法学校のグレード6の卒業生を中心に再編が行われている。


現状で全魔法師団約100名は少なからず俺の孫弟子ぐらいになるので、皆俺には一目置いてくれている様である。


王宮(ジョニー殿下経由)から熱烈な魔法師団長のオファーは頂いていたのだが丁寧にお断りしている。


更に家の子(三期生)に魔法師団長のオファーも来て居た様だが俺同様にお断りしたらしい。


結局のところ、国内の最高魔法戦力と言うと俺の所の子供達って事になるのだろうが、今現在も魔法学校で研鑽を積んでいる生徒達がその内王国の魔法文化を盛り立ててくれるだろう。


そうそう、ラフティが漸く結婚し、旦那共々マッシモに在住して旧ジェシカ邸を頂いて新婚生活を送って居るが、相変わらずの忙しさでヘロヘロになって居る様だ。


家からも子供達を講師として派遣しているんだし、持ち堪えて貰わないとな・・・。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る