第269話 指名依頼のアフターサービス その2
さて、更に5日間アフターサービスで魔の森を駆け回って居たが未だにオーガに出会うことも無く空振りである。
しかし、その分間引きと言う点では大きく進展したんじゃ無いかと思う。
ここまで時間を割いて見つからないのだから許して欲しい。
まあ単に自分が納得すれば誰も文句を言わないのだけどな。
今日もし見つからなかったら終わりにしようと思い朝から最後の巡回に入っているが、特に変化無しである。
最後の最後に元々目撃報告の在った街道脇のポイントを見て終わりにしようと足を運んで上空から隠密を解いて地上に降りる。
この方が自分を囮に使えるだろうと言う判断である。
元々オーガはこの魔の森に於いて割と頂点に近い捕食者側の種である。
なので、我が物顔で強者としての振る舞いが多く、俺にとっては好都合だったのだが、魔の森に住んで居る頃は食う気がない魔物だったので殆ど必要時以外狩った事はない。
だって、あんな硬そうな人型の肉は気分的に食えないし。
幾ら『女神の英知』が可食と言ってもね・・・。
は無しが逸れたが、そんな捕食者のピラミッドの頂点に居るオーガが、竜車を襲おうとした時の様に俺と言う美味しそうな人間に興味を示さない訳が無いと思ったわけだ。
これで駄目なら諦めるしかない。
街道の脇に椅子とテーブルを作って、その横で態とらしく、先日作った焼き鳥を火で炙ってタレの焦げる良い匂いを辺りに拡散させておびき寄せようと言う作戦である。
願わくば他の関係無い魔物がホイホイされない事を祈りつつ、2時間程只管焼き鳥を焼き直して匂いをバラ撒き続けた。
すると俺の気配察知が大型の気配が接近して来ている事を知らせて来た。
大きさ的にはオーガのそれと同じ位である。
思わず先手を打って動きそうになる心をグッと落ち着けて平然と気付いて無い振りをして、次の焼き鳥を焼きに入る。
奴だ!!!向こうの木の陰から此方を物欲しそうに窺ってガサリと音を立てて居る。
どうやら、奴はハンターとしては経験が浅い様だ。
もしかすると若い個体なのかも知れない。
だとすると申し訳無いがこれ以上の経験はもう積めなくなるな。
バキッと地面の枝を踏み折る音をさせながら棍棒を振りかざし「グガーー!」と吠えながら突進して来るオーガと一瞬目が合ったが、その時には俺の放ったストーン・ブリッドの礫が眉間をザシュと貫通した後であった。
オーガは俺に届く事すら無く、3m程手前にバタンと前のめりに倒れ伏せたのであった。
結局若い個体故に先輩の個体から習った
まあ自分自身で創意工夫をしなかった時点で此奴の命運は尽きたって事だろう。
血抜きを住ませて回収すると、漸く全ての任務を果たしたと言う自負と言うか達成感に安心仕切った溜息をフゥ~と一つ付くのであった。
今回の指名依頼だが、買い取りの価格はかなりの高額になったものの、単純な指名依頼料金自体は金貨50枚(50万ギリー)とSランクの冒険者への依頼としては非常に安かった。
ハッキリ言うと、フォレスト・ウルフやオーガ素材の買い取り価格の方が高かった位である。トータルすると今回の最後のオーガまで入れて概ね大金貨7枚(七百万ギリー)と言った感じである。
まあ、俺以外でもここ魔の森に来られる様な冒険者が増えてくれないとな!!
何時までも俺しか出来ないかあ先が不安だから・・・。
ヤル事やったので、最後に胸を張って冒険者ギルドのゲンダさんの元へと報告とオーガやその他の間引きした魔物の素材提出にやって来た。
「ラルゴさん!!!スッキリしなかったから逃げた最後の1匹のオーガ見つけて
「おー!トージ、
そしてそれらが入ったマジックバッグをトンとカウンターの上に置いたのであった。
■■■
そうそう、例の一際大きく立派だったフォレスト・ウルフのボスの毛皮だが、鞣しまで終わった状態で俺が持って帰るとコータが「フワフワ ~♪」と歓声を上げて喜んだのでコータの部屋のラグとなってしまった。
これから秋に掛けて気温が下がるのでモフモフは暖かいかも知れない。
そう、温かいで思い出したが、この世界での防寒具に毛皮のコート等はあるのだが、ダウンのコートやジェケットと言う物が無い。
先日ラルゴさんに会った際にダウンのコートやジャンパーを提案したら目を輝かせていたので近々に新製品が出るかも知れない。
羽毛は食用の卵を産んでくれててる鶏擬きの物の食用に潰した分のを使えば良いので無駄が無いと言っていた。
どんな物が出来るのか試作が終わったら声を掛けてくれるそうなので非常に楽しみである。
もし今年も去年の冬の様に寒ければ、バカ売れ間違い無いだろう。
しかし、異常気象と言うか、程度問題歯在るけど四季があるのは俺の様な元日本人にとってはちょっと嬉しいかも知れないな・・・。
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