第267話 指名依頼 その3

取り敢えず、オーガは片付いた。

ちょっと深くまで逃げたオーガを追いかけた為に、余計なゴブリンの群を発見してしまって気分が滅入ってしまった。


先に説明すると、ここ魔の森に済むゴブリンは他の地のゴブリンと同様に考え舐めて対峙すると痛い目に遭ってしまう事を保証する。


この魑魅魍魎の跋扈する魔の森に生息し、生き残って居る弱小なゴブリンが只のゴブリンと同等な筈が無いのである。


勿論、俺にしてみればちょっと鬱陶しいぐらいのゴブリンだが、これが魔の森から追い出されて街道付近に溢れると、非常にヤバイ。


体格からして其処らのゴブリンよりも筋肉質で一回りはデカくて厳つい。


更に言うと、ノーマルゴブリンよりも強くなった所為か、体臭も1.5倍くらいキツいのだ。



魔の森に居る頃はこぶりんと言えば『これ』だったので出来る限り避けて居たのだがな。


此奴、匂いで存在を誇示するから、直ぐに判るんだよな。


どうしよう? 余計な物を見ちゃったよ。ソッと蓋を閉じたい所だけど、そうも行かんよね?


どの位の強さか判り難いと思うけど、3匹でノーマルの7匹分位?


そんなのが20匹も居ると、Bランクパーティー程度直ぐに全滅する事は間違い無い。


そんなのが跡を着けると30匹ぐらいの集落を作っていたし。


気は乗らないけど・・・仕方無いしヤルか。と腹を括るのであった。


ヤルのは良いんだが後始末が最大の問題なのだよ。

穴掘って燃やして埋めるとしても、その臭い物を焼いた匂いが身体に移りそうだしさ。


子供らから避けられちゃうじゃん?



等とブツブツ頭の中でぼやきつつも地上10mぐらいにフォース・フィールドの足場を作って魔弾でパカパカと狙撃しまくり殺戮を繰り返したのであった。


この魔弾は本当に優秀である。


接近戦の様に返り血を浴びる事はまずないし、距離を置く事も可能なので反撃すら無くワンサイドゲームなのだ。


全部を撃ち殺した後、一番の大仕事である後掃除である。


大穴を集落のど真ん中に空けて、直接触りたく無いので無属性の触手でゴブの亡骸を掻き集めて廻って穴に放り込む。


仕上げにゴブ共の小屋を破壊して焚き付けの燃料代わりにぶっ込んでファイヤーボール!ファイヤーボール!!!とぶっ込んで、チュッドーン♪と小気味良い爆発音と共に火の粉が舞う。


おっと、ヤバイ!!! 慌てて燃え移った所を水魔法で消火。余計な仕事を増やしちゃったよ。


現在、モクモクと悪臭を伴う白い煙が上がって居るので全力で風魔法の気密シールドを展開して内部の空気を清浄中。


お!! ゴブの焼ける匂いに釣られたのか、ちょっと離れた所に活発な集団の気配を察知した。


これはまさかの『ゴブでフォレスト・ウルフを釣る』って奴か?


おれはソッと気配を消しつつ、光学迷彩も展開して、完全に居ない者と化した。


よし、まずはソッと火を消しつつゴブの焼いた匂いを群の方へ風魔法で流そう。



どうやら焼いた匂いが奴らには美味そうに思えたらしく、徐々に警戒しながら団体さんが近付いて来る。


アホだなぁ~と思うものの、声を出して笑ったりはしない。


まあ発酵食品だって匂いキツイからな。好み次第だ・・・。


もう火は完全に鎮火させてて食べ頃にしてあるので早く来ないかとワクワクして待っているのだが、なかなかに用心深い。


斥候のフォレスト・ウルフが2匹やって来てクンクンと焼けたゴブの匂いを嗅いで嬉しそうに一鳴き「ウォーーン♪」と仲間に報告すると、

ボスが最初に食う為なのか、ジッと涎を垂らしながら穴の横で待って居る。偉いじゃん!どうやら『待て』が出来る子らしい。



お待ちかね、フォレスト・ウルフの集団がやって来たのだった。


1、2、3、3、4と心のんかで数えると、途中で動くので難しいが50匹ぐらいは有に越える感じである。



やはり、報告なんてそんな物である。

正直、こんな集団から逃げられた?生還出来ただけでも大した物である。


これは全部逃さずにヤリたいな・・・。



群の中で一際大きな個体がボスらしく、がウッ!と言いながらゴブの肉に食らい付き、引っ張り出して振り回して引きちぎった。


自分は口の中の物を食いつつ、配下にその振り回して引きちぎった物を与えて「ガウークン」と許可を出すとみんながガウガウと食い付いている。



よし!!今だとばかりに此奴らを覆う様に、ストーン・ウォールをドーム状に展開した。


空気穴無しで食うのに夢中になって居た奴らは完全に出遅れてしまい、ドームの中に捕らわれてしまったのだ。ざまぁ~。


そして、内部の酸素を抜いてを一気に二酸化炭素を充満させた。これ以上良い綺麗な殺し方は無いんじゃ無かろうか?


ここまでドームを展開開始してから10秒ぐらいの早業である。


ドーム内部の反応が急激に消えて行き。とうとう全ての気配が消えたのだった。


一応念の為5分程そのままにしてからドームを解除するると、バタリと倒れたフォレスト・ウルフの群の中、一瞬生きているのかと思う程にシャンと4本足で立って不動の状態のボスがいた。


まるで弁慶の最後の様だな・・・。


「悪く思わないでくれよ。弱肉強食の世界だし。」と声を掛けてから群の全員を『時空間庫』に回収するのであった。


そして、その後、一度は鎮火させたゴブの亡骸を完全に燃やして灰にしたのだった。


最後に土を掛けて終わりである。


1匹だけサンプルで持って帰ろうかとも思ったが、『時空間庫』に入れるのも嫌だったので一応カメラで写真だけ撮っておいたのだった。



さあ、これで、依頼分は全部終了である。


あのボスの毛皮は俺が貰って部屋に飾ろうかな。真っ白でなかなかに綺麗だったし。と思いながら一旦魔の森の小屋に寄ってゴブの匂いが付いて ないか、風呂に入ってから自宅へと戻るのであった。



自宅に戻ると、コータがホバー移動で飛び込んで来て頭が鳩尾に入ってオフッっと唸ってしまうのであった。



コータ日増しに激しくなって行くな・・・。


ちゃんと人を見て加減しているので良いけど、俺には遠慮会釈無しである。


気を抜いて居る時に食らうと、結構ダメージがあったりするが、流石に我が子相手に魔装を展開する訳にも行かず、グッと堪えるのであった。


サチちゃんの時には無かった展開である。ここら辺が男の子と女の子の差かなぁ? 個人差があって面白いな。

さてユーキちゃんはどんな風に育つのやら・・・楽しみである。



 ◇◇◇◇


翌朝、冒険者ギルドに赴いて、


「こんちは~。指名依頼やって来ましたぁ~。過小報告だったよ。オーガは5匹、1匹逃げたけど。そして、フォレスト・ウルフは全部で78匹だったぞ!!」と少し語気を強めて言うと、冒険者ギルドの中に響めきが沸き起こった。


「お!トージ、と言う事はってくれたんだよな?」と少し焦った様に食い気味に尋ねて来るゲンダさん。


「ああ、ったよ! オーガは1匹だけ逃がしたけど残りはバッチリだ。それにちょっとシャレにならないゴブリンが30匹居てな。その集落も潰しといた。」と言いながら写真の画像を見せたのだった。


「これ、ノーマルのゴブリンの1.5倍位強いんだよ。魔の森に生息して生き残って居るゴブリンの集団ってだけで察してくれるとあるがたい。 兎に角奴ら、臭くてな・・・。全部燃やして来た。」と顔を顰めながら報告し、オーガとフォレスト・ウルフの入ったマジックバッグをゲンダさんに渡したのであった。


「あ!そうだ。フォレスト・ウルフのボスの毛皮だけ俺が貰うわ。後は買い取りで宜しく!」と言って冒険者ギルドを後にするのであった。







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