第258話 久々のライフ・ワークへの復帰 その3

さあ93階層である。


93階層は森林ステージで、これまでの森林ステージの非でない広大な階層となっており、俺の大嫌いな昆虫系のオンパレードで開始早々ゲッソリとしてしまった。

特に目印となる物も無く永遠と続く木々が実に邪魔で、一定方向に歩くのが困難であった。


自動マップと魔力の流れの察知で漸くマトモに下層への階段へと迎える感じである。かと言ってそれに意識を集中すると魔物共が木々の上や地面から攻撃して来るし、

全く油断出来ない。


結局この93階層をクリアするのに2日を要し、1日休日を挟んで94階層へと向かった。


94階層は洞窟型迷路フィールドで、通常の洞窟型の様に壁が自然発酵して無い為に非常に視界の悪いフィールドだ。


ここではタイド・キャタピラーと言う糸で雁字搦めにして捕食する巨大な芋虫やリザードマン・ソルジャーと言う2足歩行のトカゲ人間?がメインである。


洞窟自体は通路も広く、特に剣や刀を振り回しても壁や天井に支える事はないので気持ち良く『黒竜丸』が活躍出来た。


こう言う迷路型こそ、自動マップの本領発揮する絶好の場である。 総延長こそ長かったものの、罠を全て回避して1日半でクリアしたのだった。




こうして、1週間で98階層までクリアし、いよいよ99階層に到着したのだった。


階段を降りると、真っ赤な溶岩が血管の様な水路?を流れるフィールドになっており、階段の通路から続く一本道を歩いて行くと、時々その真っ赤な溶岩の水路からマグマ・フロッグが真っ赤な溶岩を飛ばして攻撃仕掛けて来たが、魔装と風魔法のシールドで弾き飛ばした。


俺はこの一本道をホバー移動を使って浮いた状態で高速磯道してしまって殆どの魔物をスルーしてやったのだった。


なにも旨味の無い魔物の攻撃に付き合ってやる必要も無かろう。


そして、突き当たりにあった下層への階段の入り口に飛び込むのであった。



さあ、階段を降りるといよいよ待ちに待った100階層である。


階段を降りると、薄紫色に壁が自然発光する12畳程のホールに辿り着いて、そこの真ん中には正立方体の薄紫の宝石の様な物が頂点を中心にクルクルとユックリ廻って居る。

するとそれを見た瞬間に俺の中の『女神の英知』が反応しこれが『ダンジョン・コア』である事を告げて来た。


床には紫色の線が発光しておりその線がガンジョン・コアにエネルギーを供給しているかの様にドクンドクンと光を強弱させながら脈打っている。



それと同時に、これを取ってしまうと、ダンジョンが死ぬ事も同時に理解してしまった。


ダンジョンを殺してしまえばスタンピードに怯える事は無くなるが、ダンジョンから得られる数々の資源も無くなってしまうのである。


ある意味国の資源を減らす事になってしまうのだ。俺1人で判断出来る事でも無く、これだけ魔石に頼った文明を築いていうて、ダンジョンを殺すのは地球で言えば油田を放棄するのに等しい行為だろう。



そして更にその奥には玉座の様な豪華な装飾の金の椅子が置いてあったが、不気味だったので座らずにソッとそして置いた。


なんか、座ったら最後、ガシャンガシャンと腕や足を拘束されて一生ここに縛り付けられそうな悪寒がしたので、避けたのだ。


こんな所に捕らわれて帰れなくなったら死んでも死に切れんからな。


そしてその玉座の横に金箱の宝箱が在ったのでそちらの方はありがたく中身を頂いて帰る事にした。


このマッシモ東ダンジョン最後の金箱の中身は真っ赤な色の宝石で無い何か・・・『マギ鉱石の結晶』と言う物であった。


何に使える物か判らんが帰ってからユックリ調べるとしよう。


何にしても大事な事は、この世界で初めてダンジョンの最下層を知った人間になったと言う事だ。


今夜はみんなと祝おう・・・。



■■■


何時もより早い午後3時に帰宅すると、コータがホバー移動でピューッと俺のお腹に突っ込んで来てガシッと受け止めたのだった。

「とーたん、おきゃーり!」と何時もより早い期間に超ご機嫌である。


俺はコータを肩車しつつ、アリーシアとユーキちゃんの居るアリーシアの部屋に行き、


「ただいま!アリーシア、ついにやったよ!!!マッシモ東ダンジョン最下層まで到達したよ!!! 制覇したよ!」と興奮気味に報告すると、


「とーじさん、凄いわ! 偉業じゃないですか!! どんな風になってたんですか? 良いなぁ~私も一緒に見たかったですわ。」と漏らしていた。


「うん、後で説明するけど、特にきけんじゃないから連れて行ってあげるけどどうする?」と言って結局論より証拠と言う事でユーキちゃんを抱っこしたアリーシアと俺の肩の上のコータを連れて

ダンジョンのコアルームへとゲートで向かうのであった。



その後、帰って来たサチちゃんとガスリー君も序でに同じ様にダンジョンのコアルームへ連れて行くとサチちゃんがダンジョンアタックしたいと言い出すので宥めるのに少々手を焼いたのだった。


その日の晩ご飯は子供らにも報告して内々で軽く祝ったが、後日改めて祝賀パーティーを開く事にしたのであった。


これで俺のライフ・ワークの一つが無くなってしまったのは少し寂しいが、ダンジョンはまだ他にもあるので当面は愉しめるだろうし、今回手に入れた『マギ鉱石の結晶』の調査もあるし、寂しく思う必要は無いだろう。

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