第257話 久々のライフ・ワークへの復帰 その2

一晩明けて翌日は第92階層である。


階段を降りて通路を抜けると、目の前に大きな古城とそれを守る様に城壁があって人間が城壁の上を巡回して居る。


少し城壁に近付いてみると、人間では無く、バンパイアである事がわかった。


ちょっと良く判らないのだが、これはもしかするとバンパイアの城に攻め込めと言う事なのか?


件の自動マップを出して見ると、緑の丸が目の前の古城を指している。

話通じる相手なら良いんだがな・・・。


と思いながら城壁を眺めつつどうやって中にはいるかを考えて居ると、「ピーー♪」と言う警報の笛の音が鳴り響いた。


「人間だーー!! 卑劣な人間がやって来たぞ!!!まだこれ以上我らの安寧を脅かすと言うのか!!守るぞーー!」と言う掛け声がこっちにまで聞こえて来る。


ちょっと待て!俺達が何度もせめて非道な事でもして居るかの様な言いっぷりだが、恐らく歴史上ここまで辿り着いたのは俺が初めてだと思うのだが?


tえか、此奴ら言葉通じるのか?と気付いて「おーい!こっちに攻撃の意思はないぞーー!ただ下層への階段を使いたいだけだぞーー!」と大声で呼び掛けてみたのだが、聞こえた様子は無い。


「構え!撃てー!!」と言う号令と共に一斉に数百と言う弓矢の矢が俺に向かって飛んで来た。


「あ、これはアカン。」と咄嗟に魔装と風の防御シールドをマシマシで展開し、駄目元で再度呼び掛けてみたがやはり俺の声は届かない仕様の様であった。


何か何もして無いのに一方的に悪く言われて非常に感じが悪いと言うか気分が悪い。


「撃てー!魔法部隊も撃てー!悪魔の様な人間共から、子共と家族を守る為に魔力の限り撃てー!」といつの間にか非道な人間から悪魔に進化しちゃってるよ・・・。


理不尽過ぎる。


ちょっと、ムカッとしたので、ストーン・ブリッドの超高速砲弾バージョン魔力マシマシをズドンと城壁に向かって10発ずつ斉射した。


ドカンバーン と言う炸裂音の後、「うわぁ~! 痛ぇ~・・・産まれたばかりの息子に一目あいたかった・・・。」と悲壮な声も聞こえてくる。


り難い。非常にり難い。 これ俺が悪いのか? つまりはこう言う精神的に追い込む系の罠?戦術なんだろ?


本当にエグい。子を持つ親としてはそんな声を聞いたらトドメ刺せないじゃんよ!?



「おーーい!こっちは殺る気ないんだってーー! 話が分かるかーー? ただ下層へ通してくれればそれで良いんだってよーー!」と無駄と知りつつも声を張り上げる俺。


先程から、シールドと魔装に屋や魔法のファイヤーボールがバンバン当たっては弾けてるんだけど、もうっちゃって良いかな?


もう知らん・・・・。ストーン・ブリッドの超高速砲弾バージョン魔力マシマシを10発単位で一斉掃射して、城壁の扉や城壁の上で弓を構えるバンパイアをドンドンと崩して行く。


「さサンドラーーー!死ぬな!!俺達この戦いが終わったら結婚する約束だっただろーー!? サンドラーー・・・・」と地の滲む様な悲痛な叫び声が鳴り響く。



もう知らんぞ!と腹を括って、更に城壁や城門の扉を破壊して瓦礫の山へと変えて行く悪役の俺。


「城門の瓦礫を乗り越え、場内に入ると先程の悲痛な声の主が「おのれーー、サンドラーの敵!!しねー!」と今度は剣を片手に突っ込んで来た。


来る者は仕方無い。気は乗らないけど、『黒竜丸』を抜刀して、剣ごと横薙ぎに2つに斬り捨てたのであった。



古城の前まで行くと城の主であるバンパイア・ロードとバンパイア・クィーンそして小さなバンパイアの少女・・・・。


えーー!?これもらなきゃいけないのかよ?


「なあ、俺は下層へ行きたいだけで、事を構えたく無いんだよ!」と一応言うも


結局聞いて貰えずに3匹一緒に魔法を乱射しながら突っ込んで来たので3匹一緒に斬り捨てたのだった。

一瞬少女だけ助けようかとも思ったんだけど、バンパイア・ロードが斬られる瞬間に抱き寄せてしまいそのまま『黒竜丸』を振り切った。

胸が痛い・・・。


古城の奥へ行くと下層への階段と木箱のショボい宝箱がポツンと置いて在った。


中身は血の滴る様な真っ赤なローブ。とても使う気にならんな・・・。


手子摺る訳でも強い訳でも無いが、なんて胸くその悪い階層なんだよ!?


出来れば2度と来たくないな。



ちなみに、バンパイア共の亡骸は他の魔物と違い、全て魔石だけを残して消えて行った。


一応、魔石のみはちゃんと目に付いた物は全部回収してある。


大体バンパイアだったら、多少の傷くらい回復しそうじゃないか?と。


つまり、ここのバンパイアはそう言う役を振られた人形に過ぎないのかもしれないな。


ちなみに、『真っ赤なローブ』はそれなりに良い物で対物理と対魔法の防御力アップの付与が施されており、なかなかに優秀な逸品だった。


自宅に帰るとサチちゃんが真っ赤なローブを見つけて欲しがったので、これから寒い冬になるので丁度良いと言う事であげたのだった。

そうすると、コータのお土産だけ無いのでバンパイアが残した魔石を3つ程お土産として渡したら、「とーたん、ありゃーと!」凄く喜んでくれたのだった。


この子らの笑顔で92階層でささくれ立った気持ちが癒やされて行くのであった。

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