第251話 不穏な気候 その3
飛行船に全員乗り込んだ後、格納庫の開口部の壁を消して大きめに開け、飛行船を前進させて暴風雨の中格納庫の外へと発進させて貰った。
操縦はコントロールルームのジョニー殿下にお願いしてある。飛行船が風に煽られて上下左右に揺れてるが、なんとか流さて近辺の建物(我が家の持ち物)に接触しない様にコントロールして抑え込んで居る。
俺は解除して無くなった格納庫の壁を元の様に小さくして、閉じてしまった。
これで、人用の扉からのみ出入り出来る状態となった。
おっと、急がないと、コントロールして抑え込むのがむずかしそうである。
おれはびしょ濡れになった状態でゲートで飛行船のコントロールルームへと移動したのだった。
ジョニー殿下、お待たせ。もう上昇しちゃって下さい。」と俺がビシャビシャの服にドライをかけながら声を掛けると、ホッとした様な声で
「はぁ~よかったぁ~。もう何時流されてぶつかるか冷や汗でビッショリだよ。行くよ!」と言って、グンと下方向のGwo身体に感じつつ機体が上昇して行くのであった。
見ると本当に背中から脇の下が汗で色服のが変わってしまっていたので、クリーンを掛けてやったのであった。
「で、具体的な場所とその行き方とか俺は判らないんだけど、操縦の方はこのままジョニー殿下にお任せして良いですかね?こっちは家の者達に救助の手順等を打ち合わせして来ますので。」とお願いしてからコントロールルームを離れたのだった。
乗客席では前後左右上下360度全方位を映し出して居る巨大ガラスディスプレイの強烈な外の風景を緊張した面持ちでキョロキョロ見つめる子供達が居た。
「あー、ちょっと聞いてくれ。今から現地に着いた際の救助の手順を説明する。要救助者を救助するタイムリミットは一般的に48時間が生死を分ける境界と言われている。
この天候だ。被災者に取っては低体温症が一番の敵となる。他にも長時間土砂や家屋に押さえつけられてた場合敗血症とか色々有るが、一番大事な事は、お前達が二次災害に遭って被災しない事だ。救助も大事だが、自宅に無事に帰るまでが救助活動だ。気を抜かず、必ず無事に帰る事! 濃う行っては冷酷に聞こえるかも知れないが、名も知らない何処かの誰かよりも家族であるお前達の身の安全が一番大事だからな。」と伝えると皆が大きく頷いて聞いている。
「現地に着いたら、まず俺が避難所用の大きなドームを作るから、そこに救助した者、怪我人などを分けて収容する様に! 家屋の下敷きになった者を救助する際は、フォース・フィールドの足場を上手く使って、廃材等をジワッと持ち上げろ!一気にやると崩れる可能性が在るジワッとだ。
あと、単独での行動は禁止!全員2名1組いや、3名1組で動く様に! 意味は判るな? もし1人が二次災害にあってももう2人が助けを呼べるからだ。良いな?地鳴りや微震等を感じたら、直ぐにその場を離れろ! 『気配察知』を使える奴は、主に倒壊した家屋、土砂に埋まった所の生存者を探れ。」と知ってる限りの注意事項を何度も何度も連呼したのだった。
飛行時間は40分程だろうか?
漸く現地に到着したが、ジョニー殿下曰く、他にも7箇所くらい在るとの事。
まずはここである程度救助訓練を兼ねて全員で慣らしをして最終的に他の箇所へと分散して向かう事にした。
最悪の場合、俺に連絡すればゲートで駆けつけるし、何とかなる筈である。
ここダンテ領のゲーテ村は大きな湖の横の農業地帯だったのだがその湖に注ぐ河川の水量がキャパをオーバーし、溢れて、簡単に築いてあった堤防を決壊させて一気に土砂と共に集落を薙ぎ倒しながら村全体を泥濘の悲惨な地獄に変えたらしい。
俺は即座に避難用の巨大ドームと、負傷者用の医療ドームの2つを建設し、その後は決壊したと言う堤防の所まで移動して堤防を再構築しカッチリと水を堰き止める様にしてから、これ以上溢れない様に湖から水を抜く為に以前ダンジョンの河川から水を拝借するのに使ったゲートを用いた給水システムを使って、溢れる分を海へと剥がす様に20分程でセコセコと動き廻ってセッティングしておいた。
これでこれ以上の被害は暫時で無い筈だ。尤もこの一連の暴風雨が終われば余計な物なので取り外すけどな。
海にしても、いきなり淡水が増加するとその水の流れ出る辺りの生態系に悪影響出そうだしね。
そして、現場に戻ると、マッシュ達一期生の指揮の下、全員ちゃんと3名1組で様救助者を救い出して居る。
誰も怪我するこ事なく、教えた通りにやっている。
俺は負傷者のドームでまだ治療の済んでない負傷者全員を治療しようと思ったが既にここの担当の子が回復魔法をちゃんと掛けて居た。
どうやら俺の出る幕はなさそうである。
無傷の被災者用のドームに行くと、ジョニー殿下が被災者から、涙を流しながら感謝を述べられて居る所であった。
どうやら、取り敢えずの救援物資を村長に渡したらしい。
「殿下、そろそろ次の被災地へ。」と俺が促したら、大きく頷くジョニー殿下。
一期生の1人と王宮側の官僚名にここの指揮を任せ取り敢えず20名家の子を残して、次の場所へと移動する事にした。
2箇所目は山の麓の村で更に飛散な現場であった。水分を含んで緩くなった斜面の土砂が一気に崩れた土砂災害である。
ここでは、先程のゲーテ村とは違って、死者まで出て居り、幼い子供を含む11名が悲惨な遺体で発見されたのだった。
行きのある負傷者は何とか治療すれば元通りになるが、失った村人は元に戻せないのだ。
救いになるかは判らんが、状況から見て来る済む間すら無く亡くなったと思われる。
願わくば、幼子も含め来世は幸せで元気に過ごせる人生になります様に・・・と女神マルーシャ様に心の中で祈るのであった。
更に他の被災地を廻り土砂災害2箇所、洪水2箇所、鉄砲水1箇所で救援活動を行い、最後の村の救護を終えた頃、この忌々しい暴風雨が弱まってきて居たのだった。
ジョニー殿下に聞いたろころ、この国では特に治水工事と言う物はやってないと言うか国ではなく管轄は各領の領主である貴族の責任となっているらしい。
言われてみればそうだな。その為に安くは無い税金取って居る訳だ。でも領主ガチャに失敗した場所の領民は高い税金に最低の行政サービス?を受けて居るんだろうな・・・。
まあ下手に治水工事するとなったら、税金の他に労役で徴収されて領民に取っては掛かって踏んだり蹴ったりになりそうだよな。
やっぱ、あれだな、今回の救助の件で思ったがもっともっと魔法使いを増やすべきだな。
とは言え、現状でさえ、ラフティのキャパをオーバーを引き起こして居るが、今の卒業生をドンドン指導者にして魔法学校を増やすとかしないと。
まあそうなればマッシモの魔法学校が最高峰にして各地の精鋭の奴が次の高みに登る為の学校って位置付けだろうか? 等とこの先の事を考えていたのであった。
結果として、今回の暴風雨の総合的な死者数は合計128名、負傷者は延べ547名にも及んだらしい。
おかしいって思うでしょ? 救助に行った馬車は7箇所だが、それは領主が王宮に助けを求めた所のみ。 所謂『当たり』の領主の領民だったと言う訳だ。
で、ハズレの領主の領民が助けも来ずに冷たい雨風の中孤軍奮闘するもどうにもならずに多大な犠牲を払ったと言う事の様だ。
まあ、仮にその領主達が救援を王宮に求めたとしても数的に無理尾だった可能性が高いけど、何とも後味の悪い結末である。
急に借り出して、悲惨な死体を見せる事となってしまった事に対しては担当した子らに本当に申し訳ない事をしたと思う。
きっと暫くはご飯が不味い事だろう。
ちなみに・・・救援に駆けつけた第一王子殿下の評判は鰻登りで、国民から非常に好意的な声が巷に溢れている。
凄いと思ったのは撤収した後も、王国の飛行船で再度訪れて、復興状況を確認し、幾ばしかの援助金や食料等の物資を配って回ったらしい。
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