第250話 不穏な気候 その2

降水不足の次には夏の猛暑。

寒ければ火を焚いて暖を取れば良い。


しかし暑さに対してこの世界の住民はほぼ無防備で為す術無しであった。

辛うじて、団扇の代わりの様な薄めの板で扇いで風を浴びる程度である。


幸いにも俺の忠告に従って即座に熱中症対策を公に発表したマッシモと王都では少ないが他領ではかなりの人数が熱中症で亡くなっているらしい。


我が家や従業員用の宿舎は当初から冷暖房用の魔動具を完備した家にして居たが、今年の夏が来るまでその冷暖房完備の真価を発揮した事がほぼ無く、その冷暖房用の魔動具を作ってお披露目した際にはキョトンとされただけで理解してもらえなかった。



「こんな事もあろうかと・・・」と言いたいところだが、ざんねんながら余分なストックはほぼ無い。

そこで、現在俺の無茶振りが無く暇にしている魔動具製造の工房を100%冷暖房魔動具の製造に専念させる事にしたのだった。

この冷暖房魔動具の筐体は元の世界の家庭用のエアコンと同じ様な形状の横長の箱で、冷房は水平向きに、暖房は下向きに適温の風が吹き出す様になって居るシンプルな物となっている。


魔動具工房が作るのはその中身である冷却&加熱する為の銅製のフィンのついた送風部分付きのコントロールユニットである。


これの魔力コストだが、使用環境や気温にもよるが、ゴブリンクラスの屑魔石3つで1ヵ月ぐらい保つ感じだろうか。もしオークの魔石を使えば、1年は余裕だろう。


日本時代の電気代に比べオークの魔石で銀貨2枚2万ギリーと考えると、激安と言うのが俺の感想である。


尤もこの冷暖房魔動具自体は結構良い値段するのでおいそれと購入出来る物じゃない。


とは言っても幼い子に猛暑は酷なので孤児院には真っ先に寄付しておいた。


俺の冷暖房用の魔動具は王国規模で作っては売れ作っては売れのバカ売れ状態で、いつの間にか王宮の方でも購入して居た様で、宰相閣下直々に「王宮における用に、もうちょっと見栄えの良いバージョンを特注で作って欲しい。」と言う一番忙しい時に聞きたく無い様な無茶振りが来た。


面倒なので、筐体の表面に金箔張りならぬ金を蒸着させる事で簡単に済ませ、どっかの成金趣味丸出しの品の悪い物を納品したら、「流石にこれは・・・」と怒られてやり直しを命じられてしまったのだった・・・。


金色が駄目なのだろうか?王侯貴族の望む高級感ってなんだろう? 俺にはサッパリだけど、しょうがないので、筐体作りでてんてこ舞い中の親方の所に行って状況を説明し、俺の作った金張使用を見せると、

「トージの旦那、流石にこれは酷過ぎますよ。」と呆れられて、特注仕様を引き受けてくれたのであった。


結局棟梁作の特注品は模様を彫刻した凝った物で、其処に金箔等で色付けした高級そうな逸品であった。


その凝った筐体を10個俺に手渡す際に遣り切ったと言う感じに目の下に隈を作りかなりお疲れの様子であった。


「棟梁、まだまだ忙しいから、倒れないでね!」と言いながら、回復魔法を念の為に掛けてやって、工房でユニットを組み込んでから王宮に納品に行くのであった。



だが、棟梁が良い仕事をし過ぎた所為で更に王宮から同等の特注品の追加注文が来てしまい、その後忙しさの所為で棟梁がダウンする一幕があったのだった。


幸い俺が何日か通って治療をしたので、早期に起き上がれるくらいには回復したが、その後はムチャをせずに、適度に休息を取る様に何度もお願いをしておいた。


まあ俺が王宮の依頼まで持ち込んだのが原因の一端なんだけどね・・・。



■■■


猛暑にかなり王国全体が慣れて来た頃、この大陸では珍しく、台風?暴風雨が王国を襲い、かなりの箇所で土砂災害や家屋の倒壊等判って報告の入った範囲だけでもかなりの数の被害報告が上がったのだった。


更に悪いのはこの地方の被災集落とを繋ぐ街道もかなりのダメージを受け泥濘んでいたり、寸断されていたりと、来易く救援に向かえない状況であったのだ。


ここマッシモでもかなり強烈な暴風雨であったので、即座に飛行船をカマボコ型の格納庫を作って覆い難を逃れた。


更には被災の恐れのある人達を収容出来る大型のドームを作って避難所も提供したのだった。


っまあ俺が見守っていたマッシモはほぼ大丈夫だったが、王都はかなり被災世帯が出て居り、、それに加えて各地方の救援要請と板挟み状態で早々に俺の方へ国王陛下からの加勢依頼の電話が直々に入ったのであった。


「み、トージ殿・・・誠に申し訳無いが、トージ殿と弟子の皆さんにご助力頂かないと寸断された地域の被災者の救護に迎えないのじゃ。」暴風が収まり次第、王都からも飛行船を出すのじゃが、如何せん魔法の使えない者が行っても殆ど手作業で土砂を除ける事しか出来ないので、お願い出来まいか?」と言われ

自衛隊の居ないこの世界故に災害出動してじんそくな対応が出来るのは確かに家の連中以外居無いだろう・・・。


「判りました。早急に出動しますので、王宮から派遣する役人や作業員や責任者を早急にマッシモに送って貰えますか? 連絡くれれば私が王宮までゲートで迎えに行きますので。」と快諾したのであった。


俺にしては珍しく2つ返事で快諾って思うかもしれないが、事は人命に関わる事である。災害に遭った者の救援は最初の48時間がタイムリミットと聞いて居る。自然災害の多かった元日本人としては、他人事では無いのだ。


連絡後、俺は直ちにマッシュ達全員を非常招集し、飛行船の格納庫に集まる様に指示を出したのだった。


マッシュ達が格納庫に揃った頃、ジョニー殿下から連絡が入り王宮の例の部屋へとゲートで飛んで、集まった救援部隊の皆さんとそれを匹居るジョニー殿下と合流したのだった。


挨拶もそこそこに直ぐに家の格納庫にゲートで移動し、飛行船に搭乗する。


さあ、早速出動だ!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る